上記の引用には、2つの意味が内包されています。「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」と、「単に矛盾や逆説(パラドックス)と言い換えても差し支えない意味合い」です。どちらもやや複雑な意味であり、具体性に欠けているため、どう違うの?同じにしか見えないけど?と思うかもしれません。
確かに似てはいますが微妙に違うため、どう違うのかきちんと押さえましょう。
その1:互いに正しい「二律背反」
上記のトピックの引用にある「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」とはどういうことでしょうか。
これは仮説Aと、Aに矛盾する仮説Bがあったとして、どちらが真実かわからない場合のことを指しています。Aが正しい確率とBが正しい確率は互いに50%程度であり、どちらが真実でもおかしくはないということです。また、言い換えるとどちらかはおそらく真実である、と捉える事ができます。
その2:矛盾を起こす「二律背反」
上記のトピックの引用にある「単に矛盾や逆説(パラドックス)と言い換えても差し支えない意味合い」の方ですが、こちらは比較的簡単であり、単純に矛盾するようなことを指しています。上記「その1」のトピックとの違いは、真実があるかどうかという点です。
「その1」で説明した意味は、「仮説Aと仮説Bがあり、どちらが該当するのかはわからないが、どちらかは真実である」ということを指しています。ところがこのトピックで説明される意味は、単純に矛盾している部分を指しており、どちらか片方が真実であるというわけではありません。
「二律背反」って具体的にどういうこと?
image by iStockphoto
上記のトピックでは「二律背反」の意味を詳しく説明しました。しかし元々の意味が難しいため、ピンとこない人も多いでしょう。
ではどうすべきかというと、具体的に何を指しているのかを知ることです。意味を学んだだけでは抽象的な概念が頭に生まれるだけですが、実際の例を見ることで、言葉の解像度はぐんと上がります。また、具体例を知ることで、「二律背反」の使いどころも分かるようになっていくでしょう。
具体例1:双方に説得力のある話
上記のトピック「その1」で解説した「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」の具体例を考えましょう。これに当てはまるのは、「ニワトリという存在が先にあってそこから卵が産まれたのだ」という説と、「卵が先にあってそこからニワトリが育ったのだ」という説などです。
いわゆる「ニワトリが先か卵が先か」問題ですが、ニワトリか卵のどちらかが先であることは間違いないものの、どちらが先なのかは誰にもわかりません。また、どちらが先であってもおかしくはなく、「おそらくこちらが正解だ」と推量する事すら難しい問題です。
このように、正反対のことを述べている仮説が2つあり、どちらが正解ともいえないことを「二律背反」と言います。
\次のページで「具体例2:矛盾をはらむ話」を解説!/


