今回は、流体力学で学習する「ナビエ-ストークスの式」について解説していきます。

「ナビエ-ストークスの式」は、流体力学の基礎方程式です。ですが、式の形が複雑で、一度で理解することは難しい。多くの本で「ナビエ-ストークスの式」はベクトル解析の式で書かれているが、この記事では理解しやすい成分表示の式を紹介します。ぜひ、この機会に「ナビエ-ストークスの式」を理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

ナビエ-ストークスの式の重要性

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ナビエ-ストークスの式は、流体力学を学ぶ上で、絶対に避けて通ることはできない非常に重要な公式の一つです。ナビエ-ストークスの式は、流体粒子の運動を記述した微分方程式ですよ。一言で表現するならば、古典力学で登場するニュートンの運動方程式を、流体力学版へと改変したものです。

ナビエ-ストークスの式は、流体力学で登場する様々な公式を導出する際に、必要となります。また、工学分野の流体シミュレーションでも、ナビエ-ストークスの式は用いられますよ。このような理由から、ナビエ-ストークスの式は、私たちの生活を支える科学技術の発展に貢献してくれていると言えるでしょう。

この記事では、ナビエ-ストークスの式をどのように導出していくのかということを中心にお話していきます。途中、見慣れない用語や式が数多く登場かもしれません。そのようなときは、用語の定義、式の意味をしっかりと理解して、一歩ずつ着実に進めていきましょう。

必要となる要素の準備

必要となる要素の準備

image by Study-Z編集部

ここでは、x軸方向のナビエ-ストークスの式を代表して導出します。ナビエ-ストークスの式は、ニュートンの運動方程式ma=Fから導かれたものです。ですから、まず最初に、流体の質量加速度流体に働く力を表現する方法を考える必要があります。

以下では、3次元の空間内に存在する流体について考えますよ。また、流体を1つのかたまりとしてとらえると、計算ができません。そのため、流体を微小体積ΔxΔyΔzをもつ流体粒子にわけて考えます。そして、流体粒子の速度成分を(u,v,w)としますね。加えて、流体の密度ρおよび粘性係数μは一定の値とします。つまり、非圧縮性流体を仮定することになりますね。

流体粒子の質量

流体粒子の体積はΔxΔyΔz流体の密度はρです。密度は、単位体積当たりの質量を表しています。そして、流体は密度ρが一定である非圧縮性流体だということも考慮すると、流体粒子の質量はρΔxΔyΔzと表せますね。

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流体粒子の加速度

流体粒子の加速度

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流体粒子の加速度はどのように表現できるでしょうか。ここでは、x軸方向の加速度について考えますね。ある瞬間に流体粒子のx軸方向の速度がu(x,y,z,t)であったと仮定します。そして、Δt秒後に、流体粒子のx軸方向の速度がu(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)に変化するとしましょう。

このとき、加速度はlim[Δt→0][{u(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)-u(x,y,z,t)}/Δt]となります。u(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)を級数展開し、2次以降の項を無視すると加速度は、u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂tとなりますね。ここで、∂は偏微分を表しています

流体粒子に働く力

流体粒子に働く力

image by Study-Z編集部

流体粒子に働く力は、3つあります。1つ目は圧力、2つ目は粘性力、3つ目は重力などの外力です。

まず初めに、圧力を表す式を考えましょう。流体粒子の左側にかかる圧力はp(x,y,z)、右側にかかる圧力はp(x+Δx,y,x)です。ですから、流体粒子にかかる正味の圧力による力はp(x,y,z)ΔyΔz-p(x+Δx,y,x)ΔyΔzとなります。先ほどと同じように、p(x+Δx,y,x)を級数展開し、2次以降の項を無視すると圧力による力は-(∂p/∂x)ΔxΔyΔzと表せますね。

粘性力も、まったく同じように考えることができます。流体粒子の向かい合う面にかかる力の差分を考えると、粘性応力による力の合計は(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔzです。ここで、τxxはx軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力、τyxはy軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力、τzxはz軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力を表します。

外力については、ニュートンの運動方程式を用いるときと同様の方法で記述しますよ。流体粒子の質量をΔxΔyΔzとして、重力の式、万有引力の式などを適応すればよいのです。

ナビエ-ストークスの式を完成させよう!

