この記事では「一期一会」について解説する。

端的に言えば一期一会の意味は「一生に一度の出会い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾で国語の先生や通信教育の「赤ペン先生」をしていたトミー先生を呼んです。一緒に「一期一会」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことでより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は使い方を何かと間違えやすい「四字熟語」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「一期一会」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一期一会」の語源と意味と使い方を学習しまょう。その前に、「一期一会」の正しい読み方ですが、皆さん、知っていますか。「一期一会」は「いちごいちえ」と読みます。

「期」を「き」ではなく「ご」、「会」を「かい」ではなく「え」と読むのは、「一期」も「一会」も、もともとはお釈迦様の教えから始まる仏教に由来するからなのですよ。日本の戦国時代に生きた茶道の大家千利休の弟子の山上宗二(やまのうえそうじ)が、茶湯について書いた本のなかで「一期一会」という言葉を使っているのですね。

「一期一会」の意味は?

仏教と茶道にルーツのある四字熟語「一期一会」は、もともとは「一生に一度の出会い」という意味ですが、そこからさらに意味が広がって、「一生に一度の出会いだからこそ、この機会を大事にしなくてはならない」という思いが込められているのですね。

手元にある辞典で、「一期一会」という見出し語を検索して、引用してみますね。

1.《「山上宗二記」の中の「一期に一度の会」から》茶の湯で、茶会は毎回、一生に一度だという思いをこめて、主客とも誠心誠意、真剣に行うべきことを説いた語。転じて、一生に一度しかない出会い。一生に一度かぎりであること。
2.網野菊による随筆風の小説。昭和41年(1966)、引退興行を終えて向かった四国巡礼の旅先で入水自殺した歌舞伎俳優、8代目市川団蔵への追想。昭和42年(1967)刊行。第19回読売文学賞受賞。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一期一会」

『デジタル大辞泉』には、「一期一会」という言葉の由来と、そこから派生した使い方が手短に書かれています。また、「一期一会」をタイトルにした小説があるということもわかりました。山上宗二の著書に記されていますが、千利休の残した言葉だったそうです。

一期一会」は、今のこの瞬間は一生に一度だけのことだから、あなたはそれを大切にしなさい、という教訓の意味がこめられていることがわかりますね。浄土真宗を開いた親鸞聖人のお言葉にも「一期一会」がありますから、生涯に一度限りの出会いや経験を、そこに感じることができますよね。

「一期一会」の語源

仏教には輪廻転生(りんねてんしょう)、つまりすべての生命は死んでまた生まれ変わるという教えがあります。ですからわれわれは何度もこれを繰り返しているので、今のこの一生を「一期」と名付けているのですね。初めて会った人なのに、どこか懐かしい気がする、という経験をした人がいるかと思います。それは別の「一期」でその人と会ったことがあるからなのですよ。

終わりのことを「最後」といいますが、「最期」という漢字で書くと、それは「生涯の終わり」という意味になります。「一期一会」は、生涯でただ一度限りの出会いということを意味していますが、だからこそ今のこの瞬間を大事にしなくてはならないという教えでもあるのです。

\次のページで「「一期一会」の使い方・例文」を解説!/

「一期一会」の使い方・例文

一期一会」の使い方について考えてみることにしましょう。もともとは「生涯に一度の出会い」という意味でしたが、どちらかというと、「めったにないチャンス」というニュアンスで用いることが多いのです。

あるいは、このチャンスを逃したら大変だから、しっかりしようという場合にも、「一期一会」を使います。

毎日を一期一会の気持ちで生きることが大切です。

この仕事は、まさに一期一会とでも言うべきチャンスです。

お客様をおもてなしするのに、一期一会の心を持つことを忘れないでください。

彼が彼女に出会ったのは、まさに一期一会でした。

別れることはつらいけれども、これも一期一会と心を決めることにしましょう。

一期一会」は、「一生に一度の出会い」という意味ですから、「一期一会の出会い」という用語は間違っています。例文からわかるように、出会いを「一期一会」と表現するよりも、「貴重なもの」や「大事なこと」という使い方をするといいでしょう。

「一期一会」の類義語は?違いは?

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それでは、「一期一会」の類義語をいくつか挙げてみます。類義語ですから、似たような意味ですが、ニュアンスや意味が少し違っていますので、その「差」をきちんと理解しておきましょう。

邂逅」(かいこう)と「千載一遇」(せんざいいちぐう)について、説明しますね。

「邂逅」

邂逅」は、「思いがけなく出会うこと」という意味です。「出会う」ということでは「一期一会」と同じですが、「一生に一度」ほどの強い表現ではありません。また、「一期一会」と違って、「出会い」の意味の範囲にとどまっています。例文を見てみることにしましょう。

旅行先で、たまたま高校時代のの同級生と邂逅した

この例文の「邂逅した」は、「巡り合った」と言い換えることもできます。また、出会った相手が旧友ではなく熊だったりしたら、「山中で熊に遭遇(そうぐう)した。」と言った方がいいでしょう。

\次のページで「「千載一遇」」を解説!/

「千載一遇」

四字熟語の「千載一遇」は、「千年に一度くらいしか会えないようなまれな機会」という意味で、中国の故事から来ています。「千載一遇」と「一期一会」との違いは、「千載一遇」が「まれな機会」に重点があることです。次に例文を見てみることにしましょう。

それは千載一遇のチャンスだから、絶対に逃してはならない。

人の一生の年数より千年の方が長いのですが、「千載一遇」は待っていても訪れないような絶好の機会を表しています。

「一期一会」の対義語は?

