端的に言えば「猪突猛進」の意味は「真っすぐに突き進むこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えて便利です。
現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「猪突猛進」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/すけろく
現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。
「猪突猛進」の意味は?
「猪突猛進」には、次のような意味があります。
一つのことに向かって、向こう見ずに猛烈な勢いで、つき進むこと。
出典:大辞林 第三版(三省堂)「猪突猛進」
ここでポイントとして挙げておきたいのが、「向こう見ず」ということばが含まれている点です。「向こう見ず」には、結果がどうなるかも考えずに行動するという意味合いがあります。
がむしゃらに目標へ向かって突き進むだけならまだしも、後先考えずに行動してしまうので失敗してしまうリスクも少なくないことでしょう。もちろん、大成功を収めることだってあるでしょうが、傍で見ている側からすればハラハラドキドキしてしまうのは必然だといえます。
このように、「猪突猛進」には目標に向かってまっしぐらに突進する力強いイメージがある一方で、深く物事を考えずにただひたすらに突き進んでしまうというネガティブなイメージもつきまといがちです。したがって、使用する際にはTPOを十分にわきまえておく必要があります。
「猪突猛進」の使い方・例文
「猪突猛進」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
先輩のAさんは非常に頼りになるが、やや猪突猛進タイプではあるので自分がしっかりサポートしなければと思う。
猪突猛進の勢いで敵陣深くまで侵入できたが、しばらくしてそれは巧妙に仕掛けられた敵方の罠であることに気づいた。
そういう軽はずみで無鉄砲なところを指して猪突猛進な人だと言われているのに、本人はまったく意に介していない。
いずれの例文も、一気呵成に突き進んでいく勇猛な部分と、考えが足りないため慎重さに欠ける部分とが同居している様子がうかがえるものです。
では、続いて誤った使用例についても見ていきましょう。
「猪突猛進」の誤った使用例
「猪突猛進」を間違って使ってしまうと、場合によっては人間関係に多大な悪影響を及ぼしてしまうこともあります。それは、ひとえに「猪突猛進」という四字熟語の持つマイナス面によるものです。
以下に典型的な誤用例をいくつか載せておきますので、参考にしてみてください。
先輩方が見せてくれた猪突猛進な姿には、後輩一同大いに感銘を受けたしだいです。
御社が次々と新しい事業を展開していく様子は、まさに猪突猛進そのものだといえます。
猪突猛進の勢いで、これからも医療・介護の分野で頑張っていきたいと思います。
いずれにしても、相手の勇猛果敢な様子を讃えるつもりで使ったものです。しかし、マイナス面について考慮していなかったために相手によっては強烈な皮肉だと受け取られかねません。
「先輩方の考えの足りなさに感銘を……」などと言われたら、腹を立てない方がおかしいというものです。使い方が合っているかどうか、自信がない場合は使用を避けた方が無難でしょう。
みなさんも、この四字熟語を使う際には細心の注意を払ってくださいね。
#2 「猪突猛進」の類義語は?違いは?
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ところで、「猪突猛進」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。また、細かなニュアンスの違いがあれば、そこにも触れていきたいと思います。
「暴虎馮河」
「暴虎馮河(ぼうこひょうが)」は、先のことをよく考えずに無謀な振る舞いをすることです。「猪突猛進」のような直線的に突き進むイメージはないものの、浅はかな行いであるという点ではよく似ています。
「暴虎」は、素手で虎を殴ることを意味することばです。一方の「馮河」は、大河を歩いて渡るという意味を表しています。
いずれにしても、虎に食い殺されたり大河で溺れたりと大き過ぎるリスクを抱えた行動だといえるでしょう。
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