この記事では「手前味噌」について解説する。

端的に言えば手前味噌の意味は「自分で自分を褒めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「手前味噌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして5年間勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。最近の趣味は具材や味噌を変えての味噌汁作り。

 

「手前味噌」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「手前味噌(てまえみそ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手前味噌」の意味は?

「手前味噌」には、次のような意味があります。

自分で自分を褒めること。自慢。
▽かつて味噌みそは自家製で、自分が造った味噌を互いに自慢し合ったことからできた言葉。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「手前味噌」

みなさんは味噌は好きですか?四字熟語「手前味噌」は、私たちの食生活を支える食材「味噌」の歴史から生まれた言葉です。

ここでの「手前」とは自分自身のこと、そして自分の手で行う物事を指します。つまり「手前味噌」とは「手前(私)が作った味噌は素晴らしい」と自慢しているのです。かつては農民たちが自家製の味噌を作り、互いに自慢し合っていたことから、自分自身を褒める・自慢する言葉として定着したと言われています。もちろん現代では、味噌に限らず様々な事柄に対して使うことができますよ。

「手前味噌」の語源は?

「手前味噌」の語源は、私たちに馴染み深い食材「味噌」の歴史に起因します。

味噌の起源は古代中国にあると言われており、平安時代の日本では大変な高級品として扱われていました。現代のような調味料としてではなく、直接なめるなどしてそのまま食されていたとのこと。また、地位の高い人々への贈り物や給与として味噌が使われていたようです。

それほど特別だった味噌が庶民に普及したのは室町時代のことで、原材料である大豆の生産方法が確立され、収穫量が増加・安定したことから農家たちが自家製の味噌を作り始めました。ここから「手前味噌」の由来となる「自家製の味噌の競い合い」が広まったのです。

各家庭が工夫を凝らした自慢の味噌を自慢し合うという、日常のコミュニケーションから生まれた言葉が「手前味噌」でした。簡単にスーパーなどで購入できる味噌ですが、本来は手間と時間がかかるもの。だからこそ、当時の人々がこぞって自慢し合ったのも分かる気がします。

\次のページで「「手前味噌」の使い方・例文」を解説!/

「手前味噌」の使い方・例文

「手前味噌」の使い方を例文を通して確認しましょう。

1.手前味噌ながら、弊社の本年度の売り上げが過去最高を更新いたしました。
2.手前味噌で恐縮ですが、我が社の顧客満足度は非常に高く、好評を頂いております。
3.手前味噌を並べるだけでなく、確かな結果を出す必要があります。

例文を見ると分かる通り、「手前味噌」は後ろに「〜ですが・恐縮ですが」などの言葉をつけて使われることが一般的です。

・手前味噌ながら
・手前味噌ですが
・手前味噌で恐縮ですが など

「手前味噌」単体での意味は「自分で自分を褒める・自慢する」ことでしたね。そこに「〜ですが」と否定の接続詞を続けることで、聞き手に謙虚なイメージを与えることができます。つまり、自分の成し遂げた良い行いや結果などを話す際に、それがただの自慢話として受け取られないように、「手前味噌ですが」と前置きをするのです。

ビジネスシーンなどにおいて、相手に自社製品の良いところを伝えたいけれど、偉そうに聞こえないようにしたい時にも重宝します。自分自身のことだけでなく、家族や同僚など、近しい他人のことを含めて使うことができますよ。

「手前味噌」の類義語は?違いは?

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「手前味噌」と類似した言葉を確認しましょう。

「自慢」

一番シンプルな類似表現は「自慢」でしょう。日常会話においても非常によく使われる表現かと思います。改めて意味を確認しますと、「自慢」とは「自分や自分と関係のある人・物を褒め、他人に誇ること」です。

\次のページで「「自画自賛」」を解説!/

「自画自賛」

「手前味噌」の類義語として「自画自賛(じがじさん)」を紹介します。

「自画自賛」は「自分で自分のことを褒める」という意味を持つ四字熟語です。漢字の「賛(讃)」とは絵画に他人が記す文章などを指しますが、自画自賛においては自ら自分の作品に賛を書き込んでいる様子を表します。ここから、自分の行いや成果を自分で自慢するという意味が定着しました。

「自画自賛」は「手前味噌」とほとんど同様の意味を持つ言葉として使われています。違いを挙げるならば、「自画自賛」は「自画自賛をする・した」のように動詞として使うことができる点でしょう。(「手前味噌をする」という表現は不自然です。)

「手前味噌」の対義語は?

