化学

溶媒1kgの中に溶質が何mol溶けているかを示す「質量モル濃度」を元研究員が解説

よぉ、桜木建二だ。質量モル濃度ってどんな場面で使うか知ってるか?

質量パーセント濃度やモル濃度はよく出てくるが、なぜ質量モル濃度が必要なのかはよくわからないよな。

今回は「質量モル濃度」の定義と必要性、計算の仕方について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

wing1982

ライター/wing

元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!

1.三種類の濃度と単位

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濃度を理解する上で重要なのは、分子と分母が何なのかという事です。その説明をする時に必ず出てくる「溶質」「溶媒」「溶液」という用語を先に覚えておきましょう。

溶かされている物質が「溶質」、溶かしている物質(液体の場合が多い)が「溶媒」、溶質と溶媒全体のことを「溶液」といいます。食塩水で例えると、溶質とは食塩、溶媒とは水、溶液とは食塩水のことです。

では、小学校や中学校で一番最初に出会う濃度である、質量パーセント濃度から説明していきましょう。

1-1.質量パーセント濃度(%)

理科の授業で「食塩何グラムを水何グラムに溶かしました。濃度を計算して求めましょう。」という問題を解いたことがありませんか?この濃度というのが質量パーセント濃度です。

質量パーセント濃度(%)= 溶質の質量(g)÷ 溶液(溶質+溶媒)の質量(g)× 100

という計算式で導かれ、溶液中に溶質が何パーセント含まれているかを示します。食塩水を例にとると、食塩水中に食塩が何パーセント含まれているかを表す濃度が質量パーセント濃度です。

1-2.モル濃度(mol/L)

化学で一番よく使われるのがモル濃度です。モル濃度は溶液1リットル中に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度になります。質量モル濃度と分けるため体積モル濃度という言い方もありますが、一般的にモル濃度といえば体積モル濃度のことだという事を覚えておきましょう。

モル濃度(mol/L)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶液の体積(L)

という計算式で導きますが、溶液の体積(L)は次のように変換する場合もあります。

溶液の体積(L)= 溶液の体積(mL)÷ 1000

モル濃度を求めれば、水溶液の体積を量るだけで、その中に溶けている溶質の物質量(mol)が簡単に分かるため利便性が高い濃度です。

1-3.質量モル濃度(mol/kg)

1-3.質量モル濃度(mol/kg)

image by Study-Z編集部

今回のテーマである質量モル濃度についてですが、実は化学の中でよく使われる濃度ではありません。しかし、沸点上昇や凝固点降下の計算をする際には重要ですし、試験などで問われることも多いのできちんと計算できるようにしておきましょう。

質量モル濃度は溶媒1キログラム中(分母は溶媒なので注意が必要です)に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度です。計算式は

質量モル濃度(mol/kg)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)

になります。

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よく出てくる三つの濃度とそれぞれの求め方・単位がわかったな。質量モル濃度だけ、分母が溶媒だということが特に覚えておきたいポイントだな。

2.質量モル濃度の重要性

ではなぜ質量モル濃度が必要なのでしょうか。モル濃度だけですべてが求められたら楽なのにと思いませんか?

しかし、質量モル濃度でないと比較が難しい場合もあるのです。沸点上昇・凝固点降下を例にとり、くわしく解説していきましょう。

2-1.沸点上昇・凝固点降下とは

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では、沸点上昇・凝固点降下とはどのような現象のことをいうのでしょうか。

純粋な水が沸騰する温度(=沸点)は約 100 ℃ です。しかし、純粋な水に少し溶質(例えば食塩)を溶かすと沸点は 100 ℃ よりも高くなります。そして溶かす食塩を増やすほど、沸点は高くなるのです。つまり、溶媒に溶質を溶かすことで沸騰しにくくなると言えます。この現象を沸点上昇と言うのです。

