この記事では「有終の美」についてみていく。

「有終の美」はその読み方から、「優秀」と変換されてしまうことも多い。しかしこれは間違いです。正確には「有る終わり」と書くぞ。「有終の美」の正しい意味や語源について理解すると、どうしてこのように書くのかが理解できるでしょう。

今回は、大学で日本文学を専攻し、塾講師時代には国語の指導に力を入れていたというカワナミを呼んです。意味や例文・類義語などを一緒に解説していく。

ライター/カワナミ

大学では日本文学を専攻。塾講師時代には国語の指導に特に力を入れていた。普段から気になった言葉の意味や語源を調べるのが趣味とのこと。「丁寧にわかりやすく伝える」ことをモットーにしている。

「有終の美」の意味や語源

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「有終の美」と書いて「ゆうしゅうのび」と読みます。まずは辞書を使って、正確な意味をつかみましょう。

「有終の美」の意味は「最後を立派に仕上げること」

物事をやりとおし、最後をりっぱにしあげること。結果がりっぱであること。「有終の美を飾る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「有終の美」

「有終の美」は物事を最後までやり遂げて、立派に仕上げることを表す古事成語です。「有終」とは「終わりが有る」と書きます。つまり最後までやり遂げるという意味です。そこに「美」という字が加わって、やり遂げた最後が美しく、素晴らしいものだと示しています。最後まで努力し、やり遂げた人を賞賛するポジティブな言葉です。

「優秀の美」は間違い!

よくある間違い「ゆうしゅう」を「優秀」と書いてしまうパターンがあります。優秀かどうかは「有終の美」には関連していません。正確に把握しておきましょう。使い方の項目では、誤った言い回しについても説明しています。ぜひそちらも続けてお読みください。

「有終の美」の語源は?

「有終の美」の語源中国最古の詩集である「詩経」(しきょう)に収められた詩の一節で、「初め有らざるなし、克(よ)く終わり有るは鮮(すくな)し」の部分からだとされています。始まりは良いが、最後までまっとうすることは少ないという意味です。当初は素晴らしかった王も、やがて乱れた政治を行うようになり民を苦しめるという内容を歌った詩でした。転じて、物事をやり遂げて、立派な最後を仕上げることを讃える「有終の美」が生まれました。

\次のページで「「有終の美」の使い方・例文」を解説!/

「有終の美」の使い方・例文

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「有終の美」の使い方と例文を見ていきます。

「有終の美」の使い方

「有終の美」以上によく耳にするのは、「有終の美を飾る」という言い回しではないでしょうか。最後までやり遂げ、価値のある最後を得たという意味です。「有終の美」だけですと、最後までやり遂げることや立派な最後を意味します。

多く扱われるのは、卒業や退職、引退など節目の場面です。ただし、結婚や死については使ってはいけません。注意しましょう。結婚などのお祝い事は終わってはいけないものです。また、死については悲しい出来事であるにも関わらず、ポジティブな言葉を使うことは場違いですし、マナー違反になります。そのほか、よくある間違った使用例をまとめました。

・「有終の美を迎える」:有終の美は、自ら努力して得るものであり自然と迎えるものではないため不自然なので誤り
・「有終の美をおさめる」:「成功を収める」「人生を修める」などと混同しており誤り

「有終の美」を使った例文

1先輩は退職前最後の仕事をきっちり務め上げ、その姿はまさに有終の美だった。
2中学校生活最後の試合で優勝し、有終の美を飾ることができた。
3大人気バンドの解散前最後のコンサートには大勢のファンが詰めかけ、有終の美を見届けた。

1は勤務当初から良い成績を残してきた先輩社員が、最後の仕事まで立派に仕上げたことを表しています。

2では中学生活でずっと努力を続けてきた部活を最後までやり遂げ、優勝という立派な成績を得ました

3は大人気バンドの人気に陰りが見えることなく、ファンは最後まで素晴らしい姿を見届けたという意味です。

\次のページで「「有終の美」の類義語」を解説!/

「有終の美」の類義語

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「有終の美」は、物事をやり通し、最後を立派に仕上げること。「立派な最後」を表す言葉を類義語としてご紹介します。

「有終完美」:何事も終わりが肝心であること

「有終完美」(ゆうしゅうかんび)何事も終わりが肝心であるという意味です。最後まで物事をやり遂げることを表すので、「有終の美」と同義と言えます。

「掉尾を飾る」:最後が立派であるさま

「掉尾を飾る」(ちょうびをかざる)とは、物事の最後を立派に締めくくることを意味します。「掉尾」(ちょうび)は捕まえられた魚が死ぬ間際に尾を振ることです。そこから転じて、「最後」という意味になりました。「掉尾にふさわしい」「掉尾を彩る」などの言い回しももあります。「有終の美」と同様、人生における節目のときに華々しい最後を表す言葉として使用するほか、小説や舞台、式典での挨拶などかしこまった場面で使われることが多い表現です。

「立つ鳥跡を濁さず」:最後は美しくあるべきだ

「立つ鳥跡を濁さず」(たつとりあとをにごさず)の意味でよく知られているのは、立ち去るときに綺麗に後始末をしていくべきという戒めの方でしょう。ところがもうひとつの教えとして、最後の引き際は潔く美しくあるべきだという意味もあります。由来は、水鳥が飛び去ったあとの水辺が、濁ることなく澄んだままであること。また、「立つ」は立ち上がるのではなく、飛び上がって去るという意味です。

「終わりよければ全てよし」:大切なのは終わりである

「終わりよければ全てよし」とは、過程がどんなものであれ、大切なのは結果であるという意味です。終わりが大切だという点は「有終の美」と共通していますが、最も大きな違いは最後に至るまでの過程にあります。「終わりよければ全てよし」はどんな失敗やトラブルがあったとしても最後が良い結果であれば良いことを言い、「有終の美」は最初から最後まで努力して成果を維持し続けているというイメージです。

「有終の美」の対義語は?

