この記事では「青天の霹靂」について見ていきます。

「青天の霹靂」はずばり「思いがけない突発的事変のたとえ」ですが、「青天」と書くか「晴天」と書くかで迷ったり間違えたりした経験のある人もいるのではないでしょうか。そして「霹靂(へきれき)」って何?と思っている人もいるでしょう。

今回は「霹靂」の意味も含めて、「青天の霹靂」を類義語や英訳と一緒に、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「青天の霹靂」の意味・語源は?

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「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」は日常生活でも比較的よく見聞きする言葉でしょう。ただ、漢字で迷ったことはありませんか。「青天」なのか「晴天」なのか。ここでは語源を含めて、「青天の霹靂」の意味を国語辞典を参照しつつ見ていきましょう。

思いがけない突発的事変のたとえ

国語辞典では、「青天の霹靂」の意味は次のように記載されています。

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。

[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「青天(せいてん)の霹靂(へきれき)」

「青天の霹靂」の意味は、辞書では「急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。」と記載されています。この「霹靂」は「雷」の意味です。つまり、「思いがけず突発的に起きた事変」を、晴れ渡った青空に突然発生した雷に例えているというわけですね。青空にいきなり雷が見えたら、誰でもびっくりしてしまいますよね。

ちなみに、「青天の霹靂」なのか「晴天の霹靂」なのか迷う人がいると思います。最近は「晴天の霹靂」と書く人が増えてしまい、コンピューターの予測変換でも出てくる場合がありますが、本来は「晴天の霹靂」は誤りです。ただ、誤用が広がりすぎてしまったためか、一部の国語辞典には、「青天の霹靂」の記述の中に「晴天の霹靂」が補足して書かれているものも存在します。

本来は筆の勢いを表す言葉だった?

では、この「青天の霹靂」の語源は何でしょうか。

「青天の霹靂」は、中国の南宋時代の詩人・陸游(りくゆう)(1125-1210)が、『九月四日夜雞未鳴起作』という詩の中で書いた一節が語源となっています。詩の中で陸游は、”病床にあった自身が突如として起き上がり、ものすごい勢いで筆を走らせたこと”を「放翁病過秋 忽起作醉墨 正如久蟄龍 青天飛霹靂」と表現しました。この「青天飛霹靂」が「青天の霹靂」の語源となったのです。よって、この「青天の霹靂」は、「青天霹靂」という表記で中国語にも存在します。日本は歴史的に中国の書物を多く輸入していたので、いつしかこの「青天の霹靂」も陸游の詩とともに日本に流入し、定着したのでしょう。

ただ、中国でこの言葉が誕生した当初は現在のような意味ではなく、「激しい勢いで筆を走らせることのたとえ」として用いられていたそうです。

\次のページで「「青天の霹靂」の使い方は?良い意味でも悪い意味でもOK」を解説!/

「青天の霹靂」の使い方は?良い意味でも悪い意味でもOK

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次に、「青天の霹靂」の使い方を例文とともに見ていきましょう。「青天の霹靂」は「思いがけず突発的に起きた事変のたとえ」ですが、この「思いがけず突発的に起きた事変」は、良いことも悪いことも当てはまります。

良い意味で使う場合

まずは、”良い意味で使う場合”を例文と一緒に確認していきましょう。

1.自分が初めて書いた作品が芥川賞にノミネートされ、さらには賞を受賞することになった。青天の霹靂だ。賞を受賞できるなんて思っていなかった。
2.ずっと憧れていた西川さんから告白された。向こうは自分になんか興味ないだろうと思っていたから、青天の霹靂だった。

1番の例文では、”自分が初めて書いた作品が芥川賞に選ばれたこと”について、想定していなかった突然の驚きとして「青天の霹靂」を用いて表現しています。まさか初めて書いた作品が芥川賞に選ばれるなんて、どんなに自信作であっても想像することはできないでしょう。