ナビエ-ストークスの式を完成させよう!

image by Study-Z編集部

ここまでの計算結果から、流体粒子の質量はρΔxΔyΔz加速度はu∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t働く力は-(∂p/∂x)ΔxΔyΔz+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔz+Xだとわかりました。Xは重力などの外力を表しています。これらを、ニュートンの運動方程式ma=Fに代入すると、ρΔxΔyΔz(u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t)=-(∂p/∂x)ΔxΔyΔz+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔz+Xとなりますね。

さらに、この式の両辺をΔxΔyΔzで割ると、ρ(u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t)=-(∂p/∂x)+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)+X'となります。ここでの、X'は単位質量あたりに働く外力です。これでナビエ-ストークスの式が導出できました。

\次のページで「ナビエ-ストークスの式を理解しよう!」を解説!/

ナビエ-ストークスの式を理解しよう!

ナビエ-ストークスの式は、流体力学の基礎方程式です。この式から、ベルヌーイの式、オイラーの運動方程式、境界層方程式などが導出されます。これらの式は、すべて流体力学の重要公式ですよ。つまり、ナビエ-ストークスの式は、流体力学の理論の根幹となる重要なツールなのです。ぜひ、この機会にナビエ-ストークスの式を理解してみてください。

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流体力学物理理科

流体力学の超重要公式「ナビエ-ストークスの式」とは?理系学生ライターがわかりやすく解説

流体粒子の加速度

流体粒子の加速度

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流体粒子の加速度はどのように表現できるでしょうか。ここでは、x軸方向の加速度について考えますね。ある瞬間に流体粒子のx軸方向の速度がu(x,y,z,t)であったと仮定します。そして、Δt秒後に、流体粒子のx軸方向の速度がu(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)に変化するとしましょう。

このとき、加速度はlim[Δt→0][{u(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)-u(x,y,z,t)}/Δt]となります。u(x+Δx,y+Δy,z+Δz,t+Δt)を級数展開し、2次以降の項を無視すると加速度は、u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂tとなりますね。ここで、∂は偏微分を表しています

流体粒子に働く力

流体粒子に働く力

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流体粒子に働く力は、3つあります。1つ目は圧力、2つ目は粘性力、3つ目は重力などの外力です。

まず初めに、圧力を表す式を考えましょう。流体粒子の左側にかかる圧力はp(x,y,z)、右側にかかる圧力はp(x+Δx,y,x)です。ですから、流体粒子にかかる正味の圧力による力はp(x,y,z)ΔyΔz-p(x+Δx,y,x)ΔyΔzとなります。先ほどと同じように、p(x+Δx,y,x)を級数展開し、2次以降の項を無視すると圧力による力は-(∂p/∂x)ΔxΔyΔzと表せますね。

粘性力も、まったく同じように考えることができます。流体粒子の向かい合う面にかかる力の差分を考えると、粘性応力による力の合計は(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔzです。ここで、τxxはx軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力、τyxはy軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力、τzxはz軸に垂直な面に作用するx方向の粘性応力を表します。

外力については、ニュートンの運動方程式を用いるときと同様の方法で記述しますよ。流体粒子の質量をΔxΔyΔzとして、重力の式、万有引力の式などを適応すればよいのです。

ナビエ-ストークスの式を完成させよう!

ナビエ-ストークスの式を完成させよう!

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ここまでの計算結果から、流体粒子の質量はρΔxΔyΔz加速度はu∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t働く力は-(∂p/∂x)ΔxΔyΔz+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔz+Xだとわかりました。Xは重力などの外力を表しています。これらを、ニュートンの運動方程式ma=Fに代入すると、ρΔxΔyΔz(u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t)=-(∂p/∂x)ΔxΔyΔz+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)ΔxΔyΔz+Xとなりますね。

さらに、この式の両辺をΔxΔyΔzで割ると、ρ(u∂u/∂x+v∂u/∂y+w∂u/∂z+∂u/∂t)=-(∂p/∂x)+(∂τxx/∂x+∂τyx/∂y +∂τzx/∂z)+X’となります。ここでの、X’は単位質量あたりに働く外力です。これでナビエ-ストークスの式が導出できました。

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