対して、純粋な水を凍らせる温度(=凝固点)は約 0 ℃ ですが、純粋な水に少し溶質(例えば食塩)を溶かすと凝固点は 0 ℃ よりも低くなります。そして溶かす溶質を増やすほど、凝固しにくくなるのですこの現象を凝固点降下と言います。

2-2.沸点上昇度と凝固点降下度を求める計算式

何 mol 溶質を溶かしたら、何度沸点が上がるか(沸点上昇度)には、比例関係が成立するという事が分かっており、計算で求めることができます。

Δt(沸点上昇度)=  Kb  ×  C( Kb:溶媒固有の定数 C:質量モル濃度)

Δt(凝固点降下度)=  Kf  ×  C( Kf:溶媒固有の定数 C:質量モル濃度)

Kb または Kf は溶媒固有の値で、例えば水の Kb は 0.52 、Kf は 1.85 と決まっているのです。つまり質量モル濃度を求めることで、沸点上昇または凝固点降下の温度変化が何℃なのか、この公式に当てはめる事で求めることができます

2-1.で沸点は溶質をたくさん溶かすほど上がり、凝固点は溶質をたくさん溶かすほど下がるというお話をしました。しかし、沸点上昇と凝固点降下を上の比例の式が当てはまるのは、希薄溶液の時だけです。

濃度が高い溶液に関しては上の式は成立しないので注意が必要になります。

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沸点上昇度や凝固点降下度を求めるときに質量モル濃度が必要だということはわかったが、なぜ質量モル濃度なんだ?モル濃度じゃだめなのか?

2-3.なぜ質量モル濃度を使うか

沸点上昇・凝固点降下は、溶液の濃度の違いによる溶媒の性質の変化を求める事です。それなので溶媒を分母に取る質量モル濃度を比べることで、溶媒の性質の変化を理解しやすくなります。

さらに、一定量の溶媒に溶かしている溶質のモル数が2倍になったら、質量モル濃度も2倍になるという所が質量モル濃度の特徴です。モル濃度(mol/L)は、濃度が2倍になっても分母が(溶媒+溶質)の体積なので、含まれる溶媒の量が異なってしまいます。つまり比較が難しくなってしまうのです。

また、温度変化には体積変化が伴います。一般的に温度が高くなると体積は増えるのです。体積を基準にしてしまうと温度が変わったときに体積も変動してしまうため比較が困難になります。

このような目的の時には、質量モル濃度を使うのです。

3.理解を深める計算問題

質量モル濃度の重要性がわかったところで、理解を深めるために計算問題を解きましょう。

3-1.質量モル濃度を求める計算問題

ではまず、質量モル濃度を求めましょう。

問題1 塩化ナトリウム NaCl 2 mol を水 5 kg に溶かしました。この水溶液の質量モル濃度は?

質量モル濃度(mol/kg)は「溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)」

なので 2 ÷ 5 =0.4

答えは 0.4 mol/kg となります。

問題2 水酸化ナトリウム NaOH 4.0 g を水 500 g に溶かしました。この水溶液の質量モル濃度は? ただし、原子量 H=1.0  O=16  Na=23 とします。

(1) 質量モル濃度を求めるために必要なのは、溶質の物質量(mol)と溶媒の質量(kg)です。

それなのでまず、水酸化ナトリウム 4.0 g が何モルなのか求めましょう。NaOH の分子量(=式量)は 23 + 16 + 1 = 40 です。モルを求めたい時は、質量(g)を分子量で割るので 4.0 ÷ 40 = 0.1 mol

(2) 次に溶媒が何 kg なのか求めます。

500 ÷ 1000 = 0.5 kg

(3) 最後に質量モル濃度(mol/kg) を「溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)」で求めましょう。

0.1 ÷ 0.5 = 0.2

答えは 0.2 mol/kg となります。

問題3 10 % 水酸化ナトリウム水溶液の密度は 1.1 g / cm3 です。この水溶液の質量モル濃度を求めましょう。ただし、原子量 H=1.0  O=16  Na=23 とします。

