この記事では脊椎動物の進化の過程についてみていこう。

生物の進化の道筋を解明すべく、大学や研究機関ではさまざまな研究が行われている。
われわれ人類を含む脊椎動物がどのように進化してきたのか。また、グループ間にどんな関係性があるのかを改めて学んでみようじゃないか。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

脊椎動物とは?

脊椎動物(せきついどうぶつ)とは、脊椎=背骨のある動物のことをさします。われわれ人間はもちろんのこと、イヌやネコなど身近な動物はいずれも脊椎動物であることがわかりますね。

image by iStockphoto

逆に、背骨をもっていない生物は無脊椎動物(むせきついどうぶつ)です。

昆虫やエビなどの節足動物、タコや貝類などの軟体動物、イソギンチャクやクラゲなどの刺胞動物、ウニやナマコといった棘皮動物など、多様な無脊椎動物が存在しています。さらに、肉眼では確認できない大きさのミジンコやゾウリムシといった動物も無脊椎動物です。

脊椎動物は大きく5つのグループに分けることができます。魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類です。水中、空中、陸上など多様な環境に生息している脊椎動物ですが、これらは地球上でどのように進化してきたのでしょうか?

脊椎動物の進化の過程

それでは、脊椎動物が進化していく過程を学んでいきましょう。今回は、脊椎動物が誕生するまでと、誕生後の過程の2つに分けて簡単に解説したいと思います。

脊椎動物が誕生するまで

私たちが暮らしているこの地球が誕生したのは今から約46億年前。その後2億年ほどたってから海ができ、海中で初めの生命が誕生したのが約38億年前といわれています。

原初の生物は、現在の細菌類のような原核生物だったと考えられており、その中から真核生物が生じました。

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単細胞性だった真核生物にも多細胞性のものが現れ、少しずつ多様化していきます。数十億年が経過して、今から約5億年前に現れたのが原始的な脊索動物です。

脊索動物は名前通り、脊索というものをもった生物。脊椎は脊索が変化してできるものなので、脊椎動物は脊索動物の中に含まれます。

そして脊索動物の中から、はじめの脊椎動物のグループである魚類が誕生しました。

\次のページで「脊椎動物が誕生した後」を解説!/

脊椎動物が誕生した後

魚類は発達した中枢神経系や筋肉を獲得したことで、海中の様々な動物をとらえられる生物になりました。繁栄し種数を増やしていきましたが、水中での暮らしに適応した形態であることや、鰓呼吸するという特性から、海から出ることはできません。

そんな魚類からも長い時間がたつと、ヒレが発達してからだを支えることができるようになるものが現れました。陸上への進出を可能にした、両生類の誕生です。完全に水辺から離れることはできませんが、陸上でもエサを探したり、体を休めることができるようになりました。

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さらに時間が経過して、陸上でより広範囲に活動できる爬虫類が誕生しました。両生類の中から爬虫類が生じたのは約3億年前といわれています。

そのころの陸上には、すでにシダ類などの植物が茂り、昆虫類も豊富な環境になっていました。森に暮らすものや開けた土地に暮らすもの、水辺の近くに暮らすものなど多様な生活をしていたでしょう。

恐竜のほとんどは中生代の終わりに絶滅してしまいましたが、一部の生き残りが鳥類となり、現在に至っています。そのため、鳥類は爬虫類から進化した生物であり、恐竜の生き残りであるともいうことができるんです。

さて、両生類の系統から爬虫類が分岐したころ、両生類からはまた別のグループが生じました。そのグループの名前は単弓類。ここから後に哺乳類の祖先となる生物が誕生したのです。

脊椎動物の進化はどのようにして解明されてきたのか?

脊椎動物の進化はどのようにして解明されてきたのか?

image by Study-Z編集部

数十億年にも及ぶ生物の進化の歴史。当然ながら、その現場を実際に目撃してきた科学者はいません。前述のような進化の道筋はどのように解明されてきたのでしょうか?

