今回は地球の誕生と冥王代について解説していきます。

冥王代は長い地球の歴史のスタート部分です。人類の歴史と同じように古くなるほど情報に乏しくなくるのは地球の歴史も変わらない。しかしならが、冥王代には生命の誕生をはじめ多くの重要な出来事があったようです。現在わかっている範囲で冥王代の地球について見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

地球誕生から冥王代

image by iStockphoto

地球の誕生時から約40億年前までを冥王代と呼びます。地球は約46億年ごろに誕生したと考えられますので、冥王代の長さは約6億年です。冥王の名前がついていることからわかるように、この時代の地球に関する物質的証拠が、地球にはほとんど残っていません。そのため冥王代の地球とその環境は大きな謎です。

しかしながら、数少ない証拠や理論的研究、さらには太陽系自体の研究によりある程度のことはわかってきています。冥王代では超高温の状態で誕生した地球が徐々に冷え現在と似たような構造になり、大気、海、地殻の誕生と、さらには原初の生命体の誕生、というように重要な多くのイベントが起こっていたようです。

今回はこの冥王代について紹介してみましょう。

太陽系の誕生

HL Tau protoplanetary disk.jpg
ALMA, CC 表示 4.0, リンクによる

地球は太陽系とほとんど同時期に誕生したと考えられています。まずは太陽系の誕生を簡単に見てみましょう。宇宙にはほぼ水素とヘリウムからなる星間物質が存在していて、星間物質の密度の高い領域が分子雲と呼ばれる領域です。分子雲がなんらかの原因で収縮を開始すると、自己重力によってさらに収縮が引き起こされ中心に原始星が誕生します。

原始星のまわりにはガスの固まりが存在し、これが原始惑星系円盤と呼ばれるものです。原始惑星系円盤ではガスの中に1パーセント含まれるダストとよばれる固体微粒子が、原始星の重力によって赤道面に集まってきます。集まったダストがさらに集積することによりできるのが、直径数キロから数十キロメートルの微惑星です。

微惑星同士が衝突合体を繰り返し、火星程度の大きさになると原始惑星と呼ばれます。地球はこの原始惑星同士が10回程度衝突することによりできたようです。ちなみに、このころには原始星も十分巨大になり、核融合反応が始まり現在の太陽と同じ恒星になっていると考えられてます。

上記の画像はおうし座にある原始惑星系円盤の画像です。

月の誕生とマグマオーシャン

Artist's concept of collision at HD 172555.jpg
NASA/JPL-Caltech - http://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_1454.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

地球誕生時の最後の衝突は現在とほぼ同じ大きさの原始地球に、火星程度の原始惑星が衝突したと考えられています。この衝突によって原始地球は数千から数万度に過熱され、大規模な蒸発と溶融が生じました。蒸発した岩石は数千度の岩石蒸気の大気となって地球を取り囲み、地球は表面から深部まで溶融しマグマオーシャンと呼ばれる状態になったと考えられます。

衝突によって巻き上げられた物質の一部が地球の周囲で再び衝突合体し誕生したのが、地球唯一の衛星である月です。月は約1ヶ月程度でできたと考えられています。一方、マグマオーシャンに覆われた地球は宇宙空間に熱を逃がし急速に冷却していきますが、100気圧におよぶ水蒸気と二酸化炭素の大気による温室効果のため、数百万年はマグマオーシャンの状態です。

その後、マグマオーシャンの温度が低下し、水蒸気が雨となり地表のマグマが固まって原始地殻が形成されます。雨は数百年にわたって降り続き、降った水が地球の大部分を覆いできるのが原始海洋です。この頃には、海水と反応することにより大気も原始大気から初期大気に変わり、比較的安定した地球構造が誕生したと考えられています。

冥王代の地球

地球時計.svg
original jpg by Woudloper 二次著作物 original svg by Hardwigg derivative work: Masaqui - Geologic clock.jpg Geologic Clock with events and periods.svg, パブリック・ドメイン, リンクによる

