コラージュの技法を取り入れた総合的キュビズム
1912年ころになると、分析的キュビズムの難解さの反動から、鑑賞者にとっても分かりやすい作品が増えてきます。この時期のキュビズムは、色彩がカラフルになり、コラージュの手法も取り入れられました。商業デザインの萌芽が見られるのもこの時期の作品です。
ロシアの芸術革命に多くの影響を与えた「キュビズム」
By El Lissitzky – A-Pesni.org, Public Domain, Link
ヨーロッパにおけるキュビズムの流行は1920年代になると終わります。しかしその手法は、1917年の革命後のロシアに引き継がれました。キュビズム風の革命を宣伝する斬新なポスターデザインは、芸術界に大きなインパクトを与えました。
1917年のロシア革命と共に発展
1917年にロシア革命が勃発。長らく続いたロマノフ王朝は消滅します。ロマノフ王朝時代の豪華で耽美な芸術は一掃され、鮮明な色彩と幾何学を特徴とする新芸術が立ち上げられました。
ロシア革命後の芸術はプロパガンダ。民衆の思想や行動を方向づける宣伝でもありました。キュビズムを特徴づける幾何学性は、革命のエネルギーを表現するために応用されていきます。
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対象の記号化・幾何学化・立体化が特徴
ロシア革命後に活躍した芸術家たちは、徹底的に対象を記号化・幾何学化・立体化していきます。キュビズムの手法をさらにシンプルにして、メッセージ性を加えたのがロシアの芸術革命と言えるでしょう。
ロシア・プロパガンダの特徴は、メッセージを読み解く作業を鑑賞者にゆだねている点。ロシア革命は、民衆の革命と位置づけられています。鑑賞者の行動を促すことが、芸術の役割であると考えられました。
「キュビズム」は対象を再現する技法の一大実験
当時の芸術界は、モノをありのままに再現する手法が、影響力を持っていました。キュビズムは、そんな芸術界の「常識」に一石を投じることになります。モノを立体化する、平面化する、記号化することで、遠近法のルールに従う芸術に異議を申し立て、世界的に話題となりました。同時にキュビズムの斬新で力強いデザイン性は、ロシア革命後のプロパガンダ芸術にも取り込まれていきました。私たちが出会う現代アートや商業デザインのなかに、キュビズムの影響を発見することも可能。身の回りにあるものを注意してみてみると、キュビズム的な手法を発見できるかもしれません。