今回は壊血病という病気について学んでみよう。

壊血病は、現代の日本で発症することはほとんどない病気です。しかしながら、古い時代には多くの人々を震え上がらせた。その歴史とともに、壊血病の症状やメカニズムを学習しよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおうじゃないか。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

壊血病とは?

壊血病(かいけつびょう)は、ビタミンC(またはL-アスコルビン酸)の不足によって体にさまざまな異変が起きる病気です。年齢に関係なくかかる可能性がありますが、現れる症状には大人と子供で少し違いがあります。

壊血病の症状(大人)

大人が壊血病になると、以下のような症状が現れます。

・皮膚や粘膜からの出血
・歯肉からの出血や、歯肉炎、歯が抜ける
・脱力感、体重の減少、貧血
・関節炎
・傷のなおりが遅くなる、昔の傷がひらく

とくに、体のあちこちで出血が起きるというのが大きな特徴です。

健康な体には常時ビタミンCが必要ですが、これらの症状は体内のビタミンC量がおおむね500mgを下回ると現れてくるといわれています。

壊血病の症状(子ども)

身体をつくっている真っ最中の幼い子どもでは、大人以上に深刻な症状が現れるので注意が必要です。とくに、生後半年から1年の子どもで生じた壊血病はメレル・バロウ病(もしくはメーラー・バーロー病)という名称でよばれることがあります。

子どもの場合にみられる主な症状は以下のようなものです。

\次のページで「ビタミンCのはたらき」を解説!/

・出血
・歯や骨の発生障害、変形
・組織の壊死

ビタミンCのはたらき

私たちの身体にとって、ビタミンCは欠かすことのできない栄養素です。ビタミンCを摂取することで私たちの身体にどのような効果があるのか、代表的なものを見てみましょう。

・コラーゲンの合成を促進する
・抗酸化作用
・ビタミンEの再生

「抗酸化作用」は、体内で発生した活性酸素類を消去してくれる作用を指します。また、「ビタミンEの再生」は、同じく抗酸化作用を示すビタミンEを再利用できるようにする作用です。このため、ビタミンCの積極席な摂取は美容や老化に良い効果があるといわれていますね。

壊血病の原因となるのは、ビタミンCに「コラーゲンの合成を促進する」という機能があることが原因です。

image by Study-Z編集部

コラーゲンは私たちの身体を構成する重要なタンパク質の一種です。真皮や血管、腱、骨、軟骨などに含まれ、その構造を維持したり、弾力をもたせるのに利用されています。なんと、体内に存在するタンパク質の30%ほどはコラーゲンなのだそうです。

コラーゲンが体内で生成される際は、たくさんのアミノ酸がつながり、さらに酵素のはたらきなどでその構造が加工されます。この酵素が正常にはたらくためにはビタミンCが必要不可欠です。

\次のページで「壊血病の歴史」を解説!/

image by iStockphoto

ビタミンCが不足すると正常なコラーゲンをつくることができず、真皮や血管、骨などの構造維持に支障が出てきます。血管が破れやすくなって出血したり、骨が折れやすくなるのはこのためなのです。

壊血病の歴史

ビタミンや栄養素についてまだよくわかっていなかったころ、壊血病は治療方法の分らない病気として多くの人を悩ませていました。とくに影響が深刻だったのが、遠方へ航行する船の乗組員たちです。

冷蔵庫や冷凍技術といったものがない時代。長旅であればあるほど、生野菜や果物といった新鮮な食材を保存できなくなります。船上でビタミンC不足に陥った船員たちは次々と倒れていきました。

一説によると、大航海時代には壊血病で200万人もの船乗りが犠牲になったといわれています。またビタミンCだけでなく、それ以外のビタミンも不足しがちでした。ビタミンB1不足による脚気や、ビタミンB3不足によるナイアシン欠乏症(ペラグラ)など、それぞれのビタミン不足による病気が発症し、航海中に命を落とすことは珍しくなかったようです。

TresCarabelas.jpg
Miguel Ángel "fotógrafo", CC 表示-継承 3.0, リンクによる

解決の兆しが見つかったのが、18世紀の半ば頃。イギリス海軍省ではたらいていたスコットランド出身の医師ジェームズ・リンドが、新鮮な野菜や果物を食べている船員ほど壊血病になりにくいことをまとめ報告します。

