2種類以上の気体が同時に存在する時の法則「分圧の法則」。各気体の圧力を合計すると、混合気体の全体の圧力になるというもの。例えば、窒素の圧力が8Paで、酸素の圧力が2Paならその混合気体の圧力は10Pa。

実はこの法則、気体を「粒」、厚六を「粒にぶつかる衝撃」と考えると、ぐっとイメージしやすくなる。真空装置を扱った経験のある理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.気体の正体

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そもそも「気体」とはどのようなものでしょうか。

身近な気体として、酸素を例に見てみましょう。空気中に約20%含まれていて、私たち人間を含む好気性生物(酸素を使って代謝を行う生物)にとって欠かせない存在。

そんな酸素を拡大してみてみましょう。

好気性生物

地球上のほとんどの生物は呼吸によって「酸素」を吸い込み二酸化炭素を吐き出します。酸素を使ってエネルギーを生みだしているのです。

実は、光合成によって二酸化炭素を吸って酸素を吐き出している「植物」も、同時に呼吸によって「酸素」を吸い込み二酸化炭素を出しています。意外ですね。

一方で、酸素を使わずにエネルギーを生み出す生物も一部存在します。彼らは嫌気性生物と呼ばれ、多くは細菌。地球誕生直後、大気中に酸素がほとんど存在しない状態でも生きていくことができました。

その後、植物が増えて、光合成により大気中の酸素濃度が高くなると、酸素を使ってエネルギーを生み出す「好気性生物」が増えていきました。

image by Study-Z編集部

私たちが生きていく上で欠かせない存在である、酸素。イラストに示すように、2つの酸素原子が合体した酸素分子として存在します。

酸素原子で存在するより、2つくっついて分子になった方が安定。だからと言って3つも4つも合体することはできず、2つで合体するのが一番安定。

気体状態の酸素とは、この「ニコイチ」状態の分子が、他の酸素分子とは独立して無数に存在している状態。酸素分子同士何かでつながっているわけではなく、「ふわふわ」と浮いているもの。

すごく拡大していみると酸素分子なる「粒」が無数に存在しているととらえることができます。

2.圧力の考え方

圧力とは何かが何かを圧(お)す力。気体の圧力とは気体が何かを圧す力。

前述のとおり、気体=無数の粒と考えることができます。無数の粒が「ふわふわ」とランダムに浮かんでいるとどうなるでしょうか。

そう、ランダムに浮かんでいるのでぶつかってきますね。このぶつかってくる時の衝撃こそが圧力の正体。

粒が多ければ多いほど、ぶつかる頻度も多くなり、その分衝撃も増えます=圧力が高くなるということ。

\次のページで「3.混合気体の圧力」を解説!/

ボイルの法則との関連

温度が一定の時、圧力x体積=一定という法則(ボイルの法則)が知られていますね。この法則によると、体積を半分にすると、圧力は2倍に。なぜそうなるのか?気体を=無数の粒として考えていきましょう。

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体積が半分に圧縮される=粒が2倍ぎゅうぎゅうに存在するといこと。ある体積当たりに1粒しか存在しなかった状態から、同じ体積内に2粒存在するようになりました。

すると、ぶつかる頻度も2倍に。つまりぶつかる衝撃も2倍になりますから、圧力も2倍になることが分かりますね。

3.混合気体の圧力

さて、2種類以上の気体が混ざった混合気体はどのように考えればよいでしょうか。別々に考えたらよいのです。単一気体はイラストのように。粒が1種類しかない状態ですが、混合気体は粒が何種類かある状態。

体積10の空間に、窒素分子が8個、酸素分子が2個ランダムに動いているとします。酸素の分圧が2Paとしたら、空間全体の圧力は何Paになるでしょうか。

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イラストを見ながら想像してみましょう。

*ここでは簡略化のため、酸素分子(酸素原子x2)、窒素分子(窒素原子x2)を1つの丸で表しているため、1項とは絵の様子が変わっていることをお含みおきください。

空間内をランダムに動く酸素分子(2粒)からの圧力が2Pa。一方窒素分子は8個。ランダムにぶつかってくる2個の粒子からの圧力が2Paですから、8個の粒子なら8Pa、つまり窒素の分圧は8Pa。

酸素と窒素、どちらかが衝撃が大きいとか小さいはありません。いずれも粒子1粒から受ける圧力は等しく、ぶつかってくる衝撃(圧力)は個数に比例します。

酸素から2Paで、窒素から8Paなので、空間全体の圧力(全圧)は2Pa+8Pa=10Pa

\次のページで「4.練習問題」を解説!/

窒素、酸素の圧力の比率は?

