3分で簡単!「ガリウム」とはどんな元素?元家庭教師がわかりやすく解説
ガリウムは発見する前にその存在が予想されていた元素です。金属としては融点が低いなどその性質には興味深いところがたくさんある。そして現在、ガリウムはその性質を生かして様々なところで利用されている。面白いところではあるマジックに使われているんです。
ガリウムの存在は誰がどうやって予想したのか、どんな風に発見されたのか、そしてどう利用されているかという事を大学時代に家庭教師をしていた化学系リケジョのたかはしふみかが解説していきます。
ライター/たかはし ふみか
国立大工学部化学系院卒のリケジョ。大学時代は家庭教師と学生実験助手のバイトをしていた。中学時代の理科で原子や分子に興味を持ち理系に進む。物理と数学、英語はだめだが現代国語と化学は得意。
ガリウムとは
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まずはガリウムがどんな元素なのかを勉強していきましょう。
ガリウムは原子番号31番の元素で、金属元素に分類されています。地殻中に0.002%程度存在し、青みがかった銀白色をした柔らかい金属です。ガリウムの最も注目すべき特徴は「最も液体である温度の範囲が広く、約30~2400℃の範囲で液体となる」ことでしょう。
ガリウムと融点
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ガリウムの融点は29.8℃で、体温で溶かすことができます。そして気体になる沸点は2403℃です。
常温で液体状態の金属は水銀(融点-38.8℃)しかありません。通常金属の融点は高く例えばアルミニウムは660℃、金は1064℃、鉄なら1538℃です。ちなみに水銀やガリウム以外で比較的液体になりやすい金属元素にルビジウム(融点39.3℃)、フランシウム(融点約27℃)、セシウム(融点28.4℃)があります。
なお、融点温度は書籍によって数度違う場合があるので、あくまで目安としてください。
物質の融点は原子を結合する力、そして原子同士の距離によって決まります。金属は金属結合によって結合していますね。この結合に欠かせないのが自由電子です。
金属結晶は陽イオンとなった金属イオンの周りを自由電子が飛び回って原子をつなげ結晶を作ります。ガリウムの結晶の場合、1つの原子の周りに7つの原子がある状態となっているのです。そしてこのうち1つの原子だけが極端に近く、不均一な構造を作っています。そのため、原子間の結合が壊れやすく、融解のしやすさにつながっていると言われているのです。
「金属結合ってどんなのだっけ?」という人はこちらの記事を参考にしてくださいね。
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ガリウムと水の意外な共通点
ガリウムと水には面白い共通点があります。それは「液体より個体の方が体積が大きい」という事です。
通常、物質の体積は気体>液体>固体となっています。しかし水とガリウムは気体>固体>液体の順番で体積が大きくなっているのです。そのため、液体の状態で保管する際は少し大きめの容器に入れないと温度が下がった時、固体となって体積が増えに容器が破損してしまいます。
ちなみに同じように液体よりも個体の方が体積が大きくなる物質はケイ素、ゲルマニウム、ビスマスくらいしかありません。
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ガリウム、存在の予想と発見
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ガリウムは1875年にボアボードラン(フランス、1838~1912)という化学者が発見しました。ピレネー山脈の鉱山で採掘された閃亜鉛鉱(せんあえんこう)という鉱物に含まれていたのです。さらにボアボードランは水酸化ガリウム(Ⅲ)から金属ガリウムを単離することにも成功しました。ちなみにボアボードランはサマリウム(原子番号62)やジスプロシウム(原子番号66)も発見しています。
元素周期表を作り上げたメンデレーエフ(ロシア、1834~1907)は1871年に周期表でアルミニウムの隣にある元素の存在を予想し、それを「エカアルミニウム」と名付けました。そしてエカアルミニウムは原子量68、比重5.9、融点は低めと予想します。そして実際は原子量69.9、比重5.9、融点29.8℃とほとんどメンデレーエフの予想通りだったのです。
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