その当時はまだビタミンという物質が知られていない時代でしたので、野菜や果物に含まれる何が壊血病に効くのか、というところまでは知られていません。それでも、柑橘類のジュースを用意したり、食卓に生野菜を載せるようにしたことで、壊血病にかかる船員は減っていきました。

image by iStockphoto

壊血病に効果がある物質が判明したのは、なんと大航海時代から数百年もたった1932年のこと。その5年前(1927年)に発見されていた柑橘類中に含まれる物質が、壊血病を防いでいることがわかったのです。ビタミンCとよばれるようになったこの物質は、1933年には人工的に合成されるまでに研究がすすみました。

\次のページで「現代の壊血病」を解説!/

現代の壊血病

このような歴史を紹介すると、壊血病はもはや過去のものという気がしてきます。ところが、現代においても壊血病にかかる可能性は十分あるんです。発展途上国などでバランスのとれた食事が難しいところでは、ビタミンCのみならずビタミン全般の欠乏症がしばしば見られます。

そして驚くことに、今の日本国内であっても壊血病になりかける人が現れるんです。長い期間にわたって極端な食事制限をしている人や、連日ビタミンCの量が少ない食事を与えられている子どもなどで起こりえます。

image by iStockphoto

また、壊血病やビタミンC欠乏とまではいかなくとも、1日当たりのビタミンC摂取量が推奨量に達していない人は数多くいます。

前述の通り、ビタミンCはコラーゲンを合成するだけでなく、強い抗酸化作用をもち、DNAやタンパク質を傷つける活性酸素類を減らしてくれる物質。皆さんも今一度食生活を見直し、ビタミンを積極的に取り入れてほしいと思います。

ビタミンCを多くふくむ食品

ここまで読んだあなたは、いますぐにでもビタミンCをたくさん含んだものを食べたくなっているでしょう。すぐに思いつく食品といえばレモンではないでしょうか?

ビタミンCの量を表すのにも「レモン〇個分」などと使われますよね。レモン100gあたりには、だいたい100mgのビタミンCが含まれています。赤ピーマンや黄ピーマンではそれよりも含有量が多く、なんと100gあたり170~150mgにもなるんです。ほかにも、パセリ(100gあたり120mg)やピーマン(100gあたり76mg)などが比較的多くのビタミンCを含んでいます。

野菜や果物によって含有量は大きく異なりますので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

ビタミン不足は命にかかわる!

「たかがビタミン不足」と思うなかれ。壊血病をはじめとするビタミン不足による病気は、時に命を脅かすこともあるんです。今回は壊血病をテーマにしましたが、ビタミンに関連する病気は少なくありません。みなさんもバランスの取れた食生活を!

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タンパク質と生物体の機能理科生物

壊血病とはどんな病気?その歴史も合わせて現役講師がわかりやすく解説!

今回は壊血病という病気について学んでみよう。

壊血病は、現代の日本で発症することはほとんどない病気です。しかしながら、古い時代には多くの人々を震え上がらせた。その歴史とともに、壊血病の症状やメカニズムを学習しよう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおうじゃないか。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

壊血病とは?

壊血病(かいけつびょう)は、ビタミンC(またはL-アスコルビン酸)の不足によって体にさまざまな異変が起きる病気です。年齢に関係なくかかる可能性がありますが、現れる症状には大人と子供で少し違いがあります。

壊血病の症状(大人)

大人が壊血病になると、以下のような症状が現れます。

・皮膚や粘膜からの出血
・歯肉からの出血や、歯肉炎、歯が抜ける
・脱力感、体重の減少、貧血
・関節炎
・傷のなおりが遅くなる、昔の傷がひらく

とくに、体のあちこちで出血が起きるというのが大きな特徴です。

健康な体には常時ビタミンCが必要ですが、これらの症状は体内のビタミンC量がおおむね500mgを下回ると現れてくるといわれています。

壊血病の症状(子ども)

身体をつくっている真っ最中の幼い子どもでは、大人以上に深刻な症状が現れるので注意が必要です。とくに、生後半年から1年の子どもで生じた壊血病はメレル・バロウ病(もしくはメーラー・バーロー病)という名称でよばれることがあります。

子どもの場合にみられる主な症状は以下のようなものです。

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