化石という証拠

もっともわかりやす進化の証拠は、古い地層の中から見つかる化石でしょう。脊椎動物の5つのグループのうち、もっとも古い地層から見つかるのは魚類の化石です。

世界のあちこちの地層を調査すると、古いものから魚類、両生類、爬虫類、そして恐竜(鳥類)や哺乳類の順で化石がみつかります。つまり、脊椎動物はこの順番で地球上に出現したと考えられるのです。

今後発掘調査が進むことで、現在知られているものより古い地層から化石が見つかる可能性もありますが…いずれにせよこれはかなり直接的な進化の証拠といえますね。

\次のページで「脊椎動物の形態的特徴や生態」を解説!/

脊椎動物の形態的特徴や生態

現存している脊椎動物の形態的な特徴や生態も、それらの進化や関係性を考えるヒントになります。

魚類はほぼ完全な水中生活を送る生物ですが、爬虫類は陸上生物です。そして両生類は、陸上と水中がどちらも生存のために必要な生き物。魚類が進化して完全に陸上に適応した生物となるまでの中間的な存在が両生類、と考えることができますよね。

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また、「基本的に陸上に生息している爬虫類・鳥類・哺乳類が、もとは水中にいた魚類や両生類から進化した」と考えると、それらの生物が進化の過程で”体に水分を保つための機能を備えた”ことが矛盾なく説明できます。

例えば、体から水分が逃げないよう硬い鱗や皮膚。子どもは卵という固い殻や胎内で育ち、乾燥することがありません。もともと魚類のように海中で暮らしていた生物が、陸上に進出したために得た生態とみなすことができます。

分子から系統を考える

生物のもつDNAやタンパク質の研究が進み、これらの結果からも脊椎動物の進化の道筋を説明できるようになってきました。

生物間で塩基配列やタンパク質のデータを比較することで、どの生物同士が似ているのか、どれくらいの違いが存在するのかを推定できます。

分析結果の情報に基づき、生物の類縁関係や系統発生を表したものが系統樹。さまざまな遺伝子やタンパク質を分析した研究がありますが、それらも脊椎動物の進化の過程を裏付けています。

これからの研究で新たな発見が得られれば、より詳細な進化の過程が見えてくるかもしれません。生命の謎を解き明かすためにも、今後の成果が期待されます。

生物の進化にはふしぎがいっぱい

「私たちヒトはどのようにして誕生したのか」。素朴ではありますが、だれもが一度は抱く疑問ではないでしょうか?

今回の内容の通り、脊椎動物の進化の過程は大まかにはわかってきています。しかしながら、生物の進化にはまだ謎も多く、脊椎動物以外の生物の進化についてもわかっていないことがたくさんあるのが現状です。進化の研究はこれからもどんどん進んでいくでしょう。

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理科生物生物の分類・進化

脊椎動物の進化の過程は?現役講師がわかりやすく解説!

この記事では脊椎動物の進化の過程についてみていこう。

生物の進化の道筋を解明すべく、大学や研究機関ではさまざまな研究が行われている。
われわれ人類を含む脊椎動物がどのように進化してきたのか。また、グループ間にどんな関係性があるのかを改めて学んでみようじゃないか。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

脊椎動物とは?

脊椎動物(せきついどうぶつ)とは、脊椎=背骨のある動物のことをさします。われわれ人間はもちろんのこと、イヌやネコなど身近な動物はいずれも脊椎動物であることがわかりますね。

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逆に、背骨をもっていない生物は無脊椎動物(むせきついどうぶつ)です。

昆虫やエビなどの節足動物、タコや貝類などの軟体動物、イソギンチャクやクラゲなどの刺胞動物、ウニやナマコといった棘皮動物など、多様な無脊椎動物が存在しています。さらに、肉眼では確認できない大きさのミジンコやゾウリムシといった動物も無脊椎動物です。

脊椎動物は大きく5つのグループに分けることができます。魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類です。水中、空中、陸上など多様な環境に生息している脊椎動物ですが、これらは地球上でどのように進化してきたのでしょうか?

脊椎動物の進化の過程

それでは、脊椎動物が進化していく過程を学んでいきましょう。今回は、脊椎動物が誕生するまでと、誕生後の過程の2つに分けて簡単に解説したいと思います。

脊椎動物が誕生するまで

私たちが暮らしているこの地球が誕生したのは今から約46億年前。その後2億年ほどたってから海ができ、海中で初めの生命が誕生したのが約38億年前といわれています。

原初の生物は、現在の細菌類のような原核生物だったと考えられており、その中から真核生物が生じました。

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単細胞性だった真核生物にも多細胞性のものが現れ、少しずつ多様化していきます。数十億年が経過して、今から約5億年前に現れたのが原始的な脊索動物です。

脊索動物は名前通り、脊索というものをもった生物。脊椎は脊索が変化してできるものなので、脊椎動物は脊索動物の中に含まれます。

そして脊索動物の中から、はじめの脊椎動物のグループである魚類が誕生しました。

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