今回は「水中毒」について詳しく勉強していこう。

「身近な水で中毒?」と不思議に思うやつもいるでしょう。今回は知らないと怖いその症状と原因についての解説です。

化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.考えてみよう

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水中毒について考える前に、ここで1つ DHMO という物質について考えてみましょう。この物質には以下の事柄に関与しています。

DHMOは

・水酸と呼ばれ、酸性雨の主成分である
重篤なやけどの原因となりうる
・地形の浸食を引き起こす原因になりうる
様々な材料の腐食の原因、電気事故の原因となる
・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される
・吸引・過剰摂取により死に至る

しかしながらDHMOは様々な場面で多く用いられています。

・ジャンクフードやその他の食品に広く用いられる
・動物実験に用いられる
工業用の原料、溶質・溶媒として使用される
防火剤・消火剤・防虫剤などに用いられる

さて、あなたはこの物質に対してどんな印象を持ちましたか?

1-1.視点によって変わるモノの是非

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気付いた人もいるでしょうか。実はこの DHMO とは、水を意味しています。

D di(ジ) 2つの意味
H hydrogen(ハイドロゲン/ヒドロゲン) 水素 H
M mon/mono(モノ) 1つの意味
O oxide(オキシド) 酸素 O

つまり、2つの水素原子と1つの原子からなる水 H2O を意味しているのです。水を偏った見方で見ることで、いかにも危ない物質のように感じてしまいますよね。

実はこの DHMO というのは化学を学んだ人にとっては有名なジョークなのです。物事の本質を見極めるのは難しいことですよね。

参考:Is Dihydrogen Monoxide Dangerous?

\次のページで「1-2.過剰摂取による危険性」を解説!/

1-2.過剰摂取による危険性

さて、先ほど DHMO(以下 水)の説明にもあったように、水は過剰摂取によって死に至る場合があります。水を吸引してしまうこと、つまり溺れることによる危険性は言うまでもなく、普段通り経口摂取によっても重篤な症状を引き起こす場合があるのです。

今回のテーマである「水中毒」は、そんな水の危険性について解説していきます。

2.熱中症予防に効果的なのは?

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夏が近付くにつれて熱中症対策が呼びかけられますが、それにはどんなものがあるか知っていますか?

・水分補給 ・適度な休憩 ・風通しの良い服装にする ・エアコンを活用する など

様々な方法がありますね。では、水分補給のためにはどんな飲み物が向いているでしょう。

多くの医師や飲料メーカーがお勧めしているのはスポーツ飲料や麦茶です。最近は医療の場でも用いられる経口補水液も一般的になってきましたね。経口補水液とは塩分と糖分をバランスよく配合した飲料で、最近はコンビニやスーパーでも気軽に買えますよ。

2-1.飲料に含まれる成分の違い

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経口補水液・スポーツ飲料・麦茶は熱中症対策に効果的なのに、水・お茶・コーヒー・ジュースが向かない理由はなんでしょう。水分をしっかり摂っておきたいときにコーヒーは量を飲むのに向かないのは想像できますよね。ジュースも砂糖などの糖分が多いので、あまり健康的ではありません。しかし水やお茶なら問題ないような気がしませんか?

これは飲料に含まれる成分の違いによるものなのです。その成分とは何か、見ていきましょう。

\次のページで「3.体内にも「塩分バランス」がある」を解説!/

3.体内にも「塩分バランス」がある

水やお茶はぴったりのように思いますよね。味がさっぱりしているのでがぶ飲みにも向いているように感じてしまいます。しかし、それが「水中毒」の原因になってしまうのです。

3-1.ナトリウム濃度の変化が原因

3-1.ナトリウム濃度の変化が原因

image by Study-Z編集部

水分を十分に摂取しなかったり過度の下痢をしてしまったり、またその他の原因によって大量の水分が失われてしまっている状態が「脱水」です。一方で、過剰な水分摂取によって起こることを「水中毒」といいます。どちらも体内の水とナトリウムのバランス(血液中のナトリウム濃度)が崩れることによるものです。

「脱水」の場合、水が少なくなることでナトリウム濃度が上がる高ナトリウム血症の状態になっています。反対に「水中毒」では水の割合が増えることによって低ナトリウム血症の状態であるといえるでしょう。