最後の衝突から数百万年後の地球は、二酸化炭素に富んだ水素や一酸化炭素を含む大気と、強酸性の海洋に覆われていました。現在の地球の大気の主成分の一つである酸素はほとんどありません。表面には岩石質の地殻が存在していましたが、そのすぐ下にはマグマオーシャンが存在し、冷却されるには数億年が必要であったと考えられています。

冥王代の物質的証拠はほとんど残っていませんが、地球とほぼ同時に月ができたのなら、月には古い岩石が残っているかもしれません。このような考えのもと、アポロ計画により大量に月の岩石が地球に持ち帰られました。その分析の結果、どうやら38億年から41億年の間に、月に大量の隕石が降り注いでいたことがわかりました。

月に大量の隕石が降り注いでいたということは、地球にも同様に大量の隕石が降り注いでいたと考えられ、これを後期重爆撃と呼びます。これなら冥王代の物質的証拠が少ない理由も説明できそうです。ただしこの理論は仮説であり、後期重爆撃がおこった原因も含めてまだはっきりしたことはわかっていません。

\次のページで「生命の誕生について」を解説!/

生命の誕生について

Tree of life ja.svg
PatríciaR, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

地球上の最初の生命体はいつどのように誕生したのでしょうか。人類にとって非常に重要な問いですが、まだはっきりとはわかっていません。そもそもはっきり分かる問題なのかもわからないのですが、冥王代の後の始生代には生命活動の証拠が存在していますので、少なくとも40億年ごろには生命は存在していた可能性が高いです。

となると冥王代に生物は誕生していたことになりますが、もちろん証拠はまだ見つかっていません。そもそも、生物の材料となる有機物がどうやってできたのかもわかっていません。ただアミノ酸については、近年、隕石や彗星、さらには遠くの星間分子雲の中にも大量のアミノ酸が含まれていることがわかってきました。もしかしたら、この宇宙ではアミノ酸はありふれた存在なのかもしれません。

現在では最初の生命はRNAに似たようなものであろうと考えられているようですが、まだまだ原初の生命については謎だらけというのが現状のようです。つまり我々すべての祖先については、まだまったくと言っていいほどわかっていません。上記の画像は生物の系統図で、現在の生物は古細菌、真性細菌、真核生物の3つの大きな系統に分かれています。

冥王代研究のこれから

冥王代研究のこれから

image by Study-Z編集部

地球上に冥王代の物質的証拠はほとんど存在していないのですが、ちょくちょくと冥王代のものと思われる地層および岩石が発見されているようです。もっとくまなく調査すれば冥王代の岩石がまだまだ見つかるかもしれません。もしそうなれば冥王代のことにつていもっと多くのことがわかるでしょう。

さらには月をはじめ太陽系に存在するほかの天体を探査することによっても、地球の初期状態の推測に役立つ多くのことがわかるはずです。たとえ証拠が少なくても多くの研究者の努力によって、これらも冥王代の地球について多くのことが解明されていくことが期待されます。

" /> 地球の誕生「冥王代」とは?理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
地学地質・歴史理科

地球の誕生「冥王代」とは?理系ライターがわかりやすく解説

今回は地球の誕生と冥王代について解説していきます。

冥王代は長い地球の歴史のスタート部分です。人類の歴史と同じように古くなるほど情報に乏しくなくるのは地球の歴史も変わらない。しかしならが、冥王代には生命の誕生をはじめ多くの重要な出来事があったようです。現在わかっている範囲で冥王代の地球について見てみよう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

地球誕生から冥王代

image by iStockphoto

地球の誕生時から約40億年前までを冥王代と呼びます。地球は約46億年ごろに誕生したと考えられますので、冥王代の長さは約6億年です。冥王の名前がついていることからわかるように、この時代の地球に関する物質的証拠が、地球にはほとんど残っていません。そのため冥王代の地球とその環境は大きな謎です。

しかしながら、数少ない証拠や理論的研究、さらには太陽系自体の研究によりある程度のことはわかってきています。冥王代では超高温の状態で誕生した地球が徐々に冷え現在と似たような構造になり、大気、海、地殻の誕生と、さらには原初の生命体の誕生、というように重要な多くのイベントが起こっていたようです。

