この記事では「落花流水」について解説する。

端的に言えば落花流水の意味は「春の景色、衰えていくこと、相思相愛」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

活字好き家系出身のライター森野みどりを呼んです。一緒に「落花流水」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/森野みどり

編集者の叔母、子ども文庫を主宰する母を持ち、本に囲まれて育ったwebライター。英語圏在住9年目。

「落花流水」の意味・似た四字熟語、短歌・由来・使い方・例文

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それでは早速「落花流水」の意味や、「落花流水」に似た四字熟語と短歌、由来、使い方、例文、類語、ことわざ、関連語を順に見ていきましょう。

「落花流水」の意味は?

「落花流水」には、大きく二つの意味があります。

1.落ちた花が水に従って流れる意で、ゆく春の景色。転じて、物事の衰えゆくことのたとえ。時がむなしく過ぎ去るたとえ。別離のたとえ。

2.また、男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。散る花は流水に乗って流れ去りたいと思い、流れ去る水は落花を乗せて流れたいと思う心情を、それぞれ男と女に移し変えて生まれた語。転じて、水の流れに身をまかせたい落花を男に、落花を浮かべたい水の流れを女になぞらえて、男に女を思う情があれば、女もその男を慕う情が生ずるということ。

▽「流水落花りゅうすいらっか」ともいう。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂 )「落花流水」

「落花流水」は文字通り、散っていく花と流れる水の景色から連想される意味を持ちます。命のはかない花が水に落ちて流れていく様子に、情緒や物悲しさを感じる繊細な感性が感じられますね。

散る花と流れ行く川のような、自然の風景に思いを映す手法は、他の四字熟語や、短歌にも多く存在します。次に見てみましょう。

 

「落花流水」に似た四字熟語

情緒に富んだ風景をもとに、そこから連想される物事や心情を表す四字熟語には、下記のようなものがあります。

・ 月と鼈(すっぽん)…共通点もあるが、比較にならないほど違う二つのもののたとえ。

・ 晴雲秋月(せいうんしゅうげつ)…汚れがなく、澄み切った心のたとえ。

・ 鏡花水月(きょうかすいげつ)…目には見えるけれど手にすることはできない、はかない幻。

・ 高山流水(こうざんりゅうすい)…優れた音楽、絶妙な演奏のたとえ。

・ 鳥語花香(ちょうごかこう)…のどかな春の景色のこと。

 

「落花流水」に似た短歌

「落花流水」に見られる「散る花と流れ行く川」のような、自然の情景に男女の思いを映す短歌には、たとえば次のようなものがあります。

・ 筑波嶺(つくばね)の 嶺より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる 陽成院

筑波のいただきから流れ落ちる男女川(みなのがわ)が、はじめは細々とした流れが、次第に深い淵となるように、恋心も次第につのって今では淵のように深くなってしまった。

・ 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ 崇徳院

川の瀬の流れが速く、岩にせき止められた急流が二つに分かれた後、また一つになるように、愛しいあの人と今は分かれていても、やがていつかは再会したいと思っている。

・ ほととぎす 鳴くやさ月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな よみ人知らず

ほととぎすが鳴く五月に咲くあやめ草。その名のように、あやめ(道理)もわからない、理屈では割り切れない恋をすることだ。

俳句や川柳にも見られるように、日本人は昔から四季折々の美しい風景に感嘆し、そこから連想して言葉や詩句を作り出してきたことがうかがえます。

「落花流水」の由来は?

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「落花流水」は、中国の唐(とう)時代末期に生きた詩人、高駢(こうべん)(821〜887)の作品に由来します。

落花流水認天台、半酔閑吟独自来 『訪隠者不遇』

これは、「会いたいと思って訪ねた隠者に会うことができなかった。川に流れる花を見ながら、二人で飲もうと思っていた酒を一人で飲んで酔っ払い、詩を吟じつつ帰った」という状況をよんだ詩です。

ちなみに中国語にも「落花流水」という言い方があります。日本語とは違い、「散々な目にあう」、「けちょんけちょんだ」などの意味です。同じ言葉ではありますが、日本語の「落花流水」は日本人が考えた独特の意味を持っているのですね。

\次のページで「「落花流水」の使い方・例文」を解説!/

「落花流水」の使い方・例文

「落花流水」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

1.落花流水とは、まさにこの景色のことでしょう。
2.桜が咲き、瞬く間に散って行く、落花流水という言葉の意味を噛みしめる春です。
3.私の両親は、落花流水と例える他ない関係を保っています。
4. あの二人は、あっと言う間に落花流水、あれよあれよと言う間に結婚してしまいました。

