今回は「燃料電池」について解説していきます。

「燃料電池」は水素と酸素を反応させることによって、電気エネルギーを作り出す装置です。電気エネルギーを作り出すとき、燃料電池は水のみを排出する。つまり、燃料電池は動作中に、温室効果ガスや大気汚染物質を排出しないということです。このような理由から、燃料電池は未来のエネルギー源として期待されているぞ。ぜひ、この記事を読んで「燃料電池」について理解を深めてくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

燃料電池とは?

image by PIXTA / 54650314

燃料電池は、水素酸素を主な燃料として、電気エネルギーを取り出す装置です。最大の特徴は、運転時に温室効果ガスや大気汚染物質を排出しないということですよ。他にも、エネルギー変換効率が高いことや可動部分がほとんどないので騒音を出さないことなどが、メリットであると言えます。

検討すべきも残されていますが、都市ガスを利用した家庭用燃料電池などの一部分野では実用化が始まっていますよ燃料電池を搭載した自動車やバスも試験的に製造されていますよね。この記事では、燃料電池の仕組み燃料電池の種類について解説していきます。また、燃料電池をより便利に使うために検討すべき課題は、どようなものであるのかを考えてみましょう。

燃料電池の仕組み

燃料電池の仕組み

image by Study-Z編集部

水素を燃焼(酸化)させると、熱エネルギーを放出し、水が生じます。このとき、熱エネルギーではなく、電気エネルギーが放出されるように工夫した装置が燃料電池です。つまり、燃料電池は、水素と酸素が結合するときに放出されるエネルギーを電気エネルギーとして取り出しているのですね。水の電気分解の逆の反応であるとも言えます。

では、どのような工夫で電気エネルギーを取り出しているのでしょうか。まず、水素燃料極(マイナス極)へ供給します。このとき、燃料極では水素がイオン化され、水素イオン電子に分解されるのです。そのあと、電子は電球などの負荷を通り、空気極(プラス極)へたどり着きます。一方、水素イオンは電解質を経由して、空気極へ至りますよ。そして、水素イオン、酸素、電子が空気極で結合し、水が生成されます

このように、水素と酸素を同じ場所で一度に反応させるのではなく、電解質で区切られた別の場所で段階的に反応させて、電気エネルギーを取り出しているのです

燃料電池の種類

ここでは、実用化されている、もしくは実用化に向けて積極的に研究開発が進められている4種類の燃料電池を紹介していきます。各種燃料電池の特性や用途に注目してみましょう!

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固体酸化物型燃料電池(SOFC)

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固体酸化物型燃料電池(SOFC)は、燃料極にニッケル・ジルコニアサーメット、空気極にランタンクロマイト、電解質にイットリア安定化ジルコニアを使用した燃料電池です。固体酸化物型燃料電池は、水素の代わりに一酸化炭素を燃料に用いることができます高温でのみ動作するため、工場の高温排熱などを利用していますよ。

電解質のイットリア安定化ジルコニアは、人工的に酸素欠陥を作り、酸素が通り抜けやすいような構造になっています。ですから、燃料電池の電解質以外に、酸素センサーなどにも用いられていますよ。

溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)

溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)は、燃料極にニッケル、アルミニウム、クロムの合金、空気極に酸化ニッケルにリチウムを少量加えたものを使用しています。電解質には、特殊な素材に炭酸リチウムと炭酸カリウムを浸み込ませたものが用いられていますよ。

溶融炭酸塩型燃料電池も、水素以外の燃料を使用することができます。また、空気極には二酸化炭素を送り込む必要がありますよ

リン酸型燃料電池(PAFC)

リン酸型燃料電池(PAFC)は、燃料極と空気極の両方に多孔質炭素膜、電解質には特殊な素材に浸み込ませたリン酸が用いられています。リン酸型燃料電池は、低温で動作する燃料電池であるので、電極には触媒の白金が含まれていますよ

白金は非常に高価であり、地殻中の埋蔵量も非常に少なくなっています。そのため、微粒子化といった、より少ない白金で多くの燃料電池を作るための技術が開発されていますよ。近年では、白金の代わりに、電極の触媒に用いる代替え材料の研究も進められています。代替え材料として期待されているのは、チタン酸化物ニッケルの合金などです。

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固体高分子型燃料電池(PEFC)

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固体高分子型燃料電池(PEFC)は、燃料極と空気極の両方に多孔質炭素膜、電解質にはパーフルオロスルホン酸膜が用いられています。固体高分子型燃料電池は、最も低い温度で運転できますよ。そのため、リン酸型燃料電池(PAFC)と同様に、電極に白金が触媒として添加されています