今回はこの冥王代について紹介してみましょう。

太陽系の誕生

HL Tau protoplanetary disk.jpg
ALMA, CC 表示 4.0, リンクによる

地球は太陽系とほとんど同時期に誕生したと考えられています。まずは太陽系の誕生を簡単に見てみましょう。宇宙にはほぼ水素とヘリウムからなる星間物質が存在していて、星間物質の密度の高い領域が分子雲と呼ばれる領域です。分子雲がなんらかの原因で収縮を開始すると、自己重力によってさらに収縮が引き起こされ中心に原始星が誕生します。

原始星のまわりにはガスの固まりが存在し、これが原始惑星系円盤と呼ばれるものです。原始惑星系円盤ではガスの中に1パーセント含まれるダストとよばれる固体微粒子が、原始星の重力によって赤道面に集まってきます。集まったダストがさらに集積することによりできるのが、直径数キロから数十キロメートルの微惑星です。

微惑星同士が衝突合体を繰り返し、火星程度の大きさになると原始惑星と呼ばれます。地球はこの原始惑星同士が10回程度衝突することによりできたようです。ちなみに、このころには原始星も十分巨大になり、核融合反応が始まり現在の太陽と同じ恒星になっていると考えられてます。

上記の画像はおうし座にある原始惑星系円盤の画像です。

月の誕生とマグマオーシャン

Artist's concept of collision at HD 172555.jpg
NASA/JPL-Caltech – http://www.nasa.gov/multimedia/imagegallery/image_feature_1454.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

地球誕生時の最後の衝突は現在とほぼ同じ大きさの原始地球に、火星程度の原始惑星が衝突したと考えられています。この衝突によって原始地球は数千から数万度に過熱され、大規模な蒸発と溶融が生じました。蒸発した岩石は数千度の岩石蒸気の大気となって地球を取り囲み、地球は表面から深部まで溶融しマグマオーシャンと呼ばれる状態になったと考えられます。

衝突によって巻き上げられた物質の一部が地球の周囲で再び衝突合体し誕生したのが、地球唯一の衛星である月です。月は約1ヶ月程度でできたと考えられています。一方、マグマオーシャンに覆われた地球は宇宙空間に熱を逃がし急速に冷却していきますが、100気圧におよぶ水蒸気と二酸化炭素の大気による温室効果のため、数百万年はマグマオーシャンの状態です。

その後、マグマオーシャンの温度が低下し、水蒸気が雨となり地表のマグマが固まって原始地殻が形成されます。雨は数百年にわたって降り続き、降った水が地球の大部分を覆いできるのが原始海洋です。この頃には、海水と反応することにより大気も原始大気から初期大気に変わり、比較的安定した地球構造が誕生したと考えられています。

冥王代の地球

地球時計.svg
original jpg by Woudloper 二次著作物 original svg by Hardwigg derivative work: Masaqui Geologic clock.jpg Geologic Clock with events and periods.svg, パブリック・ドメイン, リンクによる

最後の衝突から数百万年後の地球は、二酸化炭素に富んだ水素や一酸化炭素を含む大気と、強酸性の海洋に覆われていました。現在の地球の大気の主成分の一つである酸素はほとんどありません。表面には岩石質の地殻が存在していましたが、そのすぐ下にはマグマオーシャンが存在し、冷却されるには数億年が必要であったと考えられています。

冥王代の物質的証拠はほとんど残っていませんが、地球とほぼ同時に月ができたのなら、月には古い岩石が残っているかもしれません。このような考えのもと、アポロ計画により大量に月の岩石が地球に持ち帰られました。その分析の結果、どうやら38億年から41億年の間に、月に大量の隕石が降り注いでいたことがわかりました。

月に大量の隕石が降り注いでいたということは、地球にも同様に大量の隕石が降り注いでいたと考えられ、これを後期重爆撃と呼びます。これなら冥王代の物質的証拠が少ない理由も説明できそうです。ただしこの理論は仮説であり、後期重爆撃がおこった原因も含めてまだはっきりしたことはわかっていません。

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