3-2.水中毒の症状とは

体内の塩分バランスというのは、生体機能を保つために非常に重要です。体内のナトリウムイオン濃度とそれに伴う症状の変化を見ていきましょう。

通常135~145mEq/l(※mEq/lは電解質の単位)

高ナトリウム血症
160mEq/l=脳内出血・クモ膜下出血の危険性増
145以上mEq/l=昏睡、譫妄、興奮


低ナトリウム血症
130mEq/l=軽度の疲労感
120mEq/l=頭痛、嘔吐、精神症状
110mEq/l=性格変化、けいれん、昏睡
100mEq/l=呼吸困難などで死亡

軽いめまいやふらつきは初期症状です。自分の体調をチェックしながら、大きな症状として現れる前に対策をとりたいですね。

3-3.水中毒を防ぐために

熱中症は大量に汗をかき、体に熱がこもってしまっている状態です。体内の塩分が外に出て行ってしまうことで血液内のナトリウムが不足することも原因の1つですね。

こうして塩分バランスがくずれてしまっている状況でさらに水だけを摂り続けたらどうなるか想像がつくでしょう。体内のナトリウム量は変わらなくても、水で薄められることで濃度は下がり続けます。これによって水中毒の症状となってあらわれるのです。

これを防ぐためには適切な塩分バランスを保つ必要があります。そのために有効なのがスポーツドリンクや経口補水液、麦茶などの塩分入り(ミネラル豊富な)飲み物ということですね。

\次のページで「水の大量摂取は体内の塩分バランスを崩す危険あり!」を解説!/

水の大量摂取は体内の塩分バランスを崩す危険あり!

水中毒は水を過剰に摂取することによって血液中のナトリウム濃度が下がることで起こる中毒症状です。水中毒は低ナトリウム血症といいかえてもいいでしょう。

ヒトのからだは自らできていると言っても過言ではありません。その中でも全身を巡って栄養を送る血液は重要な存在ですよね。酸素を運ぶヘモグロビン、免疫に関係する血漿だけでなく、微量の脂肪や糖、無機塩類もこれに含まれています。どれも決して欠かすことのできない成分ですが、その割合・濃度も大切です。

ナトリウム濃度の低下による水中毒は誰にでも起こりうるので、この機会に知っておくといいですね。特に夏の暑い時期やサウナで汗を流したあと、汗で水分と塩分が出てしまっている状態のときには要注意です。

" /> 水の飲みすぎは危険?化学の視点から「水中毒」を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学理科

水の飲みすぎは危険?化学の視点から「水中毒」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「水中毒」について詳しく勉強していこう。

「身近な水で中毒?」と不思議に思うやつもいるでしょう。今回は知らないと怖いその症状と原因についての解説です。

化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.考えてみよう

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水中毒について考える前に、ここで1つ DHMO という物質について考えてみましょう。この物質には以下の事柄に関与しています。

DHMOは

・水酸と呼ばれ、酸性雨の主成分である
重篤なやけどの原因となりうる
・地形の浸食を引き起こす原因になりうる
様々な材料の腐食の原因、電気事故の原因となる
・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される
・吸引・過剰摂取により死に至る

しかしながらDHMOは様々な場面で多く用いられています。

・ジャンクフードやその他の食品に広く用いられる
・動物実験に用いられる
工業用の原料、溶質・溶媒として使用される
防火剤・消火剤・防虫剤などに用いられる

さて、あなたはこの物質に対してどんな印象を持ちましたか?

1-1.視点によって変わるモノの是非

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気付いた人もいるでしょうか。実はこの DHMO とは、水を意味しています。

D di(ジ) 2つの意味
H hydrogen(ハイドロゲン/ヒドロゲン) 水素 H
M mon/mono(モノ) 1つの意味
O oxide(オキシド) 酸素 O

つまり、2つの水素原子と1つの原子からなる水 H2O を意味しているのです。水を偏った見方で見ることで、いかにも危ない物質のように感じてしまいますよね。

実はこの DHMO というのは化学を学んだ人にとっては有名なジョークなのです。物事の本質を見極めるのは難しいことですよね。

参考:Is Dihydrogen Monoxide Dangerous?

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