「落花流水」は使われている漢字、意味ともに美しいためでしょう、小説やマンガ、歌のタイトルに使われることもあります。読者の皆さんは、頭に浮かぶ作品がありますか。

「落花流水」の類語とことわざ、関連語

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次に「落花流水」の二つの類義語をご紹介します。

類語「落英繽紛」、「落花繽紛」

「落花流水」の一番目の意味のうち、「落ちた花が水に従い流れる」の類語は次の二つです。

落英繽紛」、「落花繽紛」。見慣れない四字熟語が並びました。それぞれ、「らくえいひんぷん」「らっかひんぷん」と読みます。辞書の定義を確認しておきましょう。

花びらが散り、乱れ舞う様子。
「落英」は散り落ちる花びらのこと、「繽紛」は乱れ散ること。

出典:四字熟語辞典オンライン「落英繽紛」

 

花びらが散り乱れ舞う様子。
「落花」は散って落ちる花びらのこと。
「繽紛」は乱れ散ること。

出典:四字熟語辞典オンライン「落花繽紛」

「落英」と「落花」の意味はともに、散り落ちる花びら。「繽紛」が乱れ落ちるさまを表します。二つの意味をつなげると、「散り落ちる花びら」ですね。「落花流水」が川の流れに散って落ちる花びらであることと考え合わせると、よく似た言葉同士であることが実感できるのではないでしょうか。

類語「困窮零落」、「拓落失路」

次に「落花流水」の「物事の衰えゆくことのたとえ」の類語についてご説明しましょう。あまり親しみのない四字熟語がさらに続きます。「困窮零落」と「拓落失路」。読みは、順に「こんきゅうれいらく」、「たくらくしつろ」です。それぞれについて、辞書の定義を押さえておきましょう。

[名](スル)
1. 困り果てること。困り苦しむこと。「不況対策に困窮する」
2. 貧しいために生活に苦しむこと。「困窮した家庭」

出典:デジタル大辞泉「困窮」

 

[名](スル)
1. 落ちぶれること。「零落した華族の末裔(まつえい)」
2. 草木の枯れ落ちること。

出典:デジタル大辞泉「零落」

十分な地位を得られず、出世の道が絶たれること。

▽「拓落」は役人などが落ちぶれるさま、不遇なさま。「失路」は出世の道を失うこと。

出典:三省堂 新明解四字熟語辞典「拓落失路」

「困窮零落」は落ちぶれて貧しく、苦しむこと、「拓落失路」は出世できず地位が得られない、落ちぶれるさま、ですね。「困窮零落」、「拓落失路」ともに、「物事の衰えゆくことのたとえ」という落花流水の類語表現であると考えて間違いなさそうです。

ことわざ「落花流水の情」

「落花流水」が入ったことわざに、「落花流水の情」があります。

男女が慕い合う気持ちを持っていることのたとえ。

出典:ことわざ辞典オンライン

「落花流水の情」は、「落花流水」の二つ目の意味、「男女が相思相愛の状態にあること」から来ています。「落花流水の情」とは、どのくらいの期間続くものなのでしょうね。

\次のページで「関連語「落花有意・流水無情」」を解説!/

関連語「落花有意・流水無情」

「落花流水」には「落花有意・流水無情」という関連語があります。辞書の定義はどうなっているでしょうか。

〈諺〉一方は情があり、一方はその気がない.一方に気持ちがあるのに他方は知らん顔.落花に意あれど流水に情なし

出典:中日辞典北辞郎「落花有意・流水無情」

上で見たように、「落花流水」は「散る花を男性に、水の流れを女性になぞらえ、男女の気持ちが通じ合うこと」を意味していました。対して、「落花有意・流水無情」では、散りゆく花には気があっても、川の流れには気持ちがないことが表現されています。つまり、「落花有意・流水無情」は片思いだということなのです。

「落花流水」を使いこなそう

この記事では「落花流水」の意味・使い方・類語などをご紹介しました。日本は四季に富み、美しい自然に恵まれた国です。日本語にはその美しさを感じさせる、豊かな表現が存在することが伝わったでしょうか。言葉は常に変わっていく生き物でもありますが、情緒に満ちた独特の表現はいつまでもなくさずにいたいものです。

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【四字熟語】「落花流水」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「落花流水」について解説する。

端的に言えば落花流水の意味は「春の景色、衰えていくこと、相思相愛」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

活字好き家系出身のライター森野みどりを呼んです。一緒に「落花流水」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/森野みどり

編集者の叔母、子ども文庫を主宰する母を持ち、本に囲まれて育ったwebライター。英語圏在住9年目。

「落花流水」の意味・似た四字熟語、短歌・由来・使い方・例文

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それでは早速「落花流水」の意味や、「落花流水」に似た四字熟語と短歌、由来、使い方、例文、類語、ことわざ、関連語を順に見ていきましょう。

「落花流水」の意味は?