2番の例文では、”憧れの人から告白されたこと”について、想定していなかった突然の驚きとして「青天の霹靂」を用いて表現しています。自分のことに興味がないと思っていた憧れの人から告白されたら、嬉しい上にとても驚くでしょう。

上記のように、良い意味でも「青天の霹靂」は使用することができます。

悪い意味で使う場合

次に、”悪い意味で使う場合”を例文と一緒に確認していきましょう。

1.昨日一緒に食事をした友人が今朝亡くなったという。あんなに元気だったのに。青天の霹靂だ…。
2.今日、部長からリストラの通知を受けた。青天の霹靂だったよ。これまで何も知らされてなかったから…。

1番の例文では、”昨日一緒に食事をして元気だった友人が、今朝突然亡くなったこと”について、想定していなかった突然の驚きとして「青天の霹靂」を用いて表現しています。昨日まで元気だった人が今日亡くなってしまうとは、普通は考えられないですよね。

2番の例文では、”一切の予告なしにリストラ通知を受け取った”ことに対して、想定していなかった突然の驚きとして「青天の霹靂」を用いて表現しています。いきなりのリストラ宣告、青天の霹靂以外の何物でもないでしょう。

\次のページで「「青天の霹靂」の類義語は?」を解説!/

「青天の霹靂」の類義語は?

次に、「青天の霹靂」の類義語を見ていきましょう。「青天の霹靂」の類義語には、「寝耳に水」「藪から棒」「足元から鳥が立つ」があります。いずれも”驚き”に関連した表現です。

「寝耳に水」就寝中、耳に水が!?

寝耳に水」は「不意の出来事や知らせに驚くことのたとえ」です。寝ているときに耳に向かって水をかけられたらびっくりして起きてしまいますよね。”寝ているときに耳に水をかけられたような驚き”という意味で、「寝耳に水」という言葉が生まれました。思いがけない突発的な出来事に驚くという点で、「青天の霹靂」とほぼ同じような使われ方をします。

「藪から棒」茂みの中からいきなり棒が!?

藪から棒」は「やぶからぼう」と読み、「突然に物事を行うさま」を意味します。山道を歩いていて、茂みからいきなり棒が突き出てきたら、とてもびっくりしてしまいますよね。そのような”驚くほど突然に何かを行う様子”を「藪から棒」は表現しています。なお、「藪蛇(やぶへび)」という全く違う言葉と混同して「藪から蛇」と言ってしまう人もいますが、「藪から蛇」という言葉は存在しません。

「足元から鳥が立つ」身近なところで意外なことが!

足元から鳥が立つ」は、「身近な所で意外なことが起こる」「急に思いたってあわただしく物事を始める」という2つの意味をもった表現です。足元にいた鳥がいきなり空に向かって飛び立ったら、それは驚きますよね。「足元から鳥が立つ」という表現は、そのような”突然の出来事への驚き”や、”驚きにつながる突然の行動”を行うことを指します。「が立つ」を省略した「足元から鳥」という略表現も使用されていますね。

「青天の霹靂」の英訳は?

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最後に、「青天の霹靂」の英語表現を例文とともにご紹介します。「青天の霹靂」の英語表現は、「a bolt out of the blue」と「totally unexpected」の2つです。

「a bolt out of the blue」

a bolt out of the blue」は、直訳すると「青空から雷」となる、「青天の霹靂」と同じ意味を表す英語表現です。日本語の「青天の霹靂」は中国の詩が由来ですが、英語の方は19世紀のイギリスの詩人が初めて使ったのではないかと言われるなど、由来が定かではありません。例文を見てみましょう。

1.The news of his death came as a bolt out of the blue. 彼が死んだという知らせは、まさに青天の霹靂だった。
2.Japan's victory was truly a bolt out of the blue. 日本の勝利はまさに青天の霹靂だった。