「有終の美」の対義語も押さえておきましょう。「最後を立派に仕上げること」と反対の意味ですから、「最後に勢いをなくす」という意味合いの言葉を集めました。

\次のページで「「竜頭蛇尾」:最初は勢いのあるものが最後は冴えない」を解説!/

「竜頭蛇尾」:最初は勢いのあるものが最後は冴えない

「竜頭蛇尾」(りゅうとうだび)は、頭は竜のように勢いがあるものの、最後は蛇の尾のように先細りで冴えないもののことを言います。

「仏作って魂入れず」:最も大事なものが抜け落ちていること

「仏作って魂入れず」(ほとけつくってたましいいれず)は、最も大事なものが抜け落ちているという意味です。立派な仏像を作っておきながら最後に魂を入れ忘れてしまうことから、最後の仕上げをしなければそれまでの努力が無駄になることを表すようになりました。「仏作って眼を入れず」(ほとけつくってまなこをいれず)とも言います。

「晩節を汚す」:名声を地に落とすこと

「晩節」とは季節や人生の終盤のこと「晩節を汚す」(ばんせつをけがす)とは地位や栄誉を築いてきた人が、過ちを犯してその評価を失ってしまうことを意味します。一般人に対してというよりも、名のある著名人や政治家などに使うことが多い言葉です。

「有終の美」の英訳は「crowning glory」

「crowning glory」最後を飾る名誉・栄光という意味ですので、「有終の美」に当てはまると言えます。また、「有終の美を飾る」と表現したい場合には「成功で終える」という意味の「end successfully」を用いるのがいいでしょう。

優秀でなくても「有終の美」

この記事では「有終の美」について解説しました。

「有終の美」には優秀な結果を残すという意味も含まれているでしょう。しかしそういった結果のみに限らず、目標や目的に向かって最後までやり遂げることが最も大切だと考えます。物事を完遂することは、当たり前のようでいて意外と簡単ではありません。困難があろうとも挫けずにゴールに向かっていく姿は、それだけで十分に美しいですよね。最後まで無事に仕上げられた際には、ぜひその人を(それが自分であっても)「有終の美を飾ったね」と讃えてあげてください。

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国語言葉の意味

優秀でなくても「有終の美」と言うの?意味や例文・類義語などを元塾講師ライターが丁寧にわかりやすく解説!

この記事では「有終の美」についてみていく。

「有終の美」はその読み方から、「優秀」と変換されてしまうことも多い。しかしこれは間違いです。正確には「有る終わり」と書くぞ。「有終の美」の正しい意味や語源について理解すると、どうしてこのように書くのかが理解できるでしょう。

今回は、大学で日本文学を専攻し、塾講師時代には国語の指導に力を入れていたというカワナミを呼んです。意味や例文・類義語などを一緒に解説していく。

ライター/カワナミ

大学では日本文学を専攻。塾講師時代には国語の指導に特に力を入れていた。普段から気になった言葉の意味や語源を調べるのが趣味とのこと。「丁寧にわかりやすく伝える」ことをモットーにしている。

「有終の美」の意味や語源

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「有終の美」と書いて「ゆうしゅうのび」と読みます。まずは辞書を使って、正確な意味をつかみましょう。

物事をやりとおし、最後をりっぱにしあげること。結果がりっぱであること。「有終の美を飾る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「有終の美」

「有終の美」は物事を最後までやり遂げて、立派に仕上げることを表す古事成語です。「有終」とは「終わりが有る」と書きます。つまり最後までやり遂げるという意味です。そこに「美」という字が加わって、やり遂げた最後が美しく、素晴らしいものだと示しています。最後まで努力し、やり遂げた人を賞賛するポジティブな言葉です。

「優秀の美」は間違い!

よくある間違い「ゆうしゅう」を「優秀」と書いてしまうパターンがあります。優秀かどうかは「有終の美」には関連していません。正確に把握しておきましょう。使い方の項目では、誤った言い回しについても説明しています。ぜひそちらも続けてお読みください。

「有終の美」の語源は?

「有終の美」の語源中国最古の詩集である「詩経」(しきょう)に収められた詩の一節で、「初め有らざるなし、克(よ)く終わり有るは鮮(すくな)し」の部分からだとされています。始まりは良いが、最後までまっとうすることは少ないという意味です。当初は素晴らしかった王も、やがて乱れた政治を行うようになり民を苦しめるという内容を歌った詩でした。転じて、物事をやり遂げて、立派な最後を仕上げることを讃える「有終の美」が生まれました。

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