「落花流水」には、大きく二つの意味があります。

1.落ちた花が水に従って流れる意で、ゆく春の景色。転じて、物事の衰えゆくことのたとえ。時がむなしく過ぎ去るたとえ。別離のたとえ。

2.また、男女の気持ちが互いに通じ合い、相思相愛の状態にあること。散る花は流水に乗って流れ去りたいと思い、流れ去る水は落花を乗せて流れたいと思う心情を、それぞれ男と女に移し変えて生まれた語。転じて、水の流れに身をまかせたい落花を男に、落花を浮かべたい水の流れを女になぞらえて、男に女を思う情があれば、女もその男を慕う情が生ずるということ。

▽「流水落花りゅうすいらっか」ともいう。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂 )「落花流水」

「落花流水」は文字通り、散っていく花と流れる水の景色から連想される意味を持ちます。命のはかない花が水に落ちて流れていく様子に、情緒や物悲しさを感じる繊細な感性が感じられますね。

散る花と流れ行く川のような、自然の風景に思いを映す手法は、他の四字熟語や、短歌にも多く存在します。次に見てみましょう。

 

「落花流水」に似た四字熟語

情緒に富んだ風景をもとに、そこから連想される物事や心情を表す四字熟語には、下記のようなものがあります。

・ 月と鼈(すっぽん)…共通点もあるが、比較にならないほど違う二つのもののたとえ。

・ 晴雲秋月(せいうんしゅうげつ)…汚れがなく、澄み切った心のたとえ。

・ 鏡花水月(きょうかすいげつ)…目には見えるけれど手にすることはできない、はかない幻。

・ 高山流水(こうざんりゅうすい)…優れた音楽、絶妙な演奏のたとえ。

・ 鳥語花香(ちょうごかこう)…のどかな春の景色のこと。

 

「落花流水」に似た短歌

「落花流水」に見られる「散る花と流れ行く川」のような、自然の情景に男女の思いを映す短歌には、たとえば次のようなものがあります。

・ 筑波嶺(つくばね)の 嶺より落つる 男女川(みなのがわ) 恋ぞつもりて 淵となりぬる 陽成院

筑波のいただきから流れ落ちる男女川(みなのがわ)が、はじめは細々とした流れが、次第に深い淵となるように、恋心も次第につのって今では淵のように深くなってしまった。

・ 瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ 崇徳院

川の瀬の流れが速く、岩にせき止められた急流が二つに分かれた後、また一つになるように、愛しいあの人と今は分かれていても、やがていつかは再会したいと思っている。

・ ほととぎす 鳴くやさ月の あやめ草 あやめも知らぬ 恋もするかな よみ人知らず

ほととぎすが鳴く五月に咲くあやめ草。その名のように、あやめ(道理)もわからない、理屈では割り切れない恋をすることだ。

俳句や川柳にも見られるように、日本人は昔から四季折々の美しい風景に感嘆し、そこから連想して言葉や詩句を作り出してきたことがうかがえます。

「落花流水」の由来は?

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「落花流水」は、中国の唐(とう)時代末期に生きた詩人、高駢(こうべん)(821〜887)の作品に由来します。

落花流水認天台、半酔閑吟独自来 『訪隠者不遇』

これは、「会いたいと思って訪ねた隠者に会うことができなかった。川に流れる花を見ながら、二人で飲もうと思っていた酒を一人で飲んで酔っ払い、詩を吟じつつ帰った」という状況をよんだ詩です。

ちなみに中国語にも「落花流水」という言い方があります。日本語とは違い、「散々な目にあう」、「けちょんけちょんだ」などの意味です。同じ言葉ではありますが、日本語の「落花流水」は日本人が考えた独特の意味を持っているのですね。

\次のページで「「落花流水」の使い方・例文」を解説!/

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