この記事では「紆余曲折(うよきょくせつ)」について解説する。

端的に言えば「紆余曲折」の意味は「複雑な事情」ですが、その成り立ちやニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「紆余曲折」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「紆余曲折」の意味や使い方のまとめ

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「紆余曲折」とは、どのような意味を持ち、どういった文脈で使われるのでしょうか。まずは、国語辞典による定義から見ていきましょう。

「紆余曲折」の意味は?

「紆余曲折」には、次のように主に二つの意味を持っています。

1.道などが曲がりくねっていること。
2.事情が込み入っていて、いろいろ変わること。

出典:大辞林 第六版(三省堂)「紆余曲折」

「紆余曲折」は、「紆余」と「曲折」の二つの熟語から成り立っています。このうち、「紆余」は道などは、曲がりくねっている様子を表すことばです。

一方の「曲折」は、文字通り折れ曲がることを意味しています。また、ここから複雑にからみ合っている状況を表すようになりました。

「紆余曲折」の使い方・例文

それでは、「紆余曲折」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

はじめのひとつは、文字通り「曲がりくねっている様子」を表している例です。あとの二つは、そこから派生した意味の方を表しています。

\次のページで「「紆余曲折」の類義語は?違いは?」を解説!/

隣りの村へ行くには、山から山へ谷から谷へ紆余曲折した道を2時間は歩かなければならない。

彼の経営する会社は成功を収めてはいるが、ここにいたるまでさまざまな紆余曲折があったはずだ。

紆余曲折の末、その発明家は自らの発明品にもっとも適した素材を日本で発見した。

このように、「紆余曲折」は文字通りに道のりが険しい様子を表している場合もあれば、そうでない場合もあります。たとえば、人生などを「道」にたとえて表現する場合などですね。

どちらの意味で用いられているか、区別はさほど難しくないはずですので、何もおそれることはありません。

#2 「紆余曲折」の類義語は?違いは?

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まずは、「紆余曲折」の類義語から確認していきましょう。

「曲折浮沈」

「曲折浮沈(きょくせつふちん)」も、「紆余曲折」と同様の意味を表している四字熟語です。「曲折」は先ほどの説明と同様だとして、「浮沈」は何を表しているのでしょうか。

この場合は、単なる物が浮かんだり沈んだりを表しているわけではありません。むしろ、それはたとえであって、実際は栄えることや衰えることを意味していると考えてよいでしょう。

つまり、いいときもあればそうでないときもあったということですね。

「槃根錯節」

「槃根錯節(ばんこんさくせつ)」を用いても、「紆余曲折」と同等の意味を表せます。何やら難しそうな漢字を使っていていて、一見するととても難しそうですね。

まず、「槃根」とは曲がりくねった木の根っこを表しています。一方の「錯節」は、入り組んだ木の節(ふし)を示す熟語です。

これら二つを合わせて、事情が複雑に入り組んでいる様子を意味する四字熟語ができています。では、これらを用いた例文を確認してみましょう。

\次のページで「「紆余曲折」の対義語は?」を解説!/

彼は一代にして巨万の富を築き上げたが、そこまでになるのにいろいろと曲折浮沈もあったそうだ。

その開発事業にさまざまな利権が絡み合っている様子は、まさに槃根錯節ということばがぴったりである。

#3 「紆余曲折」の対義語は?

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では、「紆余曲折」の対義語にはどのようなものがあるのでしょうか。「紆余曲折」は、さまざまな事情を抱えて物事が順調に進まない様子を表すことばでしたね。

そうであるならば、対義語物事が順調に進んでいる様子を表すことばがそうだといえるはずです。

「順風満帆」

「順風満帆」は、特に大きな問題が起きることもなく、物事が思い通りに進んでいく様子を表しています。この四字熟語に出てくる「順風」は、追い風を表すことばです。

もう一つの「満帆」は、そんな追い風を受けて帆をいっぱいに張っている様子を表しています。目的地に向かって何のロスもなく、ひたすらに真っすぐ向かっていく船の姿が目に浮かぶような四字熟語ですね。

