この記事では「五里霧中」について解説する。「五里霧中」は故事成語の一つです。ちゃんと学べばそれほど複雑な意味じゃないが、間違えやすいポイントが多い言葉でもあるから、なんとなくわかったという気にならないで、これを機にきちんと学んでくれ。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「五里霧中」の意味や使い方、歴史などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「五里霧中」の意味とは?

image by iStockphoto

「五里霧中」とは以下のような意味です。

物事の様子や手掛かりがつかめず、方針や見込みが立たず困ること。また、そうした状態。五里にもわたる深い霧の中にいる意から。事情などがはっきりしない中、手探りで何かをする意にも用いる。

出典:goo辞書「五里霧中 意味」

「五里霧中」は「ごりむちゅう」という読み方です。「五里にもわたる深い霧の中にいる」という部分がポイントになります。濃い霧の中では、暗さなどに関係なく前方が見えづらくなり、時には方向感覚を失い、自分がどちらを向いているのかも判断に迷うほどです。

「五里霧中」とはそのような状態を指しています。本当に霧の中に居るというよりは、そのような精神状態であり、思考がクリアに働かない状態を指すことが多いです。ただし、思考だけでなく実際に行動に迷い困る状態の時も「五里霧中」は用いられます。

「五里霧中」は2通りの意味がある

「五里霧中」には2通りの意味があります。一つは、方針や見込みが立たず困ることです。どのようにすれば良いのか判断できず、行動を起こす手がかりすらもないという行き詰った思考状態を指しています。

もう一つは、詳細が分からないながらも手探りで物事を進めるという意味です。前者は考えを決められず悩んでいる状態ですが、後者の方は行動は起こしており、悩むあまり身動きが取れないというニュアンスとは異なっています。

\次のページで「本当の「五里霧中」?」を解説!/

本当の「五里霧中」?

「五里霧中」とは深い霧の中にいるような状態とありますが、本当に深い霧で道に迷ったときなどはどう表現するのでしょうか。実は、これも「五里霧中」と表現する事ができます。文字通り、深い霧の中で往生してしまった際も使用できるのです。

ただし、身動きが取れないほど深い霧の中で足止めを食らうなどということは、そうそう日常であることではありません。心理的な意味を指すケースの方が多いでしょう。

「五里霧中」の使い方

「五里霧中」は以下のように使用します。

1.今やこの企画は完全に「五里霧中」の状態だ。
2.正直今は「五里霧中」だが、何もしないわけにもいくまいと思う。
3.「五里霧中」な思考じゃ、まとまるものもまとまらない。

1、3のように「五里霧中な○○だ」という言い方も可能ですが、2のように「五里霧中だ」と言い切ってしまう表現も間違いではありません。「五里霧中」はその意味上、現在置かれている状況を説明するような文脈で用いられることが多いです。

「五里霧中」の間違えやすいポイントはどこ?

image by iStockphoto

「五里霧中」という言葉には間違えやすいポイントがいくつかあります。いずれも先入観が引き起こす間違いであり、きちんと学習すれば簡単に理解できるような間違いです。「おそらくこういうことだろう」というような推量で終わるのではなく、いろいろなことを調べて確かめることで、新しい発見にも繋がります。

「五里霧中」の区切りについて

「五里霧中」という言葉を区切る際、「五里」と「霧中」に分けるという人は少なくありません。「千里の道も一歩から」などという言葉があるように、数字に「里」という単位を付けて距離を表すのは、知名度の高い事実です。それ故に、「五里」で距離を表し、その「五里」の範囲が「霧中」、つまり霧の中にあるというイメージを抱く人が多いのでしょう。

しかし、実際には「五里霧」と「中」に分けるのが正しい形です。「五里霧中」の「五里」とは、実際の距離というよりもものの例えであり、「五里の範囲を覆うような深い霧」という意味で「五里霧」という言葉があります。その中に居るという意味で「中」を付け加えるため、区切る点は「五里霧」と「中」の間にあるのです。

「霧中」の間違いに注意!

