今回のテーマはずばり「ビタミンC」です。

子どものころから「ビタミンのふくまれた食事をしっかりとりなさい」などというが、君たちはそれぞれのビタミンがなぜ必要なのか、体内でどのように作用するのかを知っているでしょうか?この記事では身近なビタミンでよく知られているビタミンCを取り上げ、その重要性をみていきます。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ビタミンCとは?

ビタミンCは私たちの身体にとって必要不可欠なビタミンの一種。化学の世界では、L-アスコルビン酸という名前で知られています。

image by Study-Z編集部

分子の構造を見ると、炭素Cが6個、水素Hが8個、酸素Oが6個によって構成されていることがわかります。

私たち人間は、ビタミンCを体内でつくることができないため、食事によって摂取しなくてはいけません。ところが、多くの動物では体内にビタミンCを合成する酵素があり、わざわざ食事によって取り入れる必要がないんです。

ビタミンCの合成酵素をもっていないのは、人間を含む霊長目の一部とその他限られた動物だけ。進化の過程でビタミンC合成酵素をつくる遺伝子を失ってしまったのだろうと考えられています。

そもそもビタミンとは?

ここで、知っているようで知らない「ビタミン」についてすこし確認しておきましょう。

ビタミンとは、生物が生存するために必要な栄養素のうち、炭水化物、タンパク質、脂質以外で、なおかつ体内で十分な量を合成できない有機物のことを指します。現在は13種類のビタミンが知られていて、いずれも生命活動を維持するためになくてはならない物質です。

ビタミンCの役割

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それでは、私たちの体内でどのようにビタミンCが使われているのかをご紹介しましょう。

コラーゲンの合成

コラーゲンは私たちの体内の様々な場所に存在するタンパク質の一種です。よく「肌のハリを保つ」とか、「関節の動きをよくする」などとうたい、サプリメントも販売されていますよね。実際、体内のコラーゲンは真皮や軟骨、骨などの構造を維持する素材として使われています。

このコラーゲンは体内で合成することができますが、正常にコラーゲンを合成するはビタミンCが必要です。ビタミンCが足りないと、合成反応がうまく進まなくなってしまいます。のちほど紹介する壊血病は、ビタミンC不足により正常なコラーゲンがつくられなくなることで起きる病気です。

\次のページで「抗酸化作用」を解説!/

抗酸化作用

ビタミンCは非常に酸化されやすい性質をもちます。

化学で習う「酸化還元反応」を覚えているでしょうか?「酸化されやすい(酸素を奪いやすい、電子を放出しやすい)物質」は、言い換えれば「相手を還元しやすい物質=還元剤」であるということ。体内ではこの性質が活性酸素類の消去に利用されています。

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活性酸素は代謝の過程で生じるもので、強い酸化力のある物質です。DNAやタンパク質にダメージを与えてしまうため、活性酸素類の蓄積は老化をすすめたり、病気を悪化させてしまうと考えられています。ビタミンCは活性酸素を還元し、酸化力を奪ってくれるのです。

このとき、ビタミンC自身は酸化されてしまいますが、酵素のはたらきによって再度還元され、もとのビタミンCにもどります。

ビタミンEの再生

ビタミンEはビタミンC同様に強い抗酸化作用のある物質です。美容や健康への効果が注目されており、サプリメントも販売されていますよね。

これもやはり活性酸素類の消去に利用されているのですが…ビタミンEは活性酸素を消去する際に酸化され、ビタミンEラジカルとよばれる物質になります。これはいうなれば“使用済み”の状態で、抗酸化物質としては使えません。

ビタミンCにはビタミンEラジカルをビタミンEに戻す機能があります。再生されたビタミンEは抗酸化作用を取り戻すのです。

鉄の吸収促進

食事で摂取した鉄分を体内に取り込む際に、ビタミンCがあると吸収が促進されるということがわかっています。

鉄といえば、赤血球のヘモグロビンにふくまれていることでもおなじみのミネラル。貧血気味の方は鉄分が多い食材を選んで食べていると思いますが、同時にビタミンCを摂取することも意識したいですね。

肌のシミを減少させる

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美容目的でビタミンCを摂取する人も少なくありません。ビタミンCがシミを抑えたり、肌をきれいにする効果があるということがわかっています。

\次のページで「感染症などの予防?」を解説!/

感染症などの予防?

