この記事では「森羅万象」について解説する。

端的に言えば「森羅万象」の意味は「宇宙に存在する一切のもの」です。この世のすべてを含むという、とてつもなくスケールの大きな言葉です。

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「森羅万象」の意味や使い方・類語・対義語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「森羅万象」の意味と使い方

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では早速「森羅万象」の意味と使い方を見ていきましょう。「森羅万象」の読み方は「しんらばんしょう」が一般的ですが、「しんらまんぞう」でも間違いではありません。

「森羅万象」の意味は「宇宙に存在する一切のもの」

「森羅万象」の意味を辞書で確認します。

宇宙に存在する一切のもの。あらゆる事物・現象。しんらまんぞう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「森羅万象」

このように「森羅万象」は、宇宙に存在するすべての事物や現象を指しています。天地の間にある一切の事象とも言えますね。

「森羅万象」の使い方を例文で紹介

「森羅万象」の使い方を例文で紹介します。

1.彼らは森羅万象あらゆることについて議論している。
2.森羅万象に想いを馳せると、日常の些末な事柄に右往左往することは意味がないと感じる。
3.神は、森羅万象この世のすべてを作り出した存在だと言われている。
4.その画家は森羅万象を描きたいと願い、発表した作品は数限りなかった。

存在するすべてのものを表した言葉が「森羅万象」です。例文を見ても、「森羅万象」の持つ壮大なイメージが伝わってきますね。言葉が壮麗なだけに、使いどころを間違えて陳腐な印象を与えないように注意したいものです。

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「森羅万象」の語源は?

「森羅万象」の語源を探っていきましょう。

「森羅」と「万象」の意味

「森羅」は「樹木が限りなく茂り並ぶ」という意味です。そこから「たくさん連なる」ことを表しています。一方「万象」は「すべての形あるものや物事」などの意味。有形のもの」という意味ですね。大地を覆い尽くす木々のように、この世に存在するものが無限に広がっている様子が語源なのです。

また「森羅」に「万象」が後から足され、言葉として完成したと伝えられています。 言葉ができた当時の鎌倉時代には「しんらまんぞう」と呼ばれていましたが、時代と共に「しんらばんしょう」が定着しました。

仏教が「森羅万象」の由来

「森羅万象」は、もともと仏教に由来する言葉です。 法句経(ほっくきょう)という仏典には「参羅及万象、一封之所レ印」と書かれています。 またキリスト教徒であるイエズス会の「日葡辞書」にも使用され、「御主デウス森羅万象ヲツクリタマウ」とも記されているのです。宗派を超えて「森羅万象」という言葉が息づいていることが分かります。

ジャンル別の「森羅万象」

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ここでは、さまざまな場面における「森羅万象」を見てみましょう。

仏教絵画『曼荼羅』の「森羅万象」

宇宙のありとあらゆるものを一言で表した「森羅万象」。その「森羅万象」を視覚化したアートが、仏教絵画の曼陀羅です。「森羅万象」は仏教に由来する言葉でした。曼陀羅は、仏教の流れの一つである密教の世界観を表した神仏を、細かな文様とともに描いた美しい絵画です。「森羅万象」という言葉の深い奥行きを、絵画を通して感じることができます。

人物名の「森羅万象」

「森羅万象」(1754~1809年)という名前の人物をご紹介しましょう。読み方は「しんらまんぞう」です。江戸時代後期の狂歌師、戯作者であり、医師でもあった人物。森羅万象とは言わないまでも、多才で数多くの分野で活躍したようですね。本名は森島中良といいます。後に改名して桂川甫周 と名乗り、通称は甫斎(ほさん)といいました。「田舎芝居」などの作品を残しています。

なお狂歌師とは、社会風刺や皮肉などを謳う、五・七・五・七・七の短歌を作る人です。

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チョコやアーティストの「森羅万象」

一方、日常生活の中でもカジュアルに「森羅万象」という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。「森羅万象」はお菓子のチョコの商品名や、音楽活動をするアーティスト名にも使われています。本来の意味とどこまで関係があるかは分かりませんが、言葉の持つイメージから人気のある言葉なのかもしれませんね。

「森羅万象」の類語

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「森羅万象」の類語を見てましょう。同じく四字熟語を集めてみました。

「一切合切(いっさいがっさい)」:何もかもすべて

まずは「一切合切」です。「何もかもすべて。全部。残らず。」という意味。「一切」と「合切」どちらも、「残らずみな、すべてのもの」のことを指しています。同意語を重ねて意味を強調している四字熟語ですね。ちなみに「合切」は「合財」とも書きます。

