「夏は夜。月のころはさらなり、……」
「春はあけぼの……」の出だしで有名な平安時代の随筆『枕草子』の一節。作者、清原元輔の娘とされる清少納言が、四季の美しい点を述べるにあたり、春に続く夏の“エモい”点として、今日の若者言葉で表現するなら、「夏は夜がヤバイ。月明かりがあるともっとヤバイよね」と描写しています。
今回は、このように古くから用いられている、何かを強調したり程度を強める時に使用する「更に」の使い方と、その類義語として使用できる表現を、生活情報誌など情報誌系のライターを10年経験した筆者がまとめました。

強調する時に使う「更に」の活用法

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「更に」という言葉は他にも複数の意味で使用されますが、ここでは物事の程度を強調する場合や事実を複数並べて対象の人や物を高める場合など、効果的に活用する方法に絞って紹介します。

「更に」の7つの使用例

まずは使用例をいくつか見てみましょう。

「彼は頭脳明晰、さらに人柄もよい」

「さらに品質が向上する」

「これよりも更に古い資料がほしいのですが」

「さらに上申を続ける」

「更によいことに」

「更に困ったことに」

「さらに念を入れて掃除をする」

例文からもみてとれるとおり、現状以上あるいは以下、もしくは現状からもっと進行し一段進んだ状態についてを述べるときに使用します。現状を上乗せする、現代風に言うと“盛る”際に使える、ということですね。これは肯定的な意味にも否定的な場合にも使えます。この「更に」という表現、普段使いはもちろん、ビジネスシーンや目上の人との会話でも問題なく使用できますが、内容の“盛り”すぎには注意しましょう。

これを踏まえて「更に」に代わる他の表現を見てみます。

「更に」の類義語として使用できる11の単語

「更に」の類義語として、下記のように言い換えることができます。

1.(それに)加えて

2.その上

3.そればかりか

4.さらに言うと

5.もっといえば

6.付け加えると

7.なお且つ

8.一層

9.一段と

10.もう一度

11.もっと

「加えて」、「その上」、「そればかりか」、「なお且つ」、「一層」などは、少々改まった表現ですので、ビジネスシーンでも十分活用できますが文語的です。改まった内容のメールや文書で使用すると良いでしょう。

以下に例文をあげます。

「彼女は頭もよければ、性格も良い。加えて見た目もカワイイので、非の打ち所がない」

「彼はラーメンの大盛りをペロリとたいらげた。その上、カレーまで食べた」

「この山間はとても風光明媚だ。そればかりか、温泉まである」

「ホテルの部屋からは青い海が見渡せる。なお且つ、夕陽が沈む様子は絶景だ」

「あなたはとても頑張った。今後一層、精進して取り組んでください」

これらほとんどの例文で、「加えて」や「その上」などの言葉の入れ替えても、文章として成立します。

例をあげてみましょう。

「彼女は頭もよければ、性格も良い。なお且つ、見た目もカワイイので、非の打ち所がない」

「彼はラーメンの大盛りをペロリとたいらげた。そればかりか、カレーまで食べた」

「この山間はとても風光明媚だ。その上、温泉まである」

このようにそれだけ、応用範囲の広い言葉です。

「もっといえば」、「付け加えると」、「もう一度」、「一段と」や「もっと」などは先述の言葉よりやや口語的表現となっています。

例文を見てみましょう。

「彼の才能は非凡だ。もっといえば、天才とすら言える」

「この計画には無理がある。付け加えると、失敗と言ってもいい」

「失敗したその計画を、もう一度練り直してみる」

「大きな池のある公園にはいつも市民が集っている。桜の季節は一段と賑やかになる」

「そのスープにもっと塩を入れると、飲めなくなってしまう」

上述した使用例のように、前言(直前に述べたこと)に対して何か別の事実を付け加える場合、また物事の程度が上がった(もしくは下がった)ことや、何かの行為が繰り返されることを示す場合に使うことができます。

いずれも使いやすい表現です。使いやすい分、時として「言わぬが花」なこともあります。「もっといえば」、「付け加えると」などを使う際には少し注意を払った方が良い場合もあるかもしれません。

