今回のテーマは「自由電子(じゆうでんし)」です。

自由電子は金属結合に欠かせない。自由電子が金属原子を結び付け、金属結晶を作る。金属には延性、展性、伝導性、光沢といった特徴がありますが、これらの特徴に自由電子が大きく関わっている。自由電子を深く理解するためには原子の構造や結合に関する知識が欠かせない。

そこで今回は原子の構造から自由電子が果たす役割までを、国立大学の工学部出身リケジョのたかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校3年間を化学部で過ごし、大学でも化学を専攻していたリケジョ。実験や化学について本から豆知識を仕入れるのが好きだが、成績や実験の腕には結びついていない残念な化学好き。おかげで 研究から遠ざかった現在でも部屋に化学に関する本が多い。

自由電子を学ぶその前に

image by PIXTA / 21768085

自由電子は金属元素が金属結合を作る時に原子同士を結び付ける役割を果たします。自由電子を理解するためにまずは原子の構造や結合、金属元素について確認していきましょう。

原子の構造

原子の構造

image by Study-Z編集部

原子原子核とその周りを飛び回る電子からできています。2020年現在確認されている元素は118種類で、原子の種類は原子核に入っている陽子の数で決まるのです。

通常、原子は陽子と同じ数の電子が原子核の周囲を飛び回っています。このとき電子は決まったコースを動いているのです。このコースを電子殻といいます。

image by Study-Z編集部

ところで、すべての電子がひとつの電子殻に入るわけではありません。電子殻は原子核の周りに層のようになっていて、元素の種類によって決まった数の電子が決まった層に入ります。そして電子殻は原子核に近いところから順にK殻、L殻、M殻~と名前が付けられているのです。なぜKという中途半端なところから名前を付けたのか?と気になる人もいるでしょう。これは、電子殻が見つかったときにより原子核に近いところにまだ電子殻があるかもしれないと考え、アルファベットの真ん中くらいのKから名前を付けたそうです。

電子殻の定数はK殻から順に2個、8個、16個~と決められています。これは2n2という式から求めることができるのです。nは原子核から数えて電子殻の数で、K殻が1、L殻が2となります。

原子と化学結合

原子と化学結合

image by Study-Z編集部

物質は様々な種類の原子が結合してできています。原子がどのように結合するのかは、その原子がどんな元素かということで決まるのです。元素は大きく金属元素と非金属元素のふたつに分類することができます。

金属元素

周期表を見てください。元素のほとんどが金属元素であることがわかります。この金属元素が金属結晶をつくるとき、金属結合をするのです。金属結合をするのに欠かせないのが今回のテーマ「自由電子」。自由電子が金属結晶の中を自由に動き回り、金属元素を結びつけているのです。

非金属元素

水素や炭素など20種類ほどしかない非金属元素。非金属元素は共有結合という電子を原資と原子の間で共有する結合方法で分子をつくります。

金属元素は金属結合、非金属原子は共有結合をする。では金属と非金属はどんな結合によって結ばれているのでしょうか。例えば塩化ナトリウムのような金属元素と非金属元素はイオン結合によってイオン結晶を作ります。

金属元素

先ほど説明したように元素のほとんどは金属元素です。なじみ深い元素としてFe(鉄)、Au(金)、Al(アルミニウム)などが挙げられます。他にも身の回りにはたくさんの金属がありますね。

金属元素はその性質から1族の金属は「アルカリ金蔵」2族が「アルカリ土類金属」3族から11族が「遷移元素」と分類されています。また、金属と非金属の両方の性質を持つ金属元素を「両性金属」と呼んでいるのです。両性金属にはアルミ、亜鉛、スズ、鉛が当てはまります。その詳しい性質についてはそれぞれの記事で確認してくださいね。

\次のページで「自由電子に由来する、金属の性質」を解説!/

自由電子に由来する、金属の性質

原子の構造や化学結合についておさらいしたところで、自由電子による金属の性質について学んでいきましょう。

金属元素のもっとも外側にある電子殻、最外殻に入っている電子の数は1、2個です。この最外殻の電子が自由電子として金属結合に関わっています。金属結合については下の記事も確認してくださいね。

金属を薄く延ばせる、展性

金属を叩くと薄く広げることができます。この性質を展性というのです。一方、塩化ナトリムのようなイオン結晶には展性が無く、叩いても砕けてしまいます。イオン結晶は陽イオン(電子を放出)と陰イオン(電子を取り入れている)が規則正しく並んでいるため、外部から力が加わるとこの規則が崩壊して崩れてしまうのです。しかし金属元素の場合、自由電子によって原子がつながっています。そのため、原子の並びが変化しても原子同士はつながっていられるのです。

特に展性がある物質として金、銀、アルミニウムなどがあげられます。

長く延ばせる、延性

薄く延ばすのが展性、そして細長く延ばすことができるのが延性です。展性とまとめて延展性とも呼ばれています。金や銀、銅などが特に延性が強い物質として知られているのです。

延性についての詳細はこちらの記事をどうぞ。

電気も熱も伝える伝導性

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電子が自由に金属内を移動できることから、金属は電気伝導性熱伝導性を持っています。電気や熱の伝導性は意外にも銀、銅、金という順序になっているのです。ところで電気伝導性は物質の状態が固体と液体で異なります。金属イオンが動き回る液体よりも固体の方が電気伝導率が大きくなっているのです。

