この記事では「機が熟す」という慣用句について解説する。

端的に言えば「機が熟す」の意味は「よい時期になる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「機が熟す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「機が熟す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「機が熟す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「機が熟す」の意味は?

「機が熟す」には、次のような意味があります。

物事を始めるのにちょうどよい時期になる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「機が熟す」

「機が熟す」「機」とは、事の起こるきっかけや機会を表す言葉です。また、「熟す」は「熟する」ともいい、 果実や作物が十分に実っていることを意味します。

これが転じて、物事が十分な状態になることを表すようにもなりました。

「機が熟す」の使い方・例文

「機が熟す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

機が熟すのを待っているのだと君は言うけれど、それとて自ずから限界というものがあるだろうに。

その外食チェーンの会長は、十分に機は熟したとして悲願でもあった東京進出にゴーサインを出した。

まだ機が熟したとは言えないのだから、焦らずにそのときが来るのを待っていればいいじゃないか。

果実や作物も、一般的にはその実が十分に熟すのを待ってから収穫を始めますよね。(もちろん、何事にも例外はつきものですが)

それと同様に、何か行動を起こす場合にも「時機」=「タイミング」というものが存在します。それは、事前の計画や根回しもそうですし、スタッフたちが持つ士気の高まりなどもそうです。

そういったものが十分でないのに気ばかり焦って慌てても、あまり良い結果に結びつくことがないのは必然でしょう。

「機」を用いた他の慣用句とは?

ここで少し寄り道をして、「機」を用いた他の慣用句も確認しておきましょう。まずは、次の例文を見てください。

原理原則を守るのはもちろん大切なことだが、機に臨みて変に応ずというのもときには必要だろう。

彼は本当に機を見るに敏というか、本当に商売に関していえば抜け目のない男だと断言できる。

一つ目の例文にある「機に臨みて変に応ず」というのは、時機やその場の変化に応じた適切な処置を施すことを意味する言葉です。四字熟語で「臨機応変」ともいいますね。

もう一方の「機を見るに敏」は、好機を見極めるのが素早い様子を表しています。チャンスをとらえるのが非常に巧みな様子が目に浮かぶ表現です。

いずれにしても、「機」は「時機」という意味でとらえておくのがよいでしょう。

#2 「機が熟す」の類義語は?違いは?

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では、「機が熟す」類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、次の二つをご紹介します。

「満を持す」

「満を持(じ)す」は物事が最高潮に達した後、その状態が維持されていることを意味します。最高の状態にあるということは、物事を成すのには絶好の機会だというわけです。

また、この慣用句は「登場」「発売」「発表」のように「世に出る」という意味合いを持った言葉たちとよく使われることを付け加えておきます。

\次のページで「「潮時を迎える」」を解説!/

「潮時を迎える」

「潮時(しおどき)を迎える」の「潮時」とは、潮が満ちたり引いたりする時を表す言葉です。特に満潮時を迎えるときに、この言葉が用いられます。

というのも、満潮時は船を出すのにもっとも良い時機だとされているからです。転じて物事を始めるのにちょうど良い時を迎えるという意味で使われるようになりました。

それでは、これらの類義語を用いた例文をチェックしておきましょう。

その著名な彫刻家は日本での人気の高まりを受け、ドイツのベルリンより満を持して来日する手はずになっているそうだ。

世論も私たちの主張を支持する流れになってきているし、国政選挙に打って出るには今が潮時を迎えているのかもしれない。

#3 「機が熟す」の対義語は?

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一方、「機が熟す」対義語にはどのようなものがあるのでしょうか。こちらも、次の二つを一般的なものとして挙げておきます。

「時期尚早」

「時期尚早(じきしょうそう)」は、物事を行うにはまだ時期が早すぎるという意味の四字熟語です。尚早の「尚」にはさまざまな意味がありますが、ここでは「依然として」「やはり」という意味を表しています。

「時期早尚」や「時期早々」などと誤って用いられやすい熟語のひとつでもありますので、みなさんも使用する際には十分に注意してください。

「時を失う」

「時を失う」もまた、「機が熟す」の対義語として用いられる慣用句のひとつです。ここでいう「時」とは、好機(=チャンス)や時機のことだと考えて差し支えありません。

もう一方の「失う」「逃す」「逸する」と同様の意味で用いられています。つまり、「時を失う」とは好機を逃したり、時勢に合っていなかったりする様子を表しているのです。

では、これらの対義語を用いた例文もここで押さえておきましょう。

日本のアート作品を商うオンラインギャラリーを運営しようと画策したが、当時はまだ時期尚早であった。

いくらあなたに自信があるといっても、こうまで時を失っていたのでは成功は覚束ないだろうさ。

#4 「機が熟す」の英訳は?

