今回は「水素結合」について勉強します。

化学には色々な結合が登場する。特に大切なのが「共有結合」、「金属結合」、「イオン結合」です。これらの結合によって原子が結び付き物質が作られる。一方水素結合は物質を作るための結合ではない。分子の中にある水素が仲立ちとなって起きる分子同士の結合のことです。水素結合が起きることでその物質の融点や沸点、さらには密度まで変わってくる。

それでは水素結合について国公立大学の工学部化学科出身で家庭教師のバイトをしていたたかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

時々東大進学者を輩出する地方の進学校に在籍し、それなりに楽しい高校時代を過ごす。部活は化学部で3年間あきることなく試薬と戯れて過ごしていたリケジョ。わからない用語は図書館の百科事典で検索していたアナログ派。

原子と化学結合のおさらい

水素結合を含め化学結合について理解するためには原子の構造と原子に関連した知識が欠かせません。まずはこのふたつからおさらいしていきましょう。

原子の構造

原子の構造

image by Study-Z編集部

原子は陽子と中性子からなる原子核とその周りを飛んでいる電子からできています。陽子は正の電荷に荷電し、電子は負の電荷に荷電しているのです。ちなみに中性子は電気的に中性であり、原子全体も陽子と電子の電気を打ち消し合って中性となっています。

電子は原子核の周りを自由自在に飛び回っているわけではなく、電子殻という決められた空間の中を飛び回っているのです。電子殻に入るができる電子の数は決まっています。そのため、電子の数が増えると電子殻の数も増えていくのです。そして、いちばん外側にるのが最外殻で、この最外殻に入った価電子が結合に大きく関わってきます。

電子殻は原子核に近いところからK殻、L殻、M殻とあり、その電子の最大容量はそれぞれ2個、8個、18個と決まっているのです。これは原子核に近いところから殻をn番目としたときに2n2と求めることができます。例えばK殻は原子核から1番近いのでn=1となり、2×12でK殻には2個電子が入り、次のL殻は2×22=8で8個までとなるのです。

共有結合とは?

共有結合とは?

image by Study-Z編集部

価電子が多く、陰イオンになりやすい非金属元素。そのため非金属同士が結合するときは最外殻にある電子を共有しあう共有結合をします。

例えば水素分子。水素原子は電子を1つしか持っていません。そして水素の最外殻(K殻)には2つしか電子が入らず、水素原子はお互いに1つずつ電子を出して共有結合します。一方、アンモニアは最外殻(L殻:最大電子数8個)に電子3つ分の空きがある窒素と3つの水素が電子を共有しあってできた分子です。さらにメタンでは最外殻のL殻に電子4つ分の空きがある炭素が4つの水素と電子を共有しています。

また二酸化炭素はひとつの炭素が2つの酸素と2つずつ電子を共有してできた分子です。このように2つの電子を共有しあう結合を二重結合と呼びます。共有結語について理解を深めたい人にはこちらの記事がおすすめです。

 

金属結合とは?

image by PIXTA / 39090369

金属元素同士が集まって単体を作るとき、金属結合によって結合します。

非金属元素とは反対に、金属元素は電子が最外殻に1、2個くらいしかありません。そのため、この最外殻電子が自由電子として原子の間を自由に行き来する金属結合をするのです。この金属結合によって金属は展性延性といった特徴を持ちます。

金属結合について知りたい人はこちらの記事をどうぞ。

イオン結合とは?

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電子を放出したり取り入れたりして金属は陽イオン、非金属は陰イオンになります。そして陽イオンと陰イオンは電気的にひかれあい、イオン結晶を形成するのです。例えばNaCl(塩化ナトリウム、食塩)はNaとCl-がイオン結合した結晶になります。

このイオンになりやすさは第一イオン化エネルギー電子親和力で決まるのです。第一イオン化エネルギーとは、電子1個を取り去って1価の陽イオンになるために必要なエネルギーのことで、このエネルギーが小さい原子ほど陽イオンになりやすいということができます。そして電子親和力は1個の電子を受け取って1価の陰イオンになる時に放出するエネルギーのことです。この電子親和力が大きいほど1価の陰イオンになりやすくなります。

イオン結合についてもっと知りたい人にはこちらの記事がおすすめです。

水素結合とは?

