今回は「鉛蓄電池」について解説していきます。

「鉛蓄電池」は、繰り返し放電と充電が行える二次電池の一つで、自動車用のバッテリーを中心として広く普及している。この記事では、鉛蓄電池の構造や化学反応について説明したあと、長所や短所についても考察する。また、他の二次電池との比較もしていきます。ぜひ、この機会に、鉛蓄電池について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

鉛蓄電池とは?

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鉛蓄電池は、繰り返し充放電が可能な二次電池の一種です。電池の構造がシンプルであることや安価であることから、様々なところで使われてきました。ですが、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池の登場により、最近は活躍の場は少なくなりつつあります。この記事では、鉛蓄電池の仕組みだけではなく、鉛蓄電池の長所と短所も説明していきますね。そして、なぜ鉛蓄電池の活躍の場が減ってしまったのかも考察してみましょう!

鉛蓄電池の仕組み

構造

構造

image by Study-Z編集部

電池の主な材料は、電解液正極板負極板です。鉛蓄電池では、希硫酸を電解液としています。また、正極板は二酸化鉛負極板は鉛です。これらを専用の容器にセットすると鉛蓄電池になります。このように容器にセットされて、一つのかたまりになったものをセルといいますよ。

鉛蓄電池の1セルあたりの起電力は2.0V(ボルト)です。また、鉛蓄電池の容量は極板面積の大きさで決まりAh(アンペアアワー)という単位で表されますよ。市販されている鉛蓄電池は、6つのセルが直列に接続されているものが多く、その電圧は12Vとなっています。

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化学反応

化学反応

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鉛蓄電池がどのような化学反応を起こすことで、放電および充電を行っているのかを考えましょう。

まずは、放電について説明しますね。負極の鉛は、希硫酸の硫酸イオンと反応し、電子を放出します。このとき、負極板の表面に難溶性の硫酸鉛が析出しますよ。放出された電子は、導線などを通り、正極にたどり着きます。正極にたどり着いた電子は、二酸化鉛と反応し、硫酸鉛と水を生成するのです。ここで生じた硫酸鉛は正極版に析出します。このようにして、電子が次々と負極から正極へと流れていきますよ

次に、充電の場合を考えてみましょう。負極では、硫酸鉛が外部電源からの電子を受け取り、鉛へと変化します。正極では、硫酸鉛から電子が奪われることで、二酸化鉛が生成されますよ。これらの反応が続くと、負極と正極のどちらも放電前の状態に復元されるのです。充電完了後は、再び電池として使用できるようになります。

鉛蓄電池の特性

鉛蓄電池の特性

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長所

それでは、鉛蓄電池の長所について説明します。鉛蓄電池の長所は、何といっても、非常に安価だということですよ。鉛蓄電池は、他の二次電池と比べて、容量当たりのコストが小さいのです。このような理由から自動車用のバッテリー、フォークリフトやゴルフカートなどの電動車用のバッテリーとして広く普及しています。近年では、アイドリングストップ車、充電制御車、ハイブリッドカーなどの高燃費の自動車が誕生しており、これらの車に特化した鉛蓄電池も登場していますよ。

鉛蓄電池のもう一つの長所は、メモリー効果がないということです。メモリー効果とは、最後まで放電してしまう前に、再充電を行うことで電池の実用量が低下してしまう現象のことを指します。メモリー効果は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池で頻繁にみられる現象です。

短所

続いて、鉛蓄電池の短所について考えてみましょう。鉛蓄電池の短所として、重いことが挙げられます。鉛蓄電池の主な材料である鉛と希硫酸は、いずれも高密度の物質です。そのため、携帯電話などのモバイル機器に搭載することはできません

もう一つの短所は、放電後すぐに充電しなければ、両極板にサルフェーションが発生することです。サルフェーションとは、硫酸鉛が結晶化し固くなった物質のことですよ。一度サルフェーションが極板に付着してしまうと、電池としての能力を著しく下げてしまいます。そのため、外部電源として太陽電池などの再生可能エネルギーを用いるには工夫が必要になりますよ。なぜなら、再生可能エネルギーは安定的な供給が困難であるからです。

その他には、電解液に使用している希硫酸は低温で凍ってしまうことが短所だと考えられます。つまり、寒い地域では、電池としての能力を失ってしまうのです。また、電解液の希硫酸は強酸性を示す危険な物質ですよね。そのため、鉛蓄電池の扱いには、十分気を付ける必要があります。

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鉛蓄電池の淘汰

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鉛蓄電池は、他の電池と比べて長い歴史を持っています。かつては、自動車用のバッテリーだけでなく、電動アシスト自転車持ち運び可能な扇風機などにも利用されていました。また、日本の自衛隊が所有する潜水艦にも、鉛蓄電池が使用されていたようです。

しかしながら、ニッケルカドミウム電池ニッケル水素電池などの登場により、置き換えが進みました。先ほど紹介した電動アシスト自転車のバッテリーには、現在、鉛蓄電池は使用されていません。また、持ち運び可能な小型家電も、新しい蓄電池が使用されるようになりました。

さらに、追い打ちをかけるように、リチウムイオン電池が誕生しました。リチウムイオン電池の長所は、小さくて軽いことですよ。ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル機器には、リチウムイオン電池が使用されるようになったのです。このような経緯で、鉛蓄電池が使用される分野は、非常に少なくなってしまいました。

より深く鉛蓄電池について理解しよう

鉛蓄電池は、高校の教科書に掲載されているほど有名な二次電池の一つですよ。ですが、教科書の内容のほとんどが化学反応についての説明です。そのため、具体的な長所や短所については知らない方が多いかと思います。また、他の電池との違いについても、学ぶ機会は少ないでしょう。

この記事では、教科書には載っていない部分も含めて、鉛蓄電池について詳しくまとめました。雑学として知っておくのも良いでしょう。ぜひ、この機会に、鉛蓄電池について詳しく学んでみてください。

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化学

「鉛蓄電池」の仕組みと特徴を理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「鉛蓄電池」について解説していきます。

「鉛蓄電池」は、繰り返し放電と充電が行える二次電池の一つで、自動車用のバッテリーを中心として広く普及している。この記事では、鉛蓄電池の構造や化学反応について説明したあと、長所や短所についても考察する。また、他の二次電池との比較もしていきます。ぜひ、この機会に、鉛蓄電池について学んでくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

鉛蓄電池とは?

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鉛蓄電池は、繰り返し充放電が可能な二次電池の一種です。電池の構造がシンプルであることや安価であることから、様々なところで使われてきました。ですが、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池の登場により、最近は活躍の場は少なくなりつつあります。この記事では、鉛蓄電池の仕組みだけではなく、鉛蓄電池の長所と短所も説明していきますね。そして、なぜ鉛蓄電池の活躍の場が減ってしまったのかも考察してみましょう!

鉛蓄電池の仕組み

構造

構造

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電池の主な材料は、電解液正極板負極板です。鉛蓄電池では、希硫酸を電解液としています。また、正極板は二酸化鉛負極板は鉛です。これらを専用の容器にセットすると鉛蓄電池になります。このように容器にセットされて、一つのかたまりになったものをセルといいますよ。

鉛蓄電池の1セルあたりの起電力は2.0V(ボルト)です。また、鉛蓄電池の容量は極板面積の大きさで決まりAh(アンペアアワー)という単位で表されますよ。市販されている鉛蓄電池は、6つのセルが直列に接続されているものが多く、その電圧は12Vとなっています。

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