今回はマグマについて解説していきます。

日本に住んでいると、定期的に噴火のニュースを聞くと思う。噴火が火山と関係しているのはわかると思うが、火山とはなんでしょうか?今回は火山の理解に不可欠なマグマについて学んで見よう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

マグマについて

image by iStockphoto

日本には火山がたくさんありますが、火山とは簡単にいえば地下からマグマが上がってくる場所のことです。マグマが地上まで出てくるのが噴火であり、噴火のときに見られる溶岩というものはマグマが地表に現れた姿になります。日本は4つのプレートの境界に位置しているため、必然的に地震大国であり火山大国です。火山を理解するには、まずはマグマを理解する必要があります。今回はこのマグマについて紹介しましょう。

地球の内部構造について

Earth cross section (Japanese).svg
Los688 - Myown wrok, パブリック・ドメイン, リンクによる

はじめに地球の内部構造を確認しておきましょう。地球の半径は約6400キロメートルで、表面から大陸部分で60キロメートル、海底部分で10キロメートルは地殻と呼ばれ、様々な岩石から構成されています。その下2900キロメートルまではマントルで、660キロメートル付近で上下に別れていて上が上部マントル、下が下部マントルです。上部マントルはかんらん石、下部マントルはかんらん石が特殊に変化したものによって構成されていると考えられています。

マントルの下はと呼ばれる部分で、5100キロメート付近より外側が液体状の外核で、それより内側が固体状の内核です。地球の内部は基本的に深くなるほど高温高圧になり、内核では約5700度にも達すると考えられています。火山活動では地殻および、その下のマントルが主に関係する範囲です。

プレートテクトニクスについて

Tectonic plate boundaries.png
Jose F. Vigil. USGS - [1], パブリック・ドメイン, リンクによる

火山、もしくはマグマが上がってくる場所はプレートテクトニクスによって決定されています。プレートテクトニクスとは、地殻とマントル上部を合わせたリンソスフェアと呼ばれる部分がいくつかのプレートに分かれ、その下の柔らかいアセノスフェアと呼ばれる部分の上を動いているという理論です。火山はプレート同士の境界である、発散境界および収束境界に発生します。発散境界とはプレート同士が離れていっている部分、収束境界とはプレート同士が重なっていく部分のことです。

上記の画像はマグマが上昇してくる主な場所になります。一番左は収束境界である海洋プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいる部分であり、その右がホットスポットです。その右は発散境界であるプレート同士が離れていっている中央海嶺、その右は収束境界である海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる部分になります。最後は発散境界である大陸上でプレート同士が離れていっている部分です。

ホットスポットとは、プレート移動と関係なくプレートの下のマントル深部より上昇流が存在し、そのためにマグマおよび火山が発生している場所のことになります。

マグマの種類について

Pahoehoe toe.jpg
Hawaii Volcano Observatory (DAS) - http://hvo.wr.usgs.gov/kilauea/update/archive/2003/May/main.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

マグマとは岩石が溶融してできたものであり、液体だけでなく鉱物結晶を含むことが一般的です。溶融とは溶けてドロドロになることになります。マグマも、それが冷えて固まった火成岩と同様に多様です。マグマも火成岩と同様に二酸化ケイ素の割合によって分類されていて、二酸化ケイ素が45-52パーセント含まれているのは玄武岩質マグマで、52-63パーセントは安山岩質マグマ、63-70パーセントはデサイト質マグマ、70-77パーセントは流紋岩質マグマと呼ばれます。

マグマは化学組成だけでなく、温度・粘性・密度などもマグマの種類よってことなり、一般的には玄武岩質になるほどマグマは高温(1100℃以上)で、粘性は低く密度は大きくなるようです。二酸化ケイ素の量が増えると、温度が低く高粘性になり密度は低下します。流紋岩質マグマでは温度は800℃前後が普通です。

\次のページで「マグマの発生について」を解説!/

マグマの発生について

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パブリック・ドメイン, リンク

地球上の火山にもっとも大量に存在するマグマは玄武岩質マグマです。そのため多くの火山では玄武岩質マグマが最初に生じ、その後このマグマが変性することにより多様なマグマが生じていると考えられています。マントル最上部を作っているかんらん岩が部分溶融して生じるのがこの玄武岩質マグマです。

かんらん岩が玄武岩質マグマに変化する機構は、中央海嶺では別れていくプレートの隙間を埋めるように、高温のマントルが温度があまり下がらないまま減圧されマグマに変わります。ホットスポット火山でもマントル深部からの上昇流にのったマントルが急に減圧されマグマに変わる、中央海嶺と似たような機構です。

一方、沈み込み帯ではプレートが深部に沈み込み、その反流によって高温のマントルが急に上昇することによって減圧されマグマに変わります。さらに、沈み込み帯では沈み込むプレートによってもたらされる海水によってもかんらん岩の融点が下がり、マントルからマグマへの変化が促されるようです。

上記はかんらん岩の画像になります。

マグマの上昇と分化

Thrihnukagigur Iceland 1.jpg
Dave Bunnell - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

かんらん岩の部分溶融で生じた玄武岩質マグマは、しだいに集積し、周囲のかんらん岩より軽いため浮力により上昇します。場合によっては上部マントルと地殻の境界付近などでマグマ溜りを形成することもあるようです。上昇中もしくはマグマ溜りで停滞している間に様々なプロセスで化学組成が変化します。このプロセスがマグマの分化です。

マグマが冷却され生じる結晶と周りのマグマとは性質が異なるため、分離していくことがあり、これが結晶分化作用、もしくは分別結晶作用と呼ばれるものになります。このようにマグマが冷却され生じる結晶が鉱物です。マグマが周りの岩石を溶かすことにってマグマの組成が変化するのが混成作用、あるいは同化作用と呼ばれるものになります。さらにマグマが別のマグマと混合するマグマ混合も頻繁に起こっているようです。

上記の画像はマグマ溜り内部の画像になります。

火山深部から噴火へ

Volcano q.jpg
パブリック・ドメイン, リンク

最初に上部マントルと地殻の間でマグマ溜りを作っていたマグマは結晶分化作用などで密度が低下し、再び浮力を獲得し上昇します。このように上昇と停滞を繰り返しながら、地表より深さ数キロメートルまで上昇すると、周囲の岩石の密度がマグマより小さくなり、結晶分化しても浮力を獲得できません。そして最終的なマグマ溜りを形成します。

最終的なマグマ溜りでは低圧になり、それまでマグマに溶け込んでいた揮発成分がガスに変わり、この過程が噴火にとっては重要です。このマグマからガスが分離する過程が急激におこるとマグマがばらばらに粉砕され、膨張するガスとともに急激に地表に到達し爆発的噴火がおこります。なんらかの原因でガスの分離がゆっくり起こると発生するのが非爆破的噴火呼です。非爆発的噴火ではドロドロのマグマがそのまま地表にでてきます。

惑星の成長を考える上でもマグマは重要

惑星の成長を考える上でもマグマは重要

image by Study-Z編集部

地球は岩石型惑星であり、岩石が溶けたものがマグマです。地球や他の惑星の誕生時には非常に高温であり、地表面がすべてマグマに覆われていた時期もあると考えられていて、これをマグマオーシャンと呼んだりします。つまり惑星や衛星は最初はすべてマグマの状態だったと考えられるのです。このためマグマを研究することにより惑星の誕生過程がわかるかもしれません。

さらに、他の惑星にもプレートは見つかっていませんが火山は見つかっています。そこでもマグマのようなものが噴出しているに違いありません。マグマや岩石の研究は、太陽系の惑星や衛星を理解するにはかかせないものなのです。

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地学地球理科

火山の理解に不可欠な「マグマ」を理系ライターが丁寧にわかりやすく解説

今回はマグマについて解説していきます。

日本に住んでいると、定期的に噴火のニュースを聞くと思う。噴火が火山と関係しているのはわかると思うが、火山とはなんでしょうか?今回は火山の理解に不可欠なマグマについて学んで見よう。

