端的に言えば借りて来た猫の意味は「いつもと違ってとてもおとなしい、静かである様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
営業マネージャーとして勤務し、カナダでの留学を経てライターとして活動中のナガタナミキを呼んです。一緒に「借りて来た猫」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ナガタ ナミキ
外資系企業の営業マネージャーとして5年間勤務し、相手に伝わる会話表現やコーチングスキルについて学ぶ。カナダでの留学を経て、改めて独特の響きやニュアンスを持つ日本語に興味を持つ。具体的で伝わりやすい文章づくりを大切にするライターとして現在活動中。大の猫好き。
「借りて来た猫」の意味は?
「借りて来た猫」には、次のような意味があります。
ふだんと違って、非常におとなしいありさまの形容。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「借りてきた猫」
辞書にはとてもシンプルな意味が載せられていますが、イメージは沸いてきましたか?「借りて来た猫」とは猫が含まれる慣用句ですが、対象は猫ではなく、主に人に対して使われます。
ポイントは「普段と違って」「おとなしい・静かである・よそよそしい」様子であることです。いつもは賑やかな人が、ある場面で静かになった時などに「借りて来た猫のようである」と例えることができます。簡単な例を一つ、以下に用意しました。
あなたと日頃から仲の良い友人がいるとしましょう。普段あなたと会って話す時は、友人は常に笑顔で親しみやすい雰囲気を持っています。しかし新学期当日、その友人から笑顔が消え口数も減り、表情も堅く、いつもと全く違う様子であることにあなたは気付きました。実はクラス替えをして新しい同級生たちに囲まれ、友人は緊張していたのです。
いかがでしょうか。ここでは、普段と違う状況による緊張感から「借りて来た猫」のようになった例を紹介しました。その人の普段の様子を知る家族や友人、同僚などからすれば、いつもと様子が違うと不自然に感じますよね。このように日頃とのギャップが生じるほど「おとなしい・静かである・よそよそしい」状態を「借りて来た猫」と言うことができるのです。
「借りて来た猫」の語源は?
次に「借りて来た猫」の語源を確認しましょう。
実はこの「借りて来た猫」という慣用句は、猫の持つ習性から生まれたと言われています。江戸時代、日本の家庭はねずみの被害に悩まされ、貴重な食料である米や野菜などが食い荒らされていました。そこでねずみ退治に大活躍したのが猫でした。猫たちは各々の家でねずみを見事に捕まえ、人々に重宝されたのです。ある時、評判を聞きつけた隣人がねずみを駆除しようと猫を借りました。しかし、その「借りて来た猫」はただおとなしくするだけで全く働かず、何の役にも立ちませんでした。
これは、猫の「普段と違う環境に適応することが苦手」な習性が原因で、驚きや恐怖などのストレスを感じ、ネズミ捕りどころではなくなってしまったのです。このように、自分の家では活躍できても、見ず知らずの他人の家では静かに固まってしまう猫の様子が、「借りて来た猫」の成り立ちに関係していると言われています。何だか可哀想な話ではありますが、猫と暮らしたことのある方はこのエピソードに頷けるのではないでしょうか。
「借りて来た猫」の使い方・例文
「借りて来た猫」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.苦手な上司が現れた途端、彼は「借りて来た猫」のように黙ってしまった。
2.片思い中の友人は、好きな相手の前では「借りて来た猫」のように緊張している。
3.人見知りな性格なので、新しい環境に慣れるまでは「借りて来た猫」のように振る舞ってしまう。
4.弟は大好きな歌手に街で遭遇したが、緊張で固まり、まさに「借りて来た猫」であった。
「借りて来た猫」は、同様の意味で「借りて来た猫のように」と使われることも一般的です。日常会話でも使われるので確認しておきましょう。
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