固体高分子型燃料電池は、小型化が容易に行えるので、自動車用燃料電池家庭用燃料電池などで実用化が始まっていますよ。

燃料電池がかかえる問題点

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最後に、燃料電池がかかえている問題点について解説していきますね。燃料電池をより広く普及させるためには、水素用のインフラを確立する必要があります。例えば、燃料電池で動く自動車への水素の補給は、水素ステーションにて行われますよね。いわば、水素ステーションは、ガソリンスタンドの水素版ということにばります。しかしながら、水素ステーションの数はまだまだ少ないのです。

水素用のインフラが普及しない理由は、いくつかあります。まず第一に、燃料電池を使用した機器自体が高価であることが理由に挙げられますよ。また、水素が爆発しやすい気体で、扱いづらいという点も理由に挙げあれます。

そして、今後必ず解決しなければならないのが、水素の製造方法の問題です。水素は、水の電気分解によって得られますが、電気を作り出すには別のエネルギーが必要となります。電気分解に用いる電気が、水力、風力、太陽光などの再生可能エネルギー由来のもであれば、作り出される水素もカーボンフリーと言えますよね。

ですが、石炭、石油、天然ガスなどに由来する電気で、電気分解を行った場合はどうのようになるでしょうか?水素使用時には二酸化炭素を排出しませんが、電気分解に使う電気を作り出すときに二酸化炭素を排出することになります。つまり、カーボンフリーにはなりません。ですから、本当の意味でカーボンフリーと言える、大量の水素を製造する方法を確立する必要もあるのです

未来の水素社会を想像してみよう

将来的に、水素は水道、電気、都市ガスなどに並ぶ重要なインフラになることが期待されています。そのような社会になれば、一家に一台、燃料電池が設置されるということも夢ではないかもしれません。自動車も燃料電池搭載が当たり前になっているかもしれませんよね。

燃料電池は、水素社会を支えることになるであろう、重要な技術です。ぜひ、この機会に、燃料電池について学んでみてください。そして、未来の水素社会を思い描いてみましょう。

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化学

3分で簡単「燃料電池」仕組みや種類をエネルギー工学専攻ライターがわかりやすく解説

今回は「燃料電池」について解説していきます。

「燃料電池」は水素と酸素を反応させることによって、電気エネルギーを作り出す装置です。電気エネルギーを作り出すとき、燃料電池は水のみを排出する。つまり、燃料電池は動作中に、温室効果ガスや大気汚染物質を排出しないということです。このような理由から、燃料電池は未来のエネルギー源として期待されているぞ。ぜひ、この記事を読んで「燃料電池」について理解を深めてくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

燃料電池とは?

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燃料電池は、水素酸素を主な燃料として、電気エネルギーを取り出す装置です。最大の特徴は、運転時に温室効果ガスや大気汚染物質を排出しないということですよ。他にも、エネルギー変換効率が高いことや可動部分がほとんどないので騒音を出さないことなどが、メリットであると言えます。

検討すべきも残されていますが、都市ガスを利用した家庭用燃料電池などの一部分野では実用化が始まっていますよ燃料電池を搭載した自動車やバスも試験的に製造されていますよね。この記事では、燃料電池の仕組み燃料電池の種類について解説していきます。また、燃料電池をより便利に使うために検討すべき課題は、どようなものであるのかを考えてみましょう。

燃料電池の仕組み

燃料電池の仕組み

image by Study-Z編集部

水素を燃焼(酸化)させると、熱エネルギーを放出し、水が生じます。このとき、熱エネルギーではなく、電気エネルギーが放出されるように工夫した装置が燃料電池です。つまり、燃料電池は、水素と酸素が結合するときに放出されるエネルギーを電気エネルギーとして取り出しているのですね。水の電気分解の逆の反応であるとも言えます。

では、どのような工夫で電気エネルギーを取り出しているのでしょうか。まず、水素燃料極(マイナス極)へ供給します。このとき、燃料極では水素がイオン化され、水素イオン電子に分解されるのです。そのあと、電子は電球などの負荷を通り、空気極(プラス極)へたどり着きます。一方、水素イオンは電解質を経由して、空気極へ至りますよ。そして、水素イオン、酸素、電子が空気極で結合し、水が生成されます

このように、水素と酸素を同じ場所で一度に反応させるのではなく、電解質で区切られた別の場所で段階的に反応させて、電気エネルギーを取り出しているのです

燃料電池の種類

ここでは、実用化されている、もしくは実用化に向けて積極的に研究開発が進められている4種類の燃料電池を紹介していきます。各種燃料電池の特性や用途に注目してみましょう!

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