上記の例で、酸素の分圧は2Pa、窒素の分圧は8Paで比率は2:8。これは言うまでもなく、酸素粒子と窒素粒子の個数の比率。圧力は、気体の粒子の数に比例しますから、分圧の比率=気体分子の個数の比率となります。

上記の例をそのまま式に当てはめてやれば分圧の法則の出来上がり。

ここでは、気体1の圧力(分圧)をP1、気体2の圧力(分圧)をP2、、、とします。

全体の圧力P=P1+P2+・+Pn

そして、P1、P2、Pnの比率は気体1、気体2、気体nの分子の個数(物質量)の比率。物質量は気体の個数とほぼ同じ意味です(後述)。

気体分子の個数=気体の物質量

上記で、わかりやすくするため「気体の個数」という表現を使っていますが、正式にあは「物質量」という表現が使われます。

物質量は気体分子6.02x10^24個ある時1mol(モル)という定義。この、6.02x10^24はアボガドロ定数と呼ばれるもの。

3.01x10^24個なら0.5mol、6.02x10^22個なら0.01mol。

多くの場合、気体分子が大量にある状態を扱うもの。それこそ、上述のような10^22個、10^24個といったレベル。

計算するときに、わざわざ10の20数乗といった大きな数を扱うのは手間になります。そこで6x10^24個を1molとして計算するとスムーズですね。

4.練習問題

4.練習問題

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真空状態(0Paとみなせる)のチャンバーに、アルゴン2L窒素3Lを入れたところチャンバー内の圧力(全圧)が100Paとなりました。

アルゴンと窒素の分圧PArとPNは何Paでしょうか。

解答

チャンバー内の合計圧力はアルゴン分圧PArと窒素分圧PNの合計。これが100Paなので、PAr+PN=100Pa・(1)

アルゴン2L、窒素3Lなので、ぶつかる頻度つまり圧力の比率はPAr:PN=2:3

PAr=1.5PNから(1)式に代入して、PN+1.5PN=2.5PN=100Paから、PN=40Pa。PAr=60Pa

全圧=各気体からの圧力の和

分圧の法則は

・混合気体の圧力(全圧)=各気体の分圧の合計。

・分圧の比率=気体粒子の個数の比率。

とまとめられます。

ここで、「圧力=ぶつかるエネルギー」、「気体の個数とぶつかる頻度(圧力)は比例する」と認識しておけば理解しやすいです。

" /> 気体はすべて粒(つぶ)で考えよー「分圧の法則」を理系ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
化学

気体はすべて粒(つぶ)で考えよー「分圧の法則」を理系ライターがわかりやすく解説

2種類以上の気体が同時に存在する時の法則「分圧の法則」。各気体の圧力を合計すると、混合気体の全体の圧力になるというもの。例えば、窒素の圧力が8Paで、酸素の圧力が2Paならその混合気体の圧力は10Pa。

実はこの法則、気体を「粒」、厚六を「粒にぶつかる衝撃」と考えると、ぐっとイメージしやすくなる。真空装置を扱った経験のある理系ライターのR175と解説していきます。

ライター/R175

関西のとある理系国立大出身。エンジニアの経験があり、身近な現象と理科の教科書の内容をむずびつけるのが趣味。教科書の内容をかみ砕いて説明していく。

1.気体の正体

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そもそも「気体」とはどのようなものでしょうか。

身近な気体として、酸素を例に見てみましょう。空気中に約20%含まれていて、私たち人間を含む好気性生物(酸素を使って代謝を行う生物)にとって欠かせない存在。

そんな酸素を拡大してみてみましょう。

好気性生物

地球上のほとんどの生物は呼吸によって「酸素」を吸い込み二酸化炭素を吐き出します。酸素を使ってエネルギーを生みだしているのです。

実は、光合成によって二酸化炭素を吸って酸素を吐き出している「植物」も、同時に呼吸によって「酸素」を吸い込み二酸化炭素を出しています。意外ですね。

一方で、酸素を使わずにエネルギーを生み出す生物も一部存在します。彼らは嫌気性生物と呼ばれ、多くは細菌。地球誕生直後、大気中に酸素がほとんど存在しない状態でも生きていくことができました。

その後、植物が増えて、光合成により大気中の酸素濃度が高くなると、酸素を使ってエネルギーを生み出す「好気性生物」が増えていきました。

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私たちが生きていく上で欠かせない存在である、酸素。イラストに示すように、2つの酸素原子が合体した酸素分子として存在します。

酸素原子で存在するより、2つくっついて分子になった方が安定。だからと言って3つも4つも合体することはできず、2つで合体するのが一番安定。

気体状態の酸素とは、この「ニコイチ」状態の分子が、他の酸素分子とは独立して無数に存在している状態。酸素分子同士何かでつながっているわけではなく、「ふわふわ」と浮いているもの。

すごく拡大していみると酸素分子なる「粒」が無数に存在しているととらえることができます。

2.圧力の考え方

圧力とは何かが何かを圧(お)す力。気体の圧力とは気体が何かを圧す力。

前述のとおり、気体=無数の粒と考えることができます。無数の粒が「ふわふわ」とランダムに浮かんでいるとどうなるでしょうか。

そう、ランダムに浮かんでいるのでぶつかってきますね。このぶつかってくる時の衝撃こそが圧力の正体。

粒が多ければ多いほど、ぶつかる頻度も多くなり、その分衝撃も増えます=圧力が高くなるということ。

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