端的に言えば温故知新の意味は「むかしを知れば今がわかる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
元国語塾講師で、漢文が得意なライターのトミー先生を呼んです。一緒に「温故知新」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/トミー先生
元国語塾講師で、通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことでより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は長い歴史のある孔子の言葉「温故知新」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。
「温故知新」の意味や語源・使い方まとめ
それでは早速四字熟語「温故知新(おんこちしん)」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。古代中国の春秋戦国時代に、孔子という偉い先生がいて、孔子が話した言葉を弟子が集めた『論語』という本があります。そこには故事として現代にも通じるさまざまな道理が述べられているのですが、そこに「温故知新」という言葉があるのですよ。
四字熟語の「温故知新」ですが、もとの中国語は「温故而知新」ですね。「而」という漢字はふつうは訓読しないので、「故きを温ねて新しきを知る」となるのです。「温」と「故」、「知」と「新」の間に「レ点」が入りますが、わかりましたか。ひらがなで書くと、「ふるきをたずねてあたらしきをしる」になりますね。
「温故知新」の意味は?
「温故知新」には、次のような意味があります。「温」は「あたためる」という意味ですから、ただ古いことを知るというのではなく、心であたためるような感じで接するという姿勢を表しているのですよ。「故」も「古」ではないので、ただ古いということではありませんね。
1.《「論語」為政から》過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと。
2.〔補説〕「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」と訓読する。「温」を「あたためて」と読む説もある。なお、「温古知新」と書くのは誤り。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「温故知新」
「温故知新」は、孔子の言葉のなかでもよく知られているもののうちの一つですから、格言やことわざとして知っている人も多いことでしょう。われわれは「今」というこの時間しか生きられないのですが、過去の経験を現在に生かすことができますし、それによって未来への指針を得ることができますね。
それこそがまさに学問の真髄ということなのですよ。辞典で「過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと」という表現があるのは、まさにそこに由来しているのですよ。
「温故知新」の語源は?
次に「温故知新」の語源を確認しておきましょう。『論語』の原文では、「子曰、温故而知新、可以為師矣」となっています。全体をひらがなで書くと、「しいわく、ふるきをたずねてあたらしきをしる、もってしとなるべし」になりますね。
日本語に訳すと、「先生がおっしゃった。古くから伝えられてきたことを研究して、それで人にものを教える人になることができるのです。」となるでしょうか。「温故而知新」は、「人を正しく導く教師になる」ことの前提なのですよ。そしてその後、もっと幅広くさまざまな場面で用いられる四字熟語になったのですね。
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