この記事では「魑魅魍魎」について解説する。「魑魅魍魎」は、典型的な「知らなければわからない言葉」です。意味はおろか読むことも、漢字から意味を推測することも難しいでしょう。そういう奴こそ、これを機会に頭に入れておくべきです。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「魑魅魍魎」の意味や使い方、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「魑魅魍魎」とは妖怪の呼び名だった?

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「魑魅魍魎」とは以下のような意味になります。

いろいろな種類の妖怪や化け物。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「えっ?」と思う人もいるかもしれませんが、「魑魅魍魎」とはそもそも妖怪の呼び方です。読む際は「ちみもうりょう」と読みます。形としては、「魑魅(ちみ)」と「魍魎(もうりょう)」が一つになった四字熟語であり、「魑魅魍魎」で一単語というわけではありません。

「魑魅」って何?

「魑魅魍魎」は「魑魅」と「魍魎」に分けられますが、では「魑魅」とは何でしょうか。以下が「魑魅」の意味になります。

「魑魅」は、山林の気から生ずる妖怪。また、山の神。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「魑魅(ちみ)」は「すだま」とも言い、その存在は山林や木石の精気から生まれた山の神。神様というと神々しいイメージがあるかもしれませんが、「魑魅」はどちらかというと妖怪、化け物と呼ばれる見た目をしています。見た目は「人面鬼身」とされており、文字通り、顔は人間見た目は鬼ということです。よく人を迷わせるという言い伝えもあり、あまり有難い存在ではありません。

「魍魎」って生き物?

「魍魎」の意味は以下の通りです。

「魍魎」は、山川、沼沢の気から生ずる妖怪。また、水の神。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「魍魎」は「罔両」と表記されることもあります。「魑魅」が山の神であるのに対し、こちらは水の神であり、2つ揃って対をなす関係です。「みずは」と呼ばれることもあります。

こちらもまた、神様とは言われますが見た目は小鬼のようなものに近いです。赤黒い肌に赤い目をして、長い耳に黒髪と言われています。死者の肝を食べるとも言われており、やはりあまり有難い存在ではありません。

「魑魅魍魎」って結局どんな存在?

総合的に「魑魅魍魎」を説明すると、主に山に居る妖怪の類ということになります。神様とも精霊ともいえますが、いずれにしろ霊的なものである点は変わりません。「木や石や水から出てくる」と言われていますが、木も石も水も、日本の山の中ではそこかしこに存在しているもの。つまり、日常に潜んでいる妖怪と思われていました。昔の時代において、山登りは生死に関わる大変なことでもあったため、自然に対する恐怖や畏怖の念のようなものが「魑魅魍魎」という形を借りて人々の間で言い伝えられてきたともいえます。

「魑魅魍魎」って現代でどう使うの?

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「魑魅魍魎」とは元々妖怪の名であることは上記のトピックで解説しました。しかし、「現代で魑魅魍魎なんて言葉を使う場面なんてあるの?」とは思いませんでしたか?

もちろん、現代に目に見える形で「魑魅魍魎」が生きているわけではありません。しかし、「魑魅魍魎」にはもう一つ、現代でも十分に使用できる意味を持っています。それが以下です。

また比喩ひゆ的に、表にはっきりと姿は現さないが、私利私欲のために暗躍する者のたとえ。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

\次のページで「「魑魅魍魎が跳梁跋扈する」ってどういう意味?」を解説!/

「魑魅魍魎」とは元々妖怪の名です。これが転じて、化け物のような存在に見えてしまう人間として、「私利私欲のために暗躍する者」という意味を持つようになりました。

また、「魑魅魍魎」は山の中においてそこかしこに居るとされているため、基本的には複数存在していると思われることが多いです。そのため、「周りに何人も存在している」というニュアンスも加わります。

「魑魅魍魎が跳梁跋扈する」ってどういう意味?

「魑魅魍魎が跳梁跋扈する」という言い回しがあります。これは現代でも使用されており、「ちみもうりょうがちょうりょうばっこする」と読むのが正解です。「跳梁跋扈」の意味は以下になります。

思うままにのさばり、勝手なふるまいをすること。

~中略~

「跳梁」ははねまわること、「跋扈」はおどり出ること。

出典:コトバンク 「跳梁跋扈 意味」

つまり、「魑魅魍魎が跳梁跋扈する」とは、「妖怪がそこら中におり、好き勝手に飛んだり跳ねたりしている」ということです。さらに「魑魅魍魎」を妖怪ではなく「私利私欲のために暗躍する者」と置き換えると、「私利私欲のために暗躍する者がそこら中におり、好き勝手な振舞をしている」ということになります。

周り中邪な考えを持つ者だらけであり、しかも数が多く、大人しくしている様子もないというイメージができれば、正解です。

日常における「魑魅魍魎」の使い方

上述したことを踏まえると、「魑魅魍魎」は基本的に以下のように使用します。

1.この部署の「魑魅魍魎」どもは、何かにつけて反対ばかりだ。
2.あそこは「魑魅魍魎」の巣窟だから、極力行かない方が良い。
3.「魑魅魍魎」が跳梁跋扈しているのが、政治の世界だ。

 

「魑魅魍魎」は基本的に、人間にとってあまり有難くない存在です。そのため「魑魅魍魎」を使用するタイミングは、どうしても相手に対して悪い感情を持っている場面に限定されます。対象としている人間を妖怪に例えているため、失礼と捉えられても全くおかしくない表現であることは覚えておきましょう。

「魑魅魍魎」の類義語は「敵」のニュアンスを持つ言葉?