上記のトピックでも説明しましたが、「五里霧中」は「ごりむちゅう」と読みます。文章で読む際は漢字で表記されているため問題ありませんが、まれに「ごりむちゅう」という読み方から「むちゅう」という部分を「夢中」と考えてしまい、「五里夢中」と表記してしまう人は少なくありません。しかしこれはれっきとした間違いであるため、注意が必要です。

また、PCやスマートフォンなどのデバイスで打つ際に「夢中」と誤変換されてしまい、そのままになるケースも発生します。

「五里霧中」はどんな故事からできている?

image by iStockphoto

「五里霧中」は故事成語であり、以下のような話が元になっています。

中国後漢の時代、張楷(ちょうかい)という人が仙術を使い、五里四方に霧を起こしたという。

出典:goo辞書「五里霧中 由来」

\次のページで「おまけ:「五里霧中」は本当に起こったのか?」を解説!/

上記のことは、後漢書という歴史書に記されています。後漢書にはまさにこの張楷という人のことを記した「張楷伝」という部分があり、そこに記されているのです。

張楷は有能でありながら世捨て人でもあり、人嫌いで隠れるように暮らしていました。そして張楷の力を頼りにした人々が訪ねてくると、広範囲に霧を秘術で発生させて、自分の元へ辿り着けないよう姿をくらましたのです。これを「五里霧」の術と呼び、その中に居るということで「五里霧中」という言葉が生まれました。

おまけ:「五里霧中」は本当に起こったのか?

故事成語は基本的に「昔起こったことから生まれた言葉」という意味です。ということは、「五里霧中」の由来通り、当時張楷は本当に秘術を駆使して、霧を発生させるなどという芸当ができたのでしょうか。

現代では科学的に考えてあり得ない話であり、誇張表現とされるかもしれません。しかし全てが事実ではなかったとしても、霧の深い山奥に住んでいたなど、ある程度の真実は混じっていると考えても良いでしょう。

「五里霧中」の類義語とは?

image by iStockphoto

「五里霧中」の類義語には「暗中模索」があります。文字通り「暗い中で模索する」という意味であり、先行きが見えていないながらも行動を起こしている、あるいは起こさねばならないという意味です。「五里霧中」とほぼ同じ意味を持っています。

しかし、「暗中模索」の方は悩みの中に居て行動に移せていない時にはあまり使われないため、常に置き換え可能というわけではない点に注意しましょう。

人の不安をかきたてる「五里霧中」

「五里霧中」は張楷が霧を使って人の目くらましをしたということが語源になっていますが、現在「五里霧中」は霧を作り出した張楷ではなく、目くらましをされた側の心情を表す言葉になっています。明確にNOを突き付けるのではなく、悩ませて迷わせて惑わせて、自ら失敗する方へと誘導するような張楷の手口は、そのまま「解決の糸口がわからない」「従うべき指針が見つからない」という「五里霧中」の言葉の意味に反映されていると言えるでしょう。

" /> 「五里霧中」の意味は?区切りは「五里霧」「中」?例文や由来も言葉大好きライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「五里霧中」の意味は?区切りは「五里霧」「中」?例文や由来も言葉大好きライターがわかりやすく解説!

この記事では「五里霧中」について解説する。「五里霧中」は故事成語の一つです。ちゃんと学べばそれほど複雑な意味じゃないが、間違えやすいポイントが多い言葉でもあるから、なんとなくわかったという気にならないで、これを機にきちんと学んでくれ。元建築系企業社員、現言葉大好きライターのsasaiを呼んです。一緒に「五里霧中」の意味や使い方、歴史などを見ていきます。

ライター/sasai

元会社員の現役フリーライター。言葉が好きで文章が好き。読むのも書くのも大好きで、海外小説からビジネス書まで何でも読む本の虫。こだわりをもって言葉の解説をしていく。

「五里霧中」の意味とは?

image by iStockphoto

「五里霧中」とは以下のような意味です。

物事の様子や手掛かりがつかめず、方針や見込みが立たず困ること。また、そうした状態。五里にもわたる深い霧の中にいる意から。事情などがはっきりしない中、手探りで何かをする意にも用いる。

出典:goo辞書「五里霧中 意味」

「五里霧中」は「ごりむちゅう」という読み方です。「五里にもわたる深い霧の中にいる」という部分がポイントになります。濃い霧の中では、暗さなどに関係なく前方が見えづらくなり、時には方向感覚を失い、自分がどちらを向いているのかも判断に迷うほどです。

「五里霧中」とはそのような状態を指しています。本当に霧の中に居るというよりは、そのような精神状態であり、思考がクリアに働かない状態を指すことが多いです。ただし、思考だけでなく実際に行動に迷い困る状態の時も「五里霧中」は用いられます。

「五里霧中」は2通りの意味がある

「五里霧中」には2通りの意味があります。一つは、方針や見込みが立たず困ることです。どのようにすれば良いのか判断できず、行動を起こす手がかりすらもないという行き詰った思考状態を指しています。

もう一つは、詳細が分からないながらも手探りで物事を進めるという意味です。前者は考えを決められず悩んでいる状態ですが、後者の方は行動は起こしており、悩むあまり身動きが取れないというニュアンスとは異なっています。

\次のページで「本当の「五里霧中」?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: