それじゃ、「ポップアート」による現実やものの描き方、大衆文化との向き合い方について、世界史に詳しいライターひこすけと一緒に解説していきます。
- 「ポップアート」のキーワードは大量生産・大量消費
- 第二次世界大戦後の経済成長が「ポップアート」の土壌
- 消費主義を批判することが「ポップアート」の方法
- 絵画の抽象主義に対する批判も「ポップアート」の運動を加速
- 絵画の抽象化は現実の表現を難解にする
- 実際にある「もの」のイメージの表現を追求
- 大衆文化のイメージを切り取る「ポップアート」
- スーパーに大量陳列された商品を表現の対象にする
- 「ポップアート」の関心はポップスターにまで広がる
- ジャスパー・ジョーンズはアメリカの美術界に転換をもたらす
- 日常のものを記号化する「旗」シリーズ
- 「Usuyuki」は日本からのインスピレーションで制作
- ロイ・リキテンスタインは漫画と芸術を結び付けたアーティスト
- アメリカンコミックを模倣した作品は「ポップアート」の代名詞
- ベタ塗りとドットのなかに美を見出す
- ポップスターのイメージを大量流通させたアンディー・ウォーホール
- マリリン・モンローをシルクスクリーンの技法で記号化する
- 消費主義の代名詞であるキャンベル・スープ缶もターゲット
- デイヴィッド・ホックニーはオークションで最高価格にて落札
- ゲイの視点から描いた青いプールシリーズは「ポップアート」を牽引
- 最近はiPadによる作品も発表したデイヴィッド・ホックニー
- 大衆文化を批判する「ポップアート」は大衆ファンを獲得
この記事の目次
ライター/ひこすけ
文化系の授業を担当していた元大学教員。専門はアメリカ史・文化史。芸術史をたどるとき「ポップアート」を避けて通ることはできない。第二次世界大戦後に生まれたこの運動作品は、大量消費されていくものをモチーフに、大衆文化の姿を表現するチャレンジ。そんなアーティストの方法を今日に与えた影響も含めて解説していく。
「ポップアート」のキーワードは大量生産・大量消費
ポップアートのキーワードとなるのが大量生産そして大量消費です。アーティストたちは、第二次世界大戦後のアメリカやヨーロッパにおける経済発展による大量生産・大量消費を批判的にとらえ、それを表現の手段としました。
第二次世界大戦後の経済成長が「ポップアート」の土壌
第二次世界大戦が終わったあと、勝利国となったアメリカとイギリスは経済的に急成長をとげます。その結果、高度に機械化された工場で、たくさんの商品が生産され、それを人々が大量に消費する状況が生まれました。
ここで言う大量生産・大量消費は、いわゆる商品だけではありません。テレビが各家庭に浸透することで、「スター」と言われる人々が生まれ、その肖像があらゆるところに流通。それもひとつの消費活動と見なされました。
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消費主義を批判することが「ポップアート」の方法
大量生産・大量消費は、経済を発展させるプラスの要素であると同時に、一部の知識人にとっては批判の対象となります。このような生産活動は、あらゆるものを均質化し、すべての個性を失わせてしまうと考えられたからです。
ポップアートのアーティストは、大量生産・大量消費の象徴を芸術に取り入れることで、それに飲み込まれる社会の姿を批判しました。批判性が強いものの、魅力的な色彩やデザインにより、一般の人々からも高い支持を受けることになります。
絵画の抽象主義に対する批判も「ポップアート」の運動を加速
ポップアートを芸術史の観点から見ると、それ以前に流行していた絵画の抽象化に対する批判と結びついています。描く対象が抽象化されることで、絵画は難解な存在になっていました。それを分かりやすくすることも、ポップアートの狙いのひとつであったと言えるでしょう。
絵画の抽象化は現実の表現を難解にする
ポップアートが登場するまえ、「キュビズム」「ダダイムズ」「シュルレアリスム」と、写実主義に対する反動となるような芸術運動が流行。目に見える現実とは異なる表現は、専門家による解釈が欠かせないもでした。
とくにシュルレアリスムは、詩人であるアンドレ・ブルトンがフロイトの心理学の研究を応用して難解な理論を確立。その理論と実践は、知識人階級の熱狂的な支持を得ましたが、一般の人々が理解できるものではありませんでした。
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実際にある「もの」のイメージの表現を追求
ポップアートのアーティストたちが目指したのは、芸術の表現をより分かりやすいものにすることです。ニューヨークの街角にある看板や普段の生活で食べるもの、有名人の顔などに注目するようになりました。
ポップアートの芸術家たちは、実際にある「もの」を忠実に描写するのではなく、色彩やデザイン性にこだわった表現を追求します。それらはポスター等にも利用され、さらに社会に浸透するようになりました。
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