寒い時期になると「ビタミンCをとって風邪予防!免疫力アップ!」というような文句をよく見かけます。じつは、ビタミンCが風邪などの感染症に与える影響については諸説あり、さまざまな研究結果が出ているのが現状です。

「ビタミンCを摂取したほうが風邪のなおりが早い」という論文もあれば、「明確な効果は認められない」とするものもあります。とはいえ、「ビタミンCの摂取で大幅に重症化を防ぐことができた」という症例もあるので、摂らないよりは摂ったほうがよいでしょう。

ビタミンC不足による影響

壊血病

ビタミンC不足による病気でよく知られているのが壊血病(かいけつびょう)という病気です。前述の通り、ビタミンCはコラーゲンや骨の成分を合成するのに使われています。ビタミンCが不足することでそれらの合成ができなくなると、皮膚の異常や出血、歯肉の後退、歯の脱落などが生じるのです。

ビタミンの摂取

厚生労働省の資料によると、成人におけるビタミンCの推奨摂取量は1日当たり100mgです。

ビタミンは水に溶けやすい性質をもつ水溶性ビタミンと、油に溶けやすい性質をもつ脂溶性ビタミンに分けられます。ビタミンCは水溶性ビタミン。茹でたりすると水へ溶けだしてしまいます。

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また、ビタミンCは加熱に対して不安定で、壊れやすくなってしまうことも知られています。ただし、ジャガイモなどに含まれるビタミンCはでんぷんで守られていて、加熱に対して強いとも言われているんです。

以上より、ビタミンCを多く含む野菜などを食べるときは、基本的に生食がおすすめといえるでしょう。

食事のバランスが偏りがちのときはサプリメントも上手に利用し、ビタミンを十分に摂取してください。

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ビタミンCはいいことずくめ!

ビタミンCが私たちの身体にとっていかに重要が、お分かりいただけたかと思います。生の野菜や果物を食べることが少ない人は、ぜひ食事を見直してください。ビタミンCを積極的にとり、元気な毎日を送りましょう!

" /> いまさら聞けない「ビタミンC」のこと。現役講師がさくっとわかりやすく解説! – Study-Z
タンパク質と生物体の機能理科生物

いまさら聞けない「ビタミンC」のこと。現役講師がさくっとわかりやすく解説!

今回のテーマはずばり「ビタミンC」です。

子どものころから「ビタミンのふくまれた食事をしっかりとりなさい」などというが、君たちはそれぞれのビタミンがなぜ必要なのか、体内でどのように作用するのかを知っているでしょうか?この記事では身近なビタミンでよく知られているビタミンCを取り上げ、その重要性をみていきます。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

ビタミンCとは?

ビタミンCは私たちの身体にとって必要不可欠なビタミンの一種。化学の世界では、L-アスコルビン酸という名前で知られています。

image by Study-Z編集部

分子の構造を見ると、炭素Cが6個、水素Hが8個、酸素Oが6個によって構成されていることがわかります。

私たち人間は、ビタミンCを体内でつくることができないため、食事によって摂取しなくてはいけません。ところが、多くの動物では体内にビタミンCを合成する酵素があり、わざわざ食事によって取り入れる必要がないんです。

ビタミンCの合成酵素をもっていないのは、人間を含む霊長目の一部とその他限られた動物だけ。進化の過程でビタミンC合成酵素をつくる遺伝子を失ってしまったのだろうと考えられています。

そもそもビタミンとは?

ここで、知っているようで知らない「ビタミン」についてすこし確認しておきましょう。

ビタミンとは、生物が生存するために必要な栄養素のうち、炭水化物、タンパク質、脂質以外で、なおかつ体内で十分な量を合成できない有機物のことを指します。現在は13種類のビタミンが知られていて、いずれも生命活動を維持するためになくてはならない物質です。

ビタミンCの役割

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それでは、私たちの体内でどのようにビタミンCが使われているのかをご紹介しましょう。

コラーゲンの合成

コラーゲンは私たちの体内の様々な場所に存在するタンパク質の一種です。よく「肌のハリを保つ」とか、「関節の動きをよくする」などとうたい、サプリメントも販売されていますよね。実際、体内のコラーゲンは真皮や軟骨、骨などの構造を維持する素材として使われています。

このコラーゲンは体内で合成することができますが、正常にコラーゲンを合成するはビタミンCが必要です。ビタミンCが足りないと、合成反応がうまく進まなくなってしまいます。のちほど紹介する壊血病は、ビタミンC不足により正常なコラーゲンがつくられなくなることで起きる病気です。

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