「有象無象(うぞうむぞう)」:取るに足りない種々雑多な人々

次は「有象無象」です。「取るに足りない種々雑多な人々。多く集まったつまらない連中。」という意味。この世の形のあるものないものすべての意から、数ばかり多いけれど取るに足らない、ろくでもない者や物のたとえとして使います。ネガティブなニュアンスを含んでいるところが「森羅万象」とは大きく異なる点ですね。

「森羅万象」にも使われている「象」は、仏教の言葉で「形」を表していました。また「有相無相(うそうむそう)」とも言います。

「天地万物(てんちばんぶつ)」:この世の形あるすべてのもの

続いて「天地万物」です。「この世の形あるすべてのものや現象のこと」を意味します。 「天地」が「天と地、この世の全て」、「万物」は「形あるすべてのもの」を表していますね。この二つの熟語が組み合わさってできた言葉です。

「諸事万端(しょじばんたん)」:全ての事項

最後に「諸事万端」です。「全ての事項」という意味があります。 「諸事」は「複数の」、「万端」は「全ての事柄」を表す表現です。これもまた「森羅万象」の類語と言えるでしょう。

「森羅万象」の対義語

「森羅万象」の対義語を見てみましょう。こちらも、同じく四字熟語で集めました。

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「色即是空(しきそくぜくう)」 :一切の物質的なものは空 (くう) である

まずは「色即是空」です。般若心経に出てくる仏語で「この世にある一切の物質的なものは、そのまま空 (くう) である」ということ。聞き慣れない言葉かもしれませんね。この世の万物は形を持つがその形は仮のもので、本質は空(くう)であって不変のものではないという意味なのです。仏教の根本教理と言われています。

「一切皆空(いっさいかいくう)」:あらゆる現象や存在は空である

次は「一切皆空」です。「あらゆる現象や存在には実体がなく、空である」という意味。これも「色即是空」と同じく、日常生活の中で使うことは少ないでしょう。「一切皆空」も仏教用語です。 

「森羅万象」の英語表現

「森羅万象」の英語表現を見てみましょう。端的に言うと「すべて」を表す言葉なので、英語表現も様々にあります。「everything」「all」など単語一つでも表現可能です。

また「all [the whole of] creation」「the universe」「all nature」や、all things in nature」「whole creation」なども「森羅万象」を表現できるでしょう。

「森羅万象」の中で小さな人生を丁寧に生きるには

この記事では「森羅万象」の意味や使い方・語源・類語・対義語などを説明しました。「森羅万象」は「宇宙に存在する一切のもの」という意味でしたね。語源は仏教にあり、壮大かつ荘厳な歴史も感じる言葉でした。類語や対義語も同じように四字熟語で表すことができるものが多くありました。

「森羅万象」に思いを馳せると、自分の存在がいかに小さいものかを痛感します。しかし、その小さい世界の中でも大切にしたい人や物、時間があるのも確かです。「自分なりの小さな人生を丁寧に生きていきたい」と執筆しながら思ったのでした。

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国語言葉の意味

「森羅万象」って?言葉のスケールの大きさは仏教由来?意味や使い方・類語・対義語を元小学校教諭がわかりやすく解説

この記事では「森羅万象」について解説する。

端的に言えば「森羅万象」の意味は「宇宙に存在する一切のもの」です。この世のすべてを含むという、とてつもなくスケールの大きな言葉です。

小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「森羅万象」の意味や使い方・類語・対義語などを見ていこう。

ライター/こと

元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。

「森羅万象」の意味と使い方

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では早速「森羅万象」の意味と使い方を見ていきましょう。「森羅万象」の読み方は「しんらばんしょう」が一般的ですが、「しんらまんぞう」でも間違いではありません。

「森羅万象」の意味は「宇宙に存在する一切のもの」

「森羅万象」の意味を辞書で確認します。

宇宙に存在する一切のもの。あらゆる事物・現象。しんらまんぞう。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「森羅万象」

このように「森羅万象」は、宇宙に存在するすべての事物や現象を指しています。天地の間にある一切の事象とも言えますね。

「森羅万象」の使い方を例文で紹介

「森羅万象」の使い方を例文で紹介します。

1.彼らは森羅万象あらゆることについて議論している。
2.森羅万象に想いを馳せると、日常の些末な事柄に右往左往することは意味がないと感じる。
3.神は、森羅万象この世のすべてを作り出した存在だと言われている。
4.その画家は森羅万象を描きたいと願い、発表した作品は数限りなかった。

存在するすべてのものを表した言葉が「森羅万象」です。例文を見ても、「森羅万象」の持つ壮大なイメージが伝わってきますね。言葉が壮麗なだけに、使いどころを間違えて陳腐な印象を与えないように注意したいものです。

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