\次のページで「「totally unexpected」」を解説!/

「totally unexpected」

totally unexpected」は「全く予期していなかった」という意味の英語表現です。こちらも「青天の霹靂」の翻訳によく使用される言葉ですね。例文を見てみますよう。

1.Japan's victory was totally unexpected. 日本の勝利は青天の霹靂だった。
2.The assassination of the president was totally unexpected. 大統領の暗殺は青天の霹靂だった。

青い空から突如雷が…。それが「青天の霹靂」

今回は「青天の霹靂」について解説しました。「青天の霹靂」は中国の詩に由来する表現で、青い空に突如雷が見えたかのような思いがけず突発的に起きた事変のたとえです。「晴天の霹靂」と書くのは本来は誤りですので、「青い空から雷」で「青天」と覚えるようにしましょう。また、英語表現の1つは「a bolt out of the blue」であるため、「bule」だから「青天」と覚えるのも良いかもしれません。

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国語言葉の意味

青天?晴天?霹靂って何?「青天の霹靂」の意味や類義語・英訳を院卒日本語教師がわかりやすく解説

この記事では「青天の霹靂」について見ていきます。

「青天の霹靂」はずばり「思いがけない突発的事変のたとえ」ですが、「青天」と書くか「晴天」と書くかで迷ったり間違えたりした経験のある人もいるのではないでしょうか。そして「霹靂(へきれき)」って何?と思っている人もいるでしょう。

今回は「霹靂」の意味も含めて、「青天の霹靂」を類義語や英訳と一緒に、大学院卒の日本語教師の筆者が解説していきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間働き、日本で大学院修了の日本語教師。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「青天の霹靂」の意味・語源は?

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「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」は日常生活でも比較的よく見聞きする言葉でしょう。ただ、漢字で迷ったことはありませんか。「青天」なのか「晴天」なのか。ここでは語源を含めて、「青天の霹靂」の意味を国語辞典を参照しつつ見ていきましょう。

思いがけない突発的事変のたとえ

国語辞典では、「青天の霹靂」の意味は次のように記載されています。

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。

[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「青天(せいてん)の霹靂(へきれき)」

「青天の霹靂」の意味は、辞書では「急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。」と記載されています。この「霹靂」は「雷」の意味です。つまり、「思いがけず突発的に起きた事変」を、晴れ渡った青空に突然発生した雷に例えているというわけですね。青空にいきなり雷が見えたら、誰でもびっくりしてしまいますよね。

ちなみに、「青天の霹靂」なのか「晴天の霹靂」なのか迷う人がいると思います。最近は「晴天の霹靂」と書く人が増えてしまい、コンピューターの予測変換でも出てくる場合がありますが、本来は「晴天の霹靂」は誤りです。ただ、誤用が広がりすぎてしまったためか、一部の国語辞典には、「青天の霹靂」の記述の中に「晴天の霹靂」が補足して書かれているものも存在します。

本来は筆の勢いを表す言葉だった?

では、この「青天の霹靂」の語源は何でしょうか。

「青天の霹靂」は、中国の南宋時代の詩人・陸游(りくゆう)(1125-1210)が、『九月四日夜雞未鳴起作』という詩の中で書いた一節が語源となっています。詩の中で陸游は、”病床にあった自身が突如として起き上がり、ものすごい勢いで筆を走らせたこと”を「放翁病過秋 忽起作醉墨 正如久蟄龍 青天飛霹靂」と表現しました。この「青天飛霹靂」が「青天の霹靂」の語源となったのです。よって、この「青天の霹靂」は、「青天霹靂」という表記で中国語にも存在します。日本は歴史的に中国の書物を多く輸入していたので、いつしかこの「青天の霹靂」も陸游の詩とともに日本に流入し、定着したのでしょう。

ただ、中国でこの言葉が誕生した当初は現在のような意味ではなく、「激しい勢いで筆を走らせることのたとえ」として用いられていたそうです。

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