
溶媒1kgの中に溶質が何mol溶けているかを示す「質量モル濃度」を元研究員がわかりやすく解説

質量パーセント濃度やモル濃度はよく出てくるが、なぜ質量モル濃度が必要なのかはよくわからないよな。
今回は「質量モル濃度」の定義と必要性、計算の仕方について、化学実験を生業にしてきたライターwingと一緒に解説していくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/wing
元製薬会社研究員。小さい頃から化学が好きで、実験を仕事にしたいと大学で化学を専攻した。卒業後は化学分析・研究開発を生業にしてきた。化学のおもしろさを沢山の人に伝えたい!
1.三種類の濃度と単位

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濃度を理解する上で重要なのは、分子と分母が何なのかという事です。その説明をする時に必ず出てくる「溶質」「溶媒」「溶液」という用語を先に覚えておきましょう。
溶かされている物質が「溶質」、溶かしている物質(液体の場合が多い)が「溶媒」、溶質と溶媒全体のことを「溶液」といいます。食塩水で例えると、溶質とは食塩、溶媒とは水、溶液とは食塩水のことです。
では、小学校や中学校で一番最初に出会う濃度である、質量パーセント濃度から説明していきましょう。
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1-1.質量パーセント濃度(%)
理科の授業で「食塩何グラムを水何グラムに溶かしました。濃度を計算して求めましょう。」という問題を解いたことがありませんか?この濃度というのが質量パーセント濃度です。
質量パーセント濃度(%)= 溶質の質量(g)÷ 溶液(溶質+溶媒)の質量(g)× 100
という計算式で導かれ、溶液中に溶質が何パーセント含まれているかを示します。食塩水を例にとると、食塩水中に食塩が何パーセント含まれているかを表す濃度が質量パーセント濃度です。
1-2.モル濃度(mol/L)
化学で一番よく使われるのがモル濃度です。モル濃度は溶液1リットル中に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度になります。質量モル濃度と分けるため体積モル濃度という言い方もありますが、一般的にモル濃度といえば体積モル濃度のことだという事を覚えておきましょう。
モル濃度(mol/L)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶液の体積(L)
という計算式で導きますが、溶液の体積(L)は次のように変換する場合もあります。
溶液の体積(L)= 溶液の体積(mL)÷ 1000
モル濃度を求めれば、水溶液の体積を量るだけで、その中に溶けている溶質の物質量(mol)が簡単に分かるため利便性が高い濃度です。
1-3.質量モル濃度(mol/kg)

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今回のテーマである質量モル濃度についてですが、実は化学の中でよく使われる濃度ではありません。しかし、沸点上昇や凝固点降下の計算をする際には重要ですし、試験などで問われることも多いのできちんと計算できるようにしておきましょう。
質量モル濃度は溶媒1キログラム中(分母は溶媒なので注意が必要です)に溶けている溶質の物質量(mol)を表した濃度です。計算式は
質量モル濃度(mol/kg)= 溶質の物質量(mol)÷ 溶媒の質量(kg)
になります。

よく出てくる三つの濃度とそれぞれの求め方・単位がわかったな。質量モル濃度だけ、分母が溶媒だということが特に覚えておきたいポイントだな。
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