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ここでいよいよ水素結合のご紹介です。

今までご紹介した結合は、原子と原子を結び付けて物質を作ります。一方、水素結合は分子同士に結びつきを作るのです。例えば水やフッ化水素、アンモニアは分子の間に水素結合が作られます。そのため水などは、同じぐらいの分子量の物質と比べると沸点が高くなっているのです。

なぜ水素結合するのかというと、例えばフッ化水素は電気陰性度(共有した電子を引き寄せる力)の大きいフッ素原子が負に荷電した状態の極性を持っています。そして原子核がむき出しの状態になった水素が他の分子中にある非共有電子対(他の原子とペアになってない電子対)と結びついて水素結合をするのです。

水素結合とファンデルワールス力の違い

水素がない分子の間にも働く力があり、この力はファンデルワールス力又は分子間力と呼ばれています。しかしファンデルワールス力は化学結合より弱い水素結合よりもさらに弱い力です。そのため分子間力が働く分子結晶は柔らかく、常温で液体や固体の状態のものが多くなっています。

\次のページで「沸点や密度にも影響、水と水素結合」を解説!/

沸点や密度にも影響、水と水素結合

image by PIXTA / 55271030

先ほど少し説明したように水は水素結合によってその沸点が同じような分子量の物質よりも高くなっています。そして沸点だけでなく、密度にも影響が与えられているのです。通常、物質の密度は固体>液体>気体と固体が最も密度が大きくなっています。ところが水の密度は液体>固体>気体となっているのです。ちなみに水素結合と液体となったときの体積の関係から4度の水が最も密度が大きくなります。

これは氷が水素結合によって隙間が多い構造を作りますが、水になる時にこの構造が崩れて隙間に水分子が入り込んでしまうからです。

分子と分子を結ぶ水素結合

水素結合は他の結合とは異なり、物質を構成するためではなく分子同士を結び付けるために起こる結合です。そのため、沸点や融点が同じような分子量の物質よりも高くなっています。この水素結合には分子内での極性が関わっているのです。さらにこの極性には電気陰性度も関わっていて、覚えることがたくさんあります。

結合は化学の基礎知識です。水素結合はもちろん、共有結合、金属結合、イオン結合も重要なキーワードとなっています。しっかりと理解し、自分の言葉で説明できるようにしましょう。

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化学

3分で簡単「水素結合」!元家庭教師がわかりやすく解説

今回は「水素結合」について勉強します。

化学には色々な結合が登場する。特に大切なのが「共有結合」、「金属結合」、「イオン結合」です。これらの結合によって原子が結び付き物質が作られる。一方水素結合は物質を作るための結合ではない。分子の中にある水素が仲立ちとなって起きる分子同士の結合のことです。水素結合が起きることでその物質の融点や沸点、さらには密度まで変わってくる。

それでは水素結合について国公立大学の工学部化学科出身で家庭教師のバイトをしていたたかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

時々東大進学者を輩出する地方の進学校に在籍し、それなりに楽しい高校時代を過ごす。部活は化学部で3年間あきることなく試薬と戯れて過ごしていたリケジョ。わからない用語は図書館の百科事典で検索していたアナログ派。

原子と化学結合のおさらい

水素結合を含め化学結合について理解するためには原子の構造と原子に関連した知識が欠かせません。まずはこのふたつからおさらいしていきましょう。

原子の構造

原子の構造

image by Study-Z編集部

原子は陽子と中性子からなる原子核とその周りを飛んでいる電子からできています。陽子は正の電荷に荷電し、電子は負の電荷に荷電しているのです。ちなみに中性子は電気的に中性であり、原子全体も陽子と電子の電気を打ち消し合って中性となっています。

