「チンダル現象」を知っているか?チンダル現象とは簡単に言うと光が粒子の間で散乱し、その通った道が見えることです。

例えばせっけん水にレーザーポインターで真っすぐ光を照射する。すると光が通った道がくっきりとわかるんです。しかしこのチンダル現象はどんな液体でも起きるのかと言えばそうではない。起きるには条件が決まっている。キーワードは「粒子」です。このチンダル現象は例えば空気中のほこりでも起きるし、美しい気象現象にも関係がある。さらにチンダル現象について深く学ぶとなぜ雲が白く見えるのか?といったことについてもわかるそ。

今回はチンダル現象について、高校生の頃に化学部でせっけんの研究をしている時に学んだという国立大学工学部出身のリケジョ、たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

国立大学の工学部で化学を学びながら家庭教師のバイトをしていた。大学院修了後は化学工場に勤務。工場の夜の見回りの際、懐中電灯を空に当てながらチンダル現象を観測していたリケジョ。

チンダル現象とは

チンダル現象とは

image by Study-Z編集部

チンダル現象とは簡単に言うと「分散系に光を通したときに見られる、光の通り道がはっきりとみられる現象」のことです。チンダル現象という名前の由来は発見者のジョン・ティンダルによります。

分散系とは気体、液体、固体に小さな粒子(109m~10-6m)が浮遊又は懸濁している状態のことです。せっけん水で考えると水(液体)にせっけん分子が浮遊している状態ですね。

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ちなみにこの109m~10-6mというのは1nm~1000nm(1μm)となります。肉眼で見えるのが100μm程度までです。イメージとしては髪の毛が50~100μm菌類の酵母が10μmほどになります。化学や生物では小さなサイズの物質なども登場するのでこれを機に確認してみてくださいね。

チンダル現象の発見者

チンダル現象を発見したのは、イギリスで19世紀に活躍したジョン・ティンダルという物理学者です。他にも赤外線放射(温室効果)、反磁性体などいろいろな研究で成果を出しています。

ティンダルは登山家としても知られている人物です。ティンダルはヴァイスホルンというアルプス山脈にある山の初登頂を成功させました。ちなみにこの山に登頂した理由は、アルプスの氷河を研究するためだったそうです。

チンダル現象、どんな時に見られる?

チンダル現象は光が進む途中に大き目な粒子にぶつかって光が散乱することで光の通路が見える現象です。そのため、粒子の小さな分子やイオンが溶けきった真の溶液ではチンダル現象は起こりません。例えばデンプンを入れた溶液では起こりますが、食塩水や砂糖水などではチンダル現象は起こらないのです。

チンダル現象が観察されるのはどんな時か条件を確認していきましょう。

コロイド溶液とチンダル現象

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チンダル現象はコロイド溶液の性質として学習します。コロイド粒子とは「直径が109107mの粒子」のことであり、それが均一に散らばった溶液をコロイド溶液というのです。コロイド溶液はその性質からチンダル現象の他にもブラウン運動という現象を観察することができます。コロイド溶液には、次のようなものが分類されるので確認してくだださい。

・牛乳、豆乳
・抹茶
・墨汁
・泥水
・にごった河川水
・デンプンを入れた水
・水酸化鉄(Ⅲ)コロイド溶液

コロイド溶液についての詳細は、次の記事を読んでくださいね。

\次のページで「空気中のほこりとチンダル現象」を解説!/

空気中のほこりとチンダル現象

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暗い部屋で懐中電灯をつけるとまっすぐに光の進む道が見えます。また、例えば暗闇に差し込む光や映画館の映写機やプロジェクターからの光の通る道がくっきりと浮かび上がっているのを見たことがある人もいるでしょう。これは空気中のちりやほこりでチンダル現象が起きているからです。液体中だけでなく気体中でもチンダル現象は起きるのですね。

気象現象とチンダル現象「天使の梯子」

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雲の隙間から漏れた光がくっきりと見えるのもチンダル現象の一種です。この現象には薄明光線レンブラント光線天使の梯子と様々な呼び方があります。また作家の宮沢賢治は光のパイプオルガンと呼んだそうです。

この現象は雲を構成するのよりも小さな水滴がある時に見ることができますが、その量が多すぎても少なすぎてもきれいに見ることはできません。秋から冬にかけての早朝か夕方によくみられるそうです。その美しさから観光資源にしている観光地もあります。

空と光の散乱

そもそも散乱とはどんな現象なのでしょうか?光には色々な色があります。その色ごとに波長が決まっていて青は波長が短く、赤は長くなっているのです。そして波長が短いほど強く散乱します。光が進む途中で微粒子にぶつかって進行方向が変化することを光の散乱というのです。

ちなみに、1つの波長からなる光を単色光、さまざまな波長の光を含んだ光を白色光と呼びます。散乱にはいくつか種類がありますが、今回はチンダル現象と関係があるものを確認していきましょう。

ミー散乱と雲の色

ミー散乱とは光の波長より大きめの粒子によって起きる光の散乱のことで、ミー散乱した時にチンダル現象を観察することができます。分散系に光を通したときにミー散乱が起きるのですが、実はこのミー散乱によって雲は白く見えているのです。

粒子が光の波長よりも大きい場合、すべての色が散乱します。雲を構成する粒子の中で様々な色の光が散乱し、白く見えているのです。

レイリー散乱と空の色

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ミー散乱は光の波長より大きめの粒子によって起きる光の散乱のことでした。それに対してレイリー散乱は光の波長よりも小さい粒子による光の散乱です。

先ほど青の光は波長が短いと説明しましたね。

光の波長の長さは  長 赤>橙>黄>緑>青>藍色>紫 短 となっています。

光の波長は長いほど散乱しづらく、短いほど散乱しやすいのです。ちなみに本来ならより波長の短い紫色の空になるはずなのですが、人の目は紫を感じづらいために空が青色に見えています。

\次のページで「光の進路がくっきりチンダル現象」を解説!/

光の進路がくっきりチンダル現象

微小な粒子に当たった光が散乱して通った道筋が見えるチンダル現象。液体だけでなく気体中でも見ることができる、意外と身近な現象です。チンダル現象はコロイドの単元で学びます。現象自体は難しいものではなく、そんなに難解な問題が出題されることはありませんが、どういった時にチンダル現象が観察されるのかしっかりと確認してくださいね。

またちょっと頑張ってミー散乱やレイリー散乱も覚えると、なぜ空が青く雲が白いのかも説明できるようになれます。

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化学理科生活と物質

3分で簡単にわかる「チンダル現象」!コロイド溶液・ほこりでの現象も元家庭教師がわかりやすく解説

「チンダル現象」を知っているか?チンダル現象とは簡単に言うと光が粒子の間で散乱し、その通った道が見えることです。

例えばせっけん水にレーザーポインターで真っすぐ光を照射する。すると光が通った道がくっきりとわかるんです。しかしこのチンダル現象はどんな液体でも起きるのかと言えばそうではない。起きるには条件が決まっている。キーワードは「粒子」です。このチンダル現象は例えば空気中のほこりでも起きるし、美しい気象現象にも関係がある。さらにチンダル現象について深く学ぶとなぜ雲が白く見えるのか?といったことについてもわかるそ。

今回はチンダル現象について、高校生の頃に化学部でせっけんの研究をしている時に学んだという国立大学工学部出身のリケジョ、たかはしふみかが解説していきます。

ライター/たかはし ふみか

国立大学の工学部で化学を学びながら家庭教師のバイトをしていた。大学院修了後は化学工場に勤務。工場の夜の見回りの際、懐中電灯を空に当てながらチンダル現象を観測していたリケジョ。

チンダル現象とは

チンダル現象とは

image by Study-Z編集部

チンダル現象とは簡単に言うと「分散系に光を通したときに見られる、光の通り道がはっきりとみられる現象」のことです。チンダル現象という名前の由来は発見者のジョン・ティンダルによります。

分散系とは気体、液体、固体に小さな粒子(109m~10-6m)が浮遊又は懸濁している状態のことです。せっけん水で考えると水(液体)にせっけん分子が浮遊している状態ですね。

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ちなみにこの109m~10-6mというのは1nm~1000nm(1μm)となります。肉眼で見えるのが100μm程度までです。イメージとしては髪の毛が50~100μm菌類の酵母が10μmほどになります。化学や生物では小さなサイズの物質なども登場するのでこれを機に確認してみてくださいね。

チンダル現象の発見者

チンダル現象を発見したのは、イギリスで19世紀に活躍したジョン・ティンダルという物理学者です。他にも赤外線放射(温室効果)、反磁性体などいろいろな研究で成果を出しています。

ティンダルは登山家としても知られている人物です。ティンダルはヴァイスホルンというアルプス山脈にある山の初登頂を成功させました。ちなみにこの山に登頂した理由は、アルプスの氷河を研究するためだったそうです。

チンダル現象、どんな時に見られる?

チンダル現象は光が進む途中に大き目な粒子にぶつかって光が散乱することで光の通路が見える現象です。そのため、粒子の小さな分子やイオンが溶けきった真の溶液ではチンダル現象は起こりません。例えばデンプンを入れた溶液では起こりますが、食塩水や砂糖水などではチンダル現象は起こらないのです。

チンダル現象が観察されるのはどんな時か条件を確認していきましょう。

コロイド溶液とチンダル現象

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チンダル現象はコロイド溶液の性質として学習します。コロイド粒子とは「直径が109107mの粒子」のことであり、それが均一に散らばった溶液をコロイド溶液というのです。コロイド溶液はその性質からチンダル現象の他にもブラウン運動という現象を観察することができます。コロイド溶液には、次のようなものが分類されるので確認してくだださい。

・牛乳、豆乳
・抹茶
・墨汁
・泥水
・にごった河川水
・デンプンを入れた水
・水酸化鉄(Ⅲ)コロイド溶液

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