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一期一会」の対義語はあるのでしょうか。これはなかなか難しい問題ですが、例えば、次のような四字熟語はどうでしょうか。

永劫回帰」(えいごうかいき)

「永劫」とは永遠という意味ですから、「一期」と対照的な意味ですね。「回帰」は「帰ってくること」という意味で、「一期一会」の基本になっている「生まれ変わること」が含まれていません。

「永劫回帰」

この言葉は、19世紀後半に生きたドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの言葉です。ニーチェは「神は死んだ」という有名な言葉を残していますが、20世紀の哲学・思想に大きな影響を与えました。

「永劫回帰」というのは、ニーチェの著書である『この人を見よ』にある言葉で、われわれが体験することは一度限りのことではないという意味です。ニーチェはこの著書で超人を描き、同じことをあらゆる瞬間に永久に繰り返す、という思想を展開したのでした。

「一期一会」の英訳は?

一期一会」を英語で表現してみたら、どうなるでしょうか。英語のことわざなどにこのような表現があるといいのですが、なかなかそれが見つかりません。ということで、「一生に一度の出会い」とか「一生の一度の経験」とか「一生に一度のチャンス」というふうに、意味を説明する形で表現するのがいいでしょう。

once-in-a-life-time meeting

once-in-a-life-time experience

once-in-a-lifetime chance

英語の「一期一会」の例文

I met him hier. That war once-in-a-lifetime meeting.

He wrote a long letter to her. That was onde-in-a-lifetime experience.

Never miss once-in-a-lifetime chance!

\次のページで「「一期一会」を使いこなそう」を解説!/

「一期一会」を使いこなそう

この記事では「一期一会」の語源・意味・使い方・類語などを説明しました。少しはお役に立てたでしょうか。四字熟語はうまく使うと、あなたの会話や文章がレベルアップすることは、間違いありません。

言葉には、それぞれその歴史と意味の広がりがあります。「一期一会」と今日出会いましたが、それこそがまさに「一期一会」でしたね。

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国語言葉の意味

【四字熟語】「一期一会」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「一期一会」について解説する。

端的に言えば一期一会の意味は「一生に一度の出会い」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾で国語の先生や通信教育の「赤ペン先生」をしていたトミー先生を呼んです。一緒に「一期一会」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トミー先生

元国語塾講師で通信教育で英語と国語の「赤ペン先生」などもやっていた。実はドイツ語が得意で、外国語を学ぶことでより国語を理解するのに役立つと実感している。今回は使い方を何かと間違えやすい「四字熟語」について、語源と意味と使い方を自分でしっかり理解できるよう、わかりやすく解説していく。

「一期一会」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一期一会」の語源と意味と使い方を学習しまょう。その前に、「一期一会」の正しい読み方ですが、皆さん、知っていますか。「一期一会」は「いちごいちえ」と読みます。

「期」を「き」ではなく「ご」、「会」を「かい」ではなく「え」と読むのは、「一期」も「一会」も、もともとはお釈迦様の教えから始まる仏教に由来するからなのですよ。日本の戦国時代に生きた茶道の大家千利休の弟子の山上宗二(やまのうえそうじ)が、茶湯について書いた本のなかで「一期一会」という言葉を使っているのですね。

「一期一会」の意味は?

仏教と茶道にルーツのある四字熟語「一期一会」は、もともとは「一生に一度の出会い」という意味ですが、そこからさらに意味が広がって、「一生に一度の出会いだからこそ、この機会を大事にしなくてはならない」という思いが込められているのですね。

手元にある辞典で、「一期一会」という見出し語を検索して、引用してみますね。

1.《「山上宗二記」の中の「一期に一度の会」から》茶の湯で、茶会は毎回、一生に一度だという思いをこめて、主客とも誠心誠意、真剣に行うべきことを説いた語。転じて、一生に一度しかない出会い。一生に一度かぎりであること。
2.網野菊による随筆風の小説。昭和41年(1966)、引退興行を終えて向かった四国巡礼の旅先で入水自殺した歌舞伎俳優、8代目市川団蔵への追想。昭和42年(1967)刊行。第19回読売文学賞受賞。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一期一会」

『デジタル大辞泉』には、「一期一会」という言葉の由来と、そこから派生した使い方が手短に書かれています。また、「一期一会」をタイトルにした小説があるということもわかりました。山上宗二の著書に記されていますが、千利休の残した言葉だったそうです。

一期一会」は、今のこの瞬間は一生に一度だけのことだから、あなたはそれを大切にしなさい、という教訓の意味がこめられていることがわかりますね。浄土真宗を開いた親鸞聖人のお言葉にも「一期一会」がありますから、生涯に一度限りの出会いや経験を、そこに感じることができますよね。

「一期一会」の語源

仏教には輪廻転生(りんねてんしょう)、つまりすべての生命は死んでまた生まれ変わるという教えがあります。ですからわれわれは何度もこれを繰り返しているので、今のこの一生を「一期」と名付けているのですね。初めて会った人なのに、どこか懐かしい気がする、という経験をした人がいるかと思います。それは別の「一期」でその人と会ったことがあるからなのですよ。

終わりのことを「最後」といいますが、「最期」という漢字で書くと、それは「生涯の終わり」という意味になります。「一期一会」は、生涯でただ一度限りの出会いということを意味していますが、だからこそ今のこの瞬間を大事にしなくてはならないという教えでもあるのです。

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