電子は原子核の周りを自由自在に飛び回っているわけではなく、電子殻という決められた空間の中を飛び回っているのです。電子殻に入るができる電子の数は決まっています。そのため、電子の数が増えると電子殻の数も増えていくのです。そして、いちばん外側にるのが最外殻で、この最外殻に入った価電子が結合に大きく関わってきます。

電子殻は原子核に近いところからK殻、L殻、M殻とあり、その電子の最大容量はそれぞれ2個、8個、18個と決まっているのです。これは原子核に近いところから殻をn番目としたときに2n2と求めることができます。例えばK殻は原子核から1番近いのでn=1となり、2×12でK殻には2個電子が入り、次のL殻は2×22=8で8個までとなるのです。

共有結合とは?

共有結合とは?

image by Study-Z編集部

価電子が多く、陰イオンになりやすい非金属元素。そのため非金属同士が結合するときは最外殻にある電子を共有しあう共有結合をします。

例えば水素分子。水素原子は電子を1つしか持っていません。そして水素の最外殻(K殻)には2つしか電子が入らず、水素原子はお互いに1つずつ電子を出して共有結合します。一方、アンモニアは最外殻(L殻:最大電子数8個)に電子3つ分の空きがある窒素と3つの水素が電子を共有しあってできた分子です。さらにメタンでは最外殻のL殻に電子4つ分の空きがある炭素が4つの水素と電子を共有しています。

また二酸化炭素はひとつの炭素が2つの酸素と2つずつ電子を共有してできた分子です。このように2つの電子を共有しあう結合を二重結合と呼びます。共有結語について理解を深めたい人にはこちらの記事がおすすめです。

 

金属結合とは?

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金属元素同士が集まって単体を作るとき、金属結合によって結合します。

非金属元素とは反対に、金属元素は電子が最外殻に1、2個くらいしかありません。そのため、この最外殻電子が自由電子として原子の間を自由に行き来する金属結合をするのです。この金属結合によって金属は展性延性といった特徴を持ちます。

金属結合について知りたい人はこちらの記事をどうぞ。

イオン結合とは?

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電子を放出したり取り入れたりして金属は陽イオン、非金属は陰イオンになります。そして陽イオンと陰イオンは電気的にひかれあい、イオン結晶を形成するのです。例えばNaCl(塩化ナトリウム、食塩)はNaとClがイオン結合した結晶になります。

このイオンになりやすさは第一イオン化エネルギー電子親和力で決まるのです。第一イオン化エネルギーとは、電子1個を取り去って1価の陽イオンになるために必要なエネルギーのことで、このエネルギーが小さい原子ほど陽イオンになりやすいということができます。そして電子親和力は1個の電子を受け取って1価の陰イオンになる時に放出するエネルギーのことです。この電子親和力が大きいほど1価の陰イオンになりやすくなります。

イオン結合についてもっと知りたい人にはこちらの記事がおすすめです。

水素結合とは?

image by PIXTA / 28514636

ここでいよいよ水素結合のご紹介です。

今までご紹介した結合は、原子と原子を結び付けて物質を作ります。一方、水素結合は分子同士に結びつきを作るのです。例えば水やフッ化水素、アンモニアは分子の間に水素結合が作られます。そのため水などは、同じぐらいの分子量の物質と比べると沸点が高くなっているのです。

なぜ水素結合するのかというと、例えばフッ化水素は電気陰性度(共有した電子を引き寄せる力)の大きいフッ素原子が負に荷電した状態の極性を持っています。そして原子核がむき出しの状態になった水素が他の分子中にある非共有電子対(他の原子とペアになってない電子対)と結びついて水素結合をするのです。

水素結合とファンデルワールス力の違い

水素がない分子の間にも働く力があり、この力はファンデルワールス力又は分子間力と呼ばれています。しかしファンデルワールス力は化学結合より弱い水素結合よりもさらに弱い力です。そのため分子間力が働く分子結晶は柔らかく、常温で液体や固体の状態のものが多くなっています。

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