「一路順風」

「一路順風」もまた、「紆余曲折」の対義語として用いられる四字熟語です。ここでいう「一路」は、ひたすらという意味で用いられています。

けっして右にいったり左にいったりすることなく、ただひたすらに真っすぐ目的地を目指している様子を想像してみてください。

では、これらの四字熟語も例文で用例を確認しておきましょう。

これまでの彼女の人生は、まさに順風満帆といってもさしつかえないほどで、特にこれといった問題に出くわすことがなかった。

今回のプロジェクトも一路順風とばかりにはいかないだろうが、諸君らのこれまでの経験を生かして成功へ導いてほしい。

#4 「紆余曲折」の英訳は?

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最後に、「紆余曲折」を英語で表現するとどうなるか押さえておきましょう。一見すると英語で表現するのが難しそうな四字熟語ですが、実際は日本語との共通点が多いことにきっと驚くはずです。

\次のページで「「twists and turns」」を解説!/

「twists and turns」

「紆余曲折」を表した英語表現の中では、「twists and turns」がもっともぴったりきます。というのも、「twists」道や川の曲がりくねりを表しているところが、「紆余」とそっくりです。

また、もう一方の「turns」折れたり曲がったりを表しています。「Turn to the right.(右に曲がりなさい)」などの会話表現で「turn」を見かけたことのある人も多いのではないでしょうか。

「ups and downs」

「ups and downs」は、起伏や浮沈を意味する言葉です。これを人生になぞらえると、「ups」=「上向き」のときもあれば、「downs」=「下向き」のときもあるということでしょうか。

いずれにしても、洋の東西を問わず似たような発想で表現するところは、非常に興味深いといえます。

Life is full of so many twists and turns.
人生とは、紆余曲折に満ちているものだ。【格言】

There has been a lot of ups and downs so far.
これまで、紆余曲折がいろいろとあったものだ。

「紆余曲折」を使いこなそう

この記事では「紆余曲折」の意味・使い方・類語などを説明しました。「紆余曲折」の意味は、道や川などが曲がりくねっていることです。

それが、転じて事情などが複雑に入り組んでいる様子を表すようになりました。このように、四字熟語は表面上の意味だけでなく、その成り立ちも覚えておくとイメージしやすいものが数多くあります。

みなさんも、ここぞという場面で「紆余曲折」を使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「紆余曲折」の意味や使い方は?例文や類語も含めて現役文系講師が詳しくわかりやすく解説!

この記事では「紆余曲折(うよきょくせつ)」について解説する。

端的に言えば「紆余曲折」の意味は「複雑な事情」ですが、その成り立ちやニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役塾講師で文系科目のスペシャリストである「すけろく」を呼んです。一緒に「紆余曲折」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/すけろく

現役文系講師として数多くの生徒を指導している。その豊富な経験を生かし、難解な問題を分かりやすく解説していく。

#1 「紆余曲折」の意味や使い方のまとめ

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「紆余曲折」とは、どのような意味を持ち、どういった文脈で使われるのでしょうか。まずは、国語辞典による定義から見ていきましょう。

「紆余曲折」の意味は?

「紆余曲折」には、次のように主に二つの意味を持っています。

1.道などが曲がりくねっていること。
2.事情が込み入っていて、いろいろ変わること。

出典:大辞林 第六版(三省堂)「紆余曲折」

「紆余曲折」は、「紆余」と「曲折」の二つの熟語から成り立っています。このうち、「紆余」は道などは、曲がりくねっている様子を表すことばです。

一方の「曲折」は、文字通り折れ曲がることを意味しています。また、ここから複雑にからみ合っている状況を表すようになりました。

「紆余曲折」の使い方・例文

それでは、「紆余曲折」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

はじめのひとつは、文字通り「曲がりくねっている様子」を表している例です。あとの二つは、そこから派生した意味の方を表しています。

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