この記事では「二律背反」について解説する。「二律背反」は意味の難しい言葉です。少し調べただけでは、具体的な使い方がわからず、ただ覚えるだけになってしまう。もちろん覚えることも重要ですが、せっかく覚えるのなら使えるようになっておいた方が良いぞ。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「二律背反」の意味や使い方、語源などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「二律背反」の2つの意味とは?

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「二律背反」の意味は以下の通りです。

二律背反は、哲学の用語で、ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況のことである。論理的根拠に基づき、ある命題と、その否定命題が、同等の妥当性を持って証明できる状況。

現代の 一般的な文脈では、「どちらも正当であり、かつ、互いに対立する主張」を指すような意味で用いられることが多い。
~中略~
単に「矛盾」や「逆説(パラドックス)」と言い換えても差し支えない意味合いで用いられることも多い。

出典:Weblio辞書「二律背反 意味」

\次のページで「その1:互いに正しい「二律背反」」を解説!/

上記の引用には、2つの意味が内包されています。「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」と、「単に矛盾や逆説(パラドックス)と言い換えても差し支えない意味合い」です。どちらもやや複雑な意味であり、具体性に欠けているため、どう違うの?同じにしか見えないけど?と思うかもしれません。

確かに似てはいますが微妙に違うため、どう違うのかきちんと押さえましょう。

その1:互いに正しい「二律背反」

上記のトピックの引用にある「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」とはどういうことでしょうか。

これは仮説Aと、Aに矛盾する仮説Bがあったとして、どちらが真実かわからない場合のことを指しています。Aが正しい確率とBが正しい確率は互いに50%程度であり、どちらが真実でもおかしくはないということです。また、言い換えるとどちらかはおそらく真実である、と捉える事ができます。

その2:矛盾を起こす「二律背反」

上記のトピックの引用にある「単に矛盾や逆説(パラドックス)と言い換えても差し支えない意味合い」の方ですが、こちらは比較的簡単であり、単純に矛盾するようなことを指しています。上記「その1」のトピックとの違いは、真実があるかどうかという点です。

「その1」で説明した意味は、「仮説Aと仮説Bがあり、どちらが該当するのかはわからないが、どちらかは真実である」ということを指しています。ところがこのトピックで説明される意味は、単純に矛盾している部分を指しており、どちらか片方が真実であるというわけではありません。

「二律背反」って具体的にどういうこと?

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上記のトピックでは「二律背反」の意味を詳しく説明しました。しかし元々の意味が難しいため、ピンとこない人も多いでしょう。

ではどうすべきかというと、具体的に何を指しているのかを知ることです。意味を学んだだけでは抽象的な概念が頭に生まれるだけですが、実際の例を見ることで、言葉の解像度はぐんと上がります。また、具体例を知ることで、「二律背反」の使いどころも分かるようになっていくでしょう。

具体例1:双方に説得力のある話

上記のトピック「その1」で解説した「ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況」の具体例を考えましょう。これに当てはまるのは、「ニワトリという存在が先にあってそこから卵が産まれたのだ」という説と、「卵が先にあってそこからニワトリが育ったのだ」という説などです。

いわゆる「ニワトリが先か卵が先か」問題ですが、ニワトリか卵のどちらかが先であることは間違いないものの、どちらが先なのかは誰にもわかりません。また、どちらが先であってもおかしくはなく、「おそらくこちらが正解だ」と推量する事すら難しい問題です。

このように、正反対のことを述べている仮説が2つあり、どちらが正解ともいえないことを「二律背反」と言います。

\次のページで「具体例2:矛盾をはらむ話」を解説!/

具体例2:矛盾をはらむ話

上記のトピック「その1」で解説した「単に矛盾や逆説(パラドックス)と言い換えても差し支えない意味合い」の具体例を考えましょう。

これに当てはまる例としては、「絶対などということは絶対にない」という言葉などが当てはまります。これは上記のトピックと違って、「絶対がある」と「絶対はない」のどちらかが正しいというわけではありません。真実や正解があるわけではなく、ただ矛盾だけがそこにある状態のことです。

「二律背反」の使い方

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「二律背反」は以下のように使用します。

1.企画の目標が「二律背反」の状態になっていて頭が痛い。
2.彼は家庭で「二律背反」に悩まされているらしい。
3.あなたの言ってる事は「二律背反」であることをわかっていますか?

実際に「二律背反」を使用する際は、上記のように具体的にどこが「二律背反」なのかを示さず、「二律背反」とだけ言う場合も多いです。そのような場合は、文脈からどの部分とどの部分が「二律背反」となっているのか読み解く必要があります。

「二律背反」を使用する場面って?

「二律背反」はその意味上、主に悩んだりしている時によく使用されます。文学作品の中などにも登場しますが、恋愛の話題においても生じやすい概念です。「告白したいけれど怖いから告白したくない」「相手が幸せだと嬉しいけれど自分以外の人と幸せになるのは嫌だ」などという気持ちは、全て「二律背反」と言えます。

\次のページで「「二律背反」の語源は何?」を解説!/

「二律背反」の語源は何?

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「二律背反」という言葉は、元々は日本語にない言葉でした。カントという哲学者が「二律背反」の概念を考えだし、「アンチノミー」と名付けましたが、これを和訳しようとしてできた日本語が「二律背反」となります。

カントは論理学を学んでおり、論理学のなかでは「二律背反」はそもそも発生しないはずでした。しかし、人間の作り出した理念の中では「二律背反」が発生してしまいます。それはなぜか、ということをカントは論じていましたが、これを世間では「カントのアンチノミー論」と呼ばれ、今でも哲学の世界で色あせることなく生きているのです。

人に寄り添う「二律背反」

「二律背反」は意味を調べると、とても複雑でややこしそうに見えてしまいます。辞書で意味を調べただけでは、読んでも理解できずじまいになってしまう場合もないとは言えません。しかし、人間は時に矛盾した気持ちを持つ生き物であり、生きていくうえで割り切れないと感じることも多々あるものです。そのような気持ちを「二律背反」と呼ぶのであれば、実は「二律背反」は非常に人に近い、人の感情に寄り添った言葉とも捉えられます。

「二律背反」の出番として、創作や恋愛の世界が多いのも、その裏付けです。たとえ「二律背反」という言葉そのものは知らないとしても、「二律背反」と共に私達は生きています。そう考えると、「二律背反」という言葉をいたずらに難しいと思うことはなくなるでしょう。

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国語言葉の意味

「二律背反」の意味は?真実はどこにある?使い方や具体例・語源も言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「二律背反」について解説する。「二律背反」は意味の難しい言葉です。少し調べただけでは、具体的な使い方がわからず、ただ覚えるだけになってしまう。もちろん覚えることも重要ですが、せっかく覚えるのなら使えるようになっておいた方が良いぞ。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「二律背反」の意味や使い方、語源などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「二律背反」の2つの意味とは?

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「二律背反」の意味は以下の通りです。

二律背反は、哲学の用語で、ふたつの矛盾する(併存し得ない)命題がどちらも成立し得る状況のことである。論理的根拠に基づき、ある命題と、その否定命題が、同等の妥当性を持って証明できる状況。

現代の 一般的な文脈では、「どちらも正当であり、かつ、互いに対立する主張」を指すような意味で用いられることが多い。
~中略~
単に「矛盾」や「逆説(パラドックス)」と言い換えても差し支えない意味合いで用いられることも多い。

出典:Weblio辞書「二律背反 意味」

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