「魑魅魍魎」の類義語は以下になります。

敵/邪な考えを持つ人/私利私欲で動く人/ろくなことをしない人

「魑魅魍魎」は人にとって、基本的に害をなす存在です。そのため、自然と類義語も「こちらに不利益を与えてくるような人」ということになります。

「鬼」は類義語ではない?

「魑魅魍魎」は妖怪であるため、同じく妖怪である「鬼」なども置き換えられるのでは?と思われるかもしれませんが、これは間違いと言えます。「魑魅魍魎」は確かに人間に害をなす存在ではありますが、反面それほどおそろしい危害を加えてくるわけではなく、道に迷わせる程度のものです。食らうのも死人であり、生きている人は食いません。

「鬼」は日本語において、「とても怖い」「非常におそろしい」という、程度の強い恐怖の対象であるため、「魑魅魍魎」が持つニュアンスとはややかけ離れていると言えます。

おまけ:方良/罔象

「方良/罔象」は「ほうりょう」「もうしょう」と読みます。2つとも「魍魎」を指し示す言葉であり、類義語というよりは別名であって、意味は全く同じです。ただし、「魑魅魍魎」という言葉の「魍魎」の部分を上記に置き換えられるかというと、そうではありません。「魑魅魍魎」はこれで完成された四字熟語となるため、意味が同じであっても置き換えは不可能です。

また、「魑魅魍魎」を「方良」の関係としては、妖怪という意味ではかなり近い類語といえます。ただし、「魑魅魍魎」以上に「方良」「罔象」は知名度が低く、説明してもわかってもらえないことの方が多いでしょう。意味の伝わりやすさという点ではほぼ0点に近いと言えるため、類義語ではありますが置き換えには適していません。

「魑魅魍魎」は日常にあるもの

「魑魅魍魎」は業界を問わず、さまざまな場面で使用される可能性があります。妖怪の名前でありながらも、現代でもこうして生きた言葉として使用されているのは、「魑魅魍魎」が特別な妖怪ではなく、身近な怪異であることが大きいでしょう。「居て欲しい存在」とはお世辞にも言えませんが、歴史的に面白い言葉であることは確かです。

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国語言葉の意味

現代にも生きている?「魑魅魍魎」の意味・使い方・類義語を言葉大好きライターが徹底わかりやすく解説!

この記事では「魑魅魍魎」について解説する。「魑魅魍魎」は、典型的な「知らなければわからない言葉」です。意味はおろか読むことも、漢字から意味を推測することも難しいでしょう。そういう奴こそ、これを機会に頭に入れておくべきです。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「魑魅魍魎」の意味や使い方、言い換えなどを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「魑魅魍魎」とは妖怪の呼び名だった?

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「魑魅魍魎」とは以下のような意味になります。

いろいろな種類の妖怪や化け物。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「えっ?」と思う人もいるかもしれませんが、「魑魅魍魎」とはそもそも妖怪の呼び方です。読む際は「ちみもうりょう」と読みます。形としては、「魑魅(ちみ)」と「魍魎(もうりょう)」が一つになった四字熟語であり、「魑魅魍魎」で一単語というわけではありません。

「魑魅」って何?

「魑魅魍魎」は「魑魅」と「魍魎」に分けられますが、では「魑魅」とは何でしょうか。以下が「魑魅」の意味になります。

「魑魅」は、山林の気から生ずる妖怪。また、山の神。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「魑魅(ちみ)」は「すだま」とも言い、その存在は山林や木石の精気から生まれた山の神。神様というと神々しいイメージがあるかもしれませんが、「魑魅」はどちらかというと妖怪、化け物と呼ばれる見た目をしています。見た目は「人面鬼身」とされており、文字通り、顔は人間見た目は鬼ということです。よく人を迷わせるという言い伝えもあり、あまり有難い存在ではありません。

「魍魎」って生き物?

「魍魎」の意味は以下の通りです。

「魍魎」は、山川、沼沢の気から生ずる妖怪。また、水の神。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

「魍魎」は「罔両」と表記されることもあります。「魑魅」が山の神であるのに対し、こちらは水の神であり、2つ揃って対をなす関係です。「みずは」と呼ばれることもあります。

こちらもまた、神様とは言われますが見た目は小鬼のようなものに近いです。赤黒い肌に赤い目をして、長い耳に黒髪と言われています。死者の肝を食べるとも言われており、やはりあまり有難い存在ではありません。

「魑魅魍魎」って結局どんな存在?

総合的に「魑魅魍魎」を説明すると、主に山に居る妖怪の類ということになります。神様とも精霊ともいえますが、いずれにしろ霊的なものである点は変わりません。「木や石や水から出てくる」と言われていますが、木も石も水も、日本の山の中ではそこかしこに存在しているもの。つまり、日常に潜んでいる妖怪と思われていました。昔の時代において、山登りは生死に関わる大変なことでもあったため、自然に対する恐怖や畏怖の念のようなものが「魑魅魍魎」という形を借りて人々の間で言い伝えられてきたともいえます。

「魑魅魍魎」って現代でどう使うの?

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「魑魅魍魎」とは元々妖怪の名であることは上記のトピックで解説しました。しかし、「現代で魑魅魍魎なんて言葉を使う場面なんてあるの?」とは思いませんでしたか?

もちろん、現代に目に見える形で「魑魅魍魎」が生きているわけではありません。しかし、「魑魅魍魎」にはもう一つ、現代でも十分に使用できる意味を持っています。それが以下です。

また比喩ひゆ的に、表にはっきりと姿は現さないが、私利私欲のために暗躍する者のたとえ。

出典:goo辞書「魑魅魍魎 意味」

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