ちなみに半導体とは、シリコンやゲルマニウムのように金属と非金属の間位の電気伝導率を持つ物質のことをいいます。

表面で反射、光沢

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例えばまばゆく光る金メダル、美しい銀食器など金属は光を反射します。なぜ光を反射するかというと自由電子が関係しているのです。

原子同士をつないだ自由電子によって光は金属の内部までは届かず、表面で反射します。

\次のページで「金属のようにふるまう非金属元素」を解説!/

金属のようにふるまう非金属元素

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非金属元素でできた金属以外の物質にも、伝導性や光沢を持つものがあります。それが黒鉛(グラファイト)です。炭素が共有結合してできた黒鉛は、電気を通し光沢を持っています。

さらに、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルは半金属と呼ばれ、一部金属と似た性質を示すのです。

「自由電子」が金属に与える特徴

このテーマの問題では公式を覚えたり、計算をするような問題は出題されません。出てくる用語の定義を確認し、要点をしっかりと覚えてください。自由電子が金属元素の原子を結び付けることで「展性」「延性」「伝導性」「光沢」といった特徴を金属が持ちます。特徴をきちんと覚え、試験に備えましょう。

金属以外にも自由電子のようにふるまう電子を持つ原子があります。族や周期などの規則性に沿って覚えることはもちろん大切ですが、例外についても覚えてくださいね。

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化学

3分で簡単「自由電子」!元家庭教師がわかりやすく解説

今回のテーマは「自由電子(じゆうでんし)」です。

自由電子は金属結合に欠かせない。自由電子が金属原子を結び付け、金属結晶を作る。金属には延性、展性、伝導性、光沢といった特徴がありますが、これらの特徴に自由電子が大きく関わっている。自由電子を深く理解するためには原子の構造や結合に関する知識が欠かせない。

そこで今回は原子の構造から自由電子が果たす役割までを、国立大学の工学部出身リケジョのたかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校3年間を化学部で過ごし、大学でも化学を専攻していたリケジョ。実験や化学について本から豆知識を仕入れるのが好きだが、成績や実験の腕には結びついていない残念な化学好き。おかげで 研究から遠ざかった現在でも部屋に化学に関する本が多い。

自由電子を学ぶその前に

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自由電子は金属元素が金属結合を作る時に原子同士を結び付ける役割を果たします。自由電子を理解するためにまずは原子の構造や結合、金属元素について確認していきましょう。

原子の構造

原子の構造

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原子原子核とその周りを飛び回る電子からできています。2020年現在確認されている元素は118種類で、原子の種類は原子核に入っている陽子の数で決まるのです。

通常、原子は陽子と同じ数の電子が原子核の周囲を飛び回っています。このとき電子は決まったコースを動いているのです。このコースを電子殻といいます。

image by Study-Z編集部

ところで、すべての電子がひとつの電子殻に入るわけではありません。電子殻は原子核の周りに層のようになっていて、元素の種類によって決まった数の電子が決まった層に入ります。そして電子殻は原子核に近いところから順にK殻、L殻、M殻~と名前が付けられているのです。なぜKという中途半端なところから名前を付けたのか?と気になる人もいるでしょう。これは、電子殻が見つかったときにより原子核に近いところにまだ電子殻があるかもしれないと考え、アルファベットの真ん中くらいのKから名前を付けたそうです。

電子殻の定数はK殻から順に2個、8個、16個~と決められています。これは2n2という式から求めることができるのです。nは原子核から数えて電子殻の数で、K殻が1、L殻が2となります。

原子と化学結合

原子と化学結合

image by Study-Z編集部

物質は様々な種類の原子が結合してできています。原子がどのように結合するのかは、その原子がどんな元素かということで決まるのです。元素は大きく金属元素と非金属元素のふたつに分類することができます。

金属元素

周期表を見てください。元素のほとんどが金属元素であることがわかります。この金属元素が金属結晶をつくるとき、金属結合をするのです。金属結合をするのに欠かせないのが今回のテーマ「自由電子」。自由電子が金属結晶の中を自由に動き回り、金属元素を結びつけているのです。

非金属元素

水素や炭素など20種類ほどしかない非金属元素。非金属元素は共有結合という電子を原資と原子の間で共有する結合方法で分子をつくります。

金属元素は金属結合、非金属原子は共有結合をする。では金属と非金属はどんな結合によって結ばれているのでしょうか。例えば塩化ナトリウムのような金属元素と非金属元素はイオン結合によってイオン結晶を作ります。

金属元素

先ほど説明したように元素のほとんどは金属元素です。なじみ深い元素としてFe(鉄)、Au(金)、Al(アルミニウム)などが挙げられます。他にも身の回りにはたくさんの金属がありますね。

金属元素はその性質から1族の金属は「アルカリ金蔵」2族が「アルカリ土類金属」3族から11族が「遷移元素」と分類されています。また、金属と非金属の両方の性質を持つ金属元素を「両性金属」と呼んでいるのです。両性金属にはアルミ、亜鉛、スズ、鉛が当てはまります。その詳しい性質についてはそれぞれの記事で確認してくださいね。

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