続いて対義語を確認しましょう。

「卑下」「謙遜」

手前味噌の対義語として「卑下(ひげ)」と「謙遜(けんそん)」を紹介します。

「卑下」とは自分のことを他者より劣った存在として扱うことを意味し、あえて自らを低く見せる熟語です。「卑しめる(いやしめる)」は「見下す」というニュアンスを含みます。

遜」とは自分の能力を低く捉え、控えめに振る舞うことを意味し、卑下と似ているのですが、自己を見下すのではなく、謙虚な態度をとる点がポイントです。

・彼女は褒められると必要以上に自分を卑下するので、素直に受け止めたら良いと思う。
・彼の作品は最優秀賞に輝いたが、インタビューでは謙遜して多くを語らなかった。

「手前味噌」の英訳は?

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最後に「手前味噌」の英語表現を確認しましょう。

「brag」

"brag"は「自慢する」を意味する、日常会話においても頻出する動詞です。

また、 "I don't mean to brag, but..." は「自慢するわけではないですが」という前置きで、「手前味噌ですが」と同様に使うことができます。カジュアルな表現ですが覚えておくと便利ですよ。

\次のページで「「手前味噌」を使いこなそう」を解説!/

「手前味噌」を使いこなそう

この記事では「手前味噌」の意味・使い方・類語などを確認してきました。

「手前味噌」の意味は「自分で自分を褒めること・自慢すること」でした。自分の自慢話ばかりして相手を疲れさせてしまうのはいただけませんが、「私なんか...」と自分を見下す必要もないはず。「手前味噌ですが」には、謙虚ながらも自信や肯定感を感じさせる心意気が詰まっているように思います。ぜひこの歴史ある言葉を使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「手前味噌」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「手前味噌」について解説する。

端的に言えば手前味噌の意味は「自分で自分を褒めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「手前味噌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナガタ ナミキ

外資企業の営業マネージャーとして5年間勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、言葉の持つニュアンスや響きを大切にするライターとして現在活動中。最近の趣味は具材や味噌を変えての味噌汁作り。

 

「手前味噌」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「手前味噌(てまえみそ)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手前味噌」の意味は?

「手前味噌」には、次のような意味があります。

自分で自分を褒めること。自慢。
▽かつて味噌みそは自家製で、自分が造った味噌を互いに自慢し合ったことからできた言葉。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「手前味噌」

みなさんは味噌は好きですか?四字熟語「手前味噌」は、私たちの食生活を支える食材「味噌」の歴史から生まれた言葉です。

ここでの「手前」とは自分自身のこと、そして自分の手で行う物事を指します。つまり「手前味噌」とは「手前(私)が作った味噌は素晴らしい」と自慢しているのです。かつては農民たちが自家製の味噌を作り、互いに自慢し合っていたことから、自分自身を褒める・自慢する言葉として定着したと言われています。もちろん現代では、味噌に限らず様々な事柄に対して使うことができますよ。

「手前味噌」の語源は?

「手前味噌」の語源は、私たちに馴染み深い食材「味噌」の歴史に起因します。

味噌の起源は古代中国にあると言われており、平安時代の日本では大変な高級品として扱われていました。現代のような調味料としてではなく、直接なめるなどしてそのまま食されていたとのこと。また、地位の高い人々への贈り物や給与として味噌が使われていたようです。

それほど特別だった味噌が庶民に普及したのは室町時代のことで、原材料である大豆の生産方法が確立され、収穫量が増加・安定したことから農家たちが自家製の味噌を作り始めました。ここから「手前味噌」の由来となる「自家製の味噌の競い合い」が広まったのです。

各家庭が工夫を凝らした自慢の味噌を自慢し合うという、日常のコミュニケーションから生まれた言葉が「手前味噌」でした。簡単にスーパーなどで購入できる味噌ですが、本来は手間と時間がかかるもの。だからこそ、当時の人々がこぞって自慢し合ったのも分かる気がします。

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