
「二律背反」の語源は何?

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「二律背反」という言葉は、元々は日本語にない言葉でした。カントという哲学者が「二律背反」の概念を考えだし、「アンチノミー」と名付けましたが、これを和訳しようとしてできた日本語が「二律背反」となります。
カントは論理学を学んでおり、論理学のなかでは「二律背反」はそもそも発生しないはずでした。しかし、人間の作り出した理念の中では「二律背反」が発生してしまいます。それはなぜか、ということをカントは論じていましたが、これを世間では「カントのアンチノミー論」と呼ばれ、今でも哲学の世界で色あせることなく生きているのです。
人に寄り添う「二律背反」
「二律背反」は意味を調べると、とても複雑でややこしそうに見えてしまいます。辞書で意味を調べただけでは、読んでも理解できずじまいになってしまう場合もないとは言えません。しかし、人間は時に矛盾した気持ちを持つ生き物であり、生きていくうえで割り切れないと感じることも多々あるものです。そのような気持ちを「二律背反」と呼ぶのであれば、実は「二律背反」は非常に人に近い、人の感情に寄り添った言葉とも捉えられます。
「二律背反」の出番として、創作や恋愛の世界が多いのも、その裏付けです。たとえ「二律背反」という言葉そのものは知らないとしても、「二律背反」と共に私達は生きています。そう考えると、「二律背反」という言葉をいたずらに難しいと思うことはなくなるでしょう。