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では、最後に「機が熟す」を英語で表現するとどうなるのか、いっしょに見ていきましょう。ここでは、主なものを二つご紹介します。

\次のページで「「get ripe for ~」」を解説!/

「get ripe for ~」

「get ripe for ~」という英熟語は、「~の機が熟す」という意味を表しています。この中に含まれている「ripe」という単語は「熟している」という意味の形容詞です。

本来は、果実や野菜が「熟れた」状態を表していたのがですが、それが転じてその他のものにも用いられるようになりました。

「wait until the moment is right」

もうひとつの「wait until the moment is right」は、「機が熟すまで待つ」という意味の英語表現です。こちらの「the moment is right」は、「時が正しい」と直訳することができますね。

この場合の「時が正しい」とは、「物事を行うのに適正な時である」という風に考えるとよいでしょう。

「機が熟す」を使いこなそう

この記事では「機が熟す」の意味・使い方・類語などを説明しました。この慣用句は、物事を成すのにぴったりな時機を迎えるという意味です。

何事を成すにも、本人の努力だけではどうにもならない場合があります。じっくりと「機が熟す」のを待って、ベストなタイミングで実行することもときには重要です。

みなさんも、十分に「機が熟した」と思えたら、失敗を恐れずにさまざまなことに取り組んでみてくださいね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「機が熟す」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「機が熟す」という慣用句について解説する。

端的に言えば「機が熟す」の意味は「よい時期になる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「機が熟す」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「機が熟す」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「機が熟す」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「機が熟す」の意味は?

「機が熟す」には、次のような意味があります。

物事を始めるのにちょうどよい時期になる。

出典:大辞林 第三版(三省堂)「機が熟す」

「機が熟す」「機」とは、事の起こるきっかけや機会を表す言葉です。また、「熟す」は「熟する」ともいい、 果実や作物が十分に実っていることを意味します。

これが転じて、物事が十分な状態になることを表すようにもなりました。

「機が熟す」の使い方・例文

「機が熟す」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

機が熟すのを待っているのだと君は言うけれど、それとて自ずから限界というものがあるだろうに。

その外食チェーンの会長は、十分に機は熟したとして悲願でもあった東京進出にゴーサインを出した。

まだ機が熟したとは言えないのだから、焦らずにそのときが来るのを待っていればいいじゃないか。

果実や作物も、一般的にはその実が十分に熟すのを待ってから収穫を始めますよね。(もちろん、何事にも例外はつきものですが)

それと同様に、何か行動を起こす場合にも「時機」=「タイミング」というものが存在します。それは、事前の計画や根回しもそうですし、スタッフたちが持つ士気の高まりなどもそうです。

そういったものが十分でないのに気ばかり焦って慌てても、あまり良い結果に結びつくことがないのは必然でしょう。

「機」を用いた他の慣用句とは?

ここで少し寄り道をして、「機」を用いた他の慣用句も確認しておきましょう。まずは、次の例文を見てください。

原理原則を守るのはもちろん大切なことだが、機に臨みて変に応ずというのもときには必要だろう。

彼は本当に機を見るに敏というか、本当に商売に関していえば抜け目のない男だと断言できる。

一つ目の例文にある「機に臨みて変に応ず」というのは、時機やその場の変化に応じた適切な処置を施すことを意味する言葉です。四字熟語で「臨機応変」ともいいますね。

もう一方の「機を見るに敏」は、好機を見極めるのが素早い様子を表しています。チャンスをとらえるのが非常に巧みな様子が目に浮かぶ表現です。

いずれにしても、「機」は「時機」という意味でとらえておくのがよいでしょう。

#2 「機が熟す」の類義語は?違いは?

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では、「機が熟す」類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、次の二つをご紹介します。

「満を持す」

「満を持(じ)す」は物事が最高潮に達した後、その状態が維持されていることを意味します。最高の状態にあるということは、物事を成すのには絶好の機会だというわけです。

また、この慣用句は「登場」「発売」「発表」のように「世に出る」という意味合いを持った言葉たちとよく使われることを付け加えておきます。

\次のページで「「潮時を迎える」」を解説!/

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