今回は物理学科出身のライター・トオルさんと解説していきます。

ライター/トオル

物理学科出身のライター。広く科学一般に興味を持つ。初学者でも理解できる記事を目指している。

マグマについて

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日本には火山がたくさんありますが、火山とは簡単にいえば地下からマグマが上がってくる場所のことです。マグマが地上まで出てくるのが噴火であり、噴火のときに見られる溶岩というものはマグマが地表に現れた姿になります。日本は4つのプレートの境界に位置しているため、必然的に地震大国であり火山大国です。火山を理解するには、まずはマグマを理解する必要があります。今回はこのマグマについて紹介しましょう。

地球の内部構造について

Earth cross section (Japanese).svg
Los688 – Myown wrok, パブリック・ドメイン, リンクによる

はじめに地球の内部構造を確認しておきましょう。地球の半径は約6400キロメートルで、表面から大陸部分で60キロメートル、海底部分で10キロメートルは地殻と呼ばれ、様々な岩石から構成されています。その下2900キロメートルまではマントルで、660キロメートル付近で上下に別れていて上が上部マントル、下が下部マントルです。上部マントルはかんらん石、下部マントルはかんらん石が特殊に変化したものによって構成されていると考えられています。

マントルの下はと呼ばれる部分で、5100キロメート付近より外側が液体状の外核で、それより内側が固体状の内核です。地球の内部は基本的に深くなるほど高温高圧になり、内核では約5700度にも達すると考えられています。火山活動では地殻および、その下のマントルが主に関係する範囲です。

プレートテクトニクスについて

Tectonic plate boundaries.png
Jose F. Vigil. USGS – [1], パブリック・ドメイン, リンクによる

火山、もしくはマグマが上がってくる場所はプレートテクトニクスによって決定されています。プレートテクトニクスとは、地殻とマントル上部を合わせたリンソスフェアと呼ばれる部分がいくつかのプレートに分かれ、その下の柔らかいアセノスフェアと呼ばれる部分の上を動いているという理論です。火山はプレート同士の境界である、発散境界および収束境界に発生します。発散境界とはプレート同士が離れていっている部分、収束境界とはプレート同士が重なっていく部分のことです。

上記の画像はマグマが上昇してくる主な場所になります。一番左は収束境界である海洋プレートの下に海洋プレートが沈み込んでいる部分であり、その右がホットスポットです。その右は発散境界であるプレート同士が離れていっている中央海嶺、その右は収束境界である海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込んでいる部分になります。最後は発散境界である大陸上でプレート同士が離れていっている部分です。

ホットスポットとは、プレート移動と関係なくプレートの下のマントル深部より上昇流が存在し、そのためにマグマおよび火山が発生している場所のことになります。

マグマの種類について

Pahoehoe toe.jpg
Hawaii Volcano Observatory (DAS) – http://hvo.wr.usgs.gov/kilauea/update/archive/2003/May/main.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

マグマとは岩石が溶融してできたものであり、液体だけでなく鉱物結晶を含むことが一般的です。溶融とは溶けてドロドロになることになります。マグマも、それが冷えて固まった火成岩と同様に多様です。マグマも火成岩と同様に二酸化ケイ素の割合によって分類されていて、二酸化ケイ素が45-52パーセント含まれているのは玄武岩質マグマで、52-63パーセントは安山岩質マグマ、63-70パーセントはデサイト質マグマ、70-77パーセントは流紋岩質マグマと呼ばれます。

マグマは化学組成だけでなく、温度・粘性・密度などもマグマの種類よってことなり、一般的には玄武岩質になるほどマグマは高温(1100℃以上)で、粘性は低く密度は大きくなるようです。二酸化ケイ素の量が増えると、温度が低く高粘性になり密度は低下します。流紋岩質マグマでは温度は800℃前後が普通です。

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