\次のページで「「更に」の活用例」を解説!/

「更に」の活用例

このようにして見ていくと「更に」という表現は、硬すぎず、しかし砕けすぎず、文語としても口語としても、とても使いやすい表現の一つであることがよくわかります。

「更に」を上記の意味で宣伝文などに用いる場合は、以下のような使い方ができるのはないでしょうか。

「この商品は注文時にさらに10%の割引が適用されます」

「この商品は注文確定時に10%の割引が適用され、さらにお得にお買い求めいただけます」 

「食べる前にお好みでスパイスやハーブを加えると、香りや風味が増しさらに(より一層)美味しく召し上がることができます」

「突然の雨でずぶ濡れになった。さらに(そればかりか)風邪を引いて三日間寝込むことになった」

「晴れた空の青さが草木の新緑をさらに際立たせる」

上記のように文中に「更に」を使うことで、対象としている物事への印象を強める、またメリットとして強調したいことを引き立てることが可能です。

たとえば最初の例文にある「この商品は注文時に10%の割引が適用されます」という文章では、「注文時に10%割引される」ことが伝わり、一旦お得であることの理解を促しますが、「更に」を文中に置くことで、もともと割引されている商品が注文時に10%割引が追加され、もっとお得であることを伝えられます。言葉を置く位置、表すタイミングでよりインパクトのある表現も可能ですので、効果的に使用してみましょう。

強調する時に使う「更に」のまとめ

今回は強調に用いる「更に」の使い方についてまとめてみました。

古典文学の中には、現代と同じ言葉があっても全く違う意味や真逆を表す場合が多々あります。それは言葉は時代を写す鏡であるため、その時代の生活様式や人々の感覚と共に変化して行く“生き物”だからです。

しかし「更に」は、1000年以上も意味も音も変わることなく用いられてきた言葉であり表現。その分、私たちが親しんできたより身近な表現の一つ、懐の深い言葉と言えるでしょう。

よく使う簡単な言葉ではありますが、何かを強調して引き立てたい場合には「更に」やその類義語をうまく使用すると効果的な文章をつくることができます。

また文章などには、こうした点を意識して書いていくと、より練られた表現が組み立てられますので参考にしてみてください。

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言葉の意味

効果的な文章をつくるための「更に」の使い方は?10年超の現役ライターがサクッとわかりやすく解説!

「夏は夜。月のころはさらなり、……」
「春はあけぼの……」の出だしで有名な平安時代の随筆『枕草子』の一節。作者、清原元輔の娘とされる清少納言が、四季の美しい点を述べるにあたり、春に続く夏の“エモい”点として、今日の若者言葉で表現するなら、「夏は夜がヤバイ。月明かりがあるともっとヤバイよね」と描写しています。
今回は、このように古くから用いられている、何かを強調したり程度を強める時に使用する「更に」の使い方と、その類義語として使用できる表現を、生活情報誌など情報誌系のライターを10年経験した筆者がまとめました。

強調する時に使う「更に」の活用法

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「更に」という言葉は他にも複数の意味で使用されますが、ここでは物事の程度を強調する場合や事実を複数並べて対象の人や物を高める場合など、効果的に活用する方法に絞って紹介します。

「更に」の7つの使用例

まずは使用例をいくつか見てみましょう。

「彼は頭脳明晰、さらに人柄もよい」

「さらに品質が向上する」

「これよりも更に古い資料がほしいのですが」

「さらに上申を続ける」

「更によいことに」

「更に困ったことに」

「さらに念を入れて掃除をする」

例文からもみてとれるとおり、現状以上あるいは以下、もしくは現状からもっと進行し一段進んだ状態についてを述べるときに使用します。現状を上乗せする、現代風に言うと“盛る”際に使える、ということですね。これは肯定的な意味にも否定的な場合にも使えます。この「更に」という表現、普段使いはもちろん、ビジネスシーンや目上の人との会話でも問題なく使用できますが、内容の“盛り”すぎには注意しましょう。

これを踏まえて「更に」に代わる他の表現を見てみます。

「更に」の類義語として使用できる11の単語

「更に」の類義語として、下記のように言い換えることができます。

1.(それに)加えて

2.その上

3.そればかりか

4.さらに言うと

5.もっといえば

6.付け加えると

7.なお且つ

8.一層

9.一段と

10.もう一度

11.もっと

「加えて」、「その上」、「そればかりか」、「なお且つ」、「一層」などは、少々改まった表現ですので、ビジネスシーンでも十分活用できますが文語的です。改まった内容のメールや文書で使用すると良いでしょう。

以下に例文をあげます。

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