このような問題の場合は、水溶液を自分の好きな量持ってきます計算が簡単になるので 1L 持ってくることがオススメです

(1) まず水酸化ナトリウム水溶液中に含まれる水酸化ナトリウム(溶質)の物質量を求めます。

10 % 水酸化ナトリウム水溶液 1 L の質量は密度より 1000 × 1.1 = 1100 g

この水溶液中の 10% が水酸化ナトリウム(溶質)なので、水酸化ナトリウムは 1100 × 0.1 = 110 g

これをモルに変換したいので、分子量で割りましょう。110 ÷ 40 = 2.75 mol

(2) 次に溶媒の質量を求めます。水溶液全体の質量から溶質の質量を引くと溶媒の質量になるので 1100 – 110 = 990 g

これをキログラムに変換すると 990 ÷ 1000 = 0.99 kg

(3) 最後に質量モル濃度(mol/kg) を「溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)」で求めましょう。

2.75 ÷ 0.99 = 2.78

答えは 2.78 mol/kg となります。

3-2.沸点上昇度・凝固点降下度を求める計算問題

最後に、質量モル濃度から沸点上昇度・凝固点降下度を求める計算問題を解いてみましょう。

問題 水 800 g に尿素 30 g を溶かした溶液の大気圧下での沸点・凝固点はそれぞれ何℃か求めましょう。ただし尿素の分子量は 60 、水の沸点上昇定数 Kb = 0.52 、水の凝固点降下定数 Kf = 1.82 とします。

まず沸点について計算しましょう。

(1) 尿素 30 g を水 800 g に溶かした時、純水より何℃沸点が上昇するかが知りたいので Δt(沸点上昇度)= Kb × C の Δt を求めたいということになります。そこで、まず溶液の質量モル濃度を求めましょう。

尿素が何 mol か知りたいので 質量 ÷ 分子量 で求めます。30 ÷ 60 = 0.5 mol

(2) 次に質量モル濃度の分母は溶媒の kg なので、水 800 g は何 kg かというと 800 ÷ 1000 = 0.8 kg

(3) よって質量モル濃度 C は 0.5 ÷ 0.8 = 0.625 mol / kg

(4) これより溶液の沸点上昇度 Δt は Kb × C = 0.52 × 0.625 = 0.325

(5) 最後にこの問題は溶液の沸点上昇度ではなく沸点を聞いているので、純水の沸点 100 ℃ を足しましょう

0.325 + 100 = 100.325 

この溶液の沸点は 100.325 ℃ となります。

さらに、この溶液の凝固点を求めましょう。

今まで導いてきた数値より、Δt(凝固点降下度)= Kf × C は

1.82 × 0.625 = 1.1375

この問題は溶液の凝固点降下度ではなく凝固点を聞いているので、純水の凝固点 0 ℃ から求めた数値を引きましょう

0 – 1.1375 = -1.1375

この溶液の凝固点は -1.1375 ℃ になります。

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質量モル濃度に関する複雑な計算まで解けるようになったな。質量モル濃度の意味とどのような場面で必要になるかをセットで覚えておけば、他の濃度と混同する心配はいらないな。

質量モル濃度は、溶媒と溶液を比較する時や体積変化を無視できる濃度として有用

質量モル濃度は溶媒 1 kg 中に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度で、計算式は

質量モル濃度(mol/kg)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)です。

質量モル濃度は、主に沸点上昇度や凝固点降下度を求めるときに使います。

この時にモル濃度を使わない理由は、

(1) 何も溶かしていない溶媒と、溶かした後の溶液の変化を比較したいので、分母が溶媒の方が比較しやすい。

(2) 溶質の量が2倍になったら質量モル濃度も2倍になるため、溶質と溶媒と濃度の関係がわかりやすい。

(3) 分母が体積ではないため、温度変化に伴う体積変化を無視できる

であり、使う場面は多くありませんが、重要な濃度です。

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