今回は、熱力学で学習する反応熱のキルヒホッフの法則について解説していきます。

反応熱のキルヒホッフの法則は、熱力学と化学反応を結びつける法則です。この法則を用いることで、任意の温度での反応熱を計算によって求めることができるようになるぞ。ぜひ、この機会に反応熱のキルヒホッフの法則を理解してくれ。記事の途中で、聞きなれない専門用語や単語が多く登場するかもしれないが、そのときは言葉の意味や定義をしっかりと考えてみてほしい。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

反応熱のキルヒホッフの法則とは?

image by PIXTA / 53976527

キルヒホッフの法則と聞くと、電磁気学で学ぶ、電流と電圧の関係を表したものを思い浮かべる方が多いかと思います。この法則は、グスタフ・ロベルト・キルヒホッフがまとめたものです。そして、彼は電磁気学についての法則に加えて、放射エネルギーについての法則反応熱についての法則を発表しています。

今回扱うのは、反応熱のキルヒホッフの法則ですよ。反応熱のキルヒホッフの法則は、反応熱と絶対温度および圧力を結びつけるものです。この法則を用いることで、任意の温度での反応熱を計算によって求められます。以下では、反応熱のキルヒホッフの法則の導出方法を中心に解説していきますね。

反応熱と反応エンタルピー

image by PIXTA / 58652412

まず、反応熱のキルヒホッフの法則について学ぶ前に、反応熱について復習しましょう。そして、同時に理解しておくべきである反応エンタルピーという概念も説明します。

反応熱とは、何らかの化学反応により、放出または吸収される熱のことです。反応熱を数値で表す場合は、単位物質量あたりの発熱量で表現することが多く、単位はJ/molとすることが多いですよ。また、発熱反応では正の値、吸収反応では負の値で表します。

反応エンタルピーは、何らかの化学反応がおきた前後での、エンタルピーの変化量のことです。一般に、定圧条件下での反応熱と反応エンタルピーの絶対値は一致します。符号に関しては、逆になりますよ。つまり、発熱反応では負の値、吸収反応では正の値となるのです。

反応熱のキルヒホッフの法則を導出しよう!

\次のページで「エンタルピーと定圧モル比熱の関係を数式で表す」を解説!/

エンタルピーと定圧モル比熱の関係を数式で表す

エンタルピーと定圧モル比熱の関係を数式で表す

image by Study-Z編集部

ある温度T1[K]における物質Aの単位物質量あたりのエンタルピーをHA(T1)[J/mol]とします。また、物質Aの定圧モル比熱をCAp[J/K mol]としますね。このとき、温度T2[K] (T2>T1)における物質Aの単位物質量あたりのエンタルピーHA(T2)[J/mol]はどのようにして求めることができるでしょうか。

定圧モル比熱とは、1molの物質を定圧条件下で、1Kだけ温度上昇させるために必要なエネルギーを指します。したがって、T1[K]の物質AをT2[K]まで温度上昇させるためには、CAp(T2-T1)[J/mol]のエネルギーが必要となるのです。このエネルギーによって、物質Aのエンタルピーは変化します。

ゆえに、HA(T2)= HA(T1)+ CAp(T2-T1)という式を用いることで、HA(T2)[J/mol]を求めることができますね。この式は、エンタルピーと定圧モル比熱の関係を表したもので、反応熱のキルヒホッフの法則を導くときに大きな役割を果たしくれます。

任意の温度での反応熱を求める

任意の温度での反応熱を求める

image by Study-Z編集部

aA+bB→cC+dDという化学反応について考えてみましょう。この化学反応のT1[K]における反応エンタルピーをH(T1)[J/mol]T2[K]における反応エンタルピーをH(T2)[J/mol]とします。

突然ですが、次のような反応を考えてみましょう。まず、T2[K]の物質Aと物質BをT1[K]に冷却してから、化学反応によりT1[K]の物質Cと物質Dを作り出します。そして、T1[K]の物質Cと物質DをT2[K]になるまで加熱するのです。この反応における反応エンタルピーは、-(CAp+CBp)(T2-T1)+ H(T1)+ (CCp+CDp)(T2-T1)= H(T1)+ (T2-T1){(CCp+CDp)-(CAp+CBp)}となります。

ヘスの法則によれば、上記で述べた反応における反応エンタルピーは、T2[K]におけるaA+bB→cC+dDという化学反応の反応エンタルピーに等しいです。したがって、H(T2)= H(T1)+ (T2-T1){(CCp+CDp)-(CAp+CBp)}という式が得られます。これを用いることで任意の温度での反応エンタルピーを求めることができますね

反応熱のキルヒホッフの法則

反応熱のキルヒホッフの法則

image by Study-Z編集部

先ほど、H(T2)= H(T1)+ (T2-T1){(CCp+CDp)-(CAp+CBp)}という式を導きましたね。ですが、厳密に考えると、この式は間違っています。なぜなら、各物質の定圧モル比熱の値(CAp, CBp, CCp, CDp)を「定数」として考えていたからです。実際には、定圧モル比熱は温度の関数となっています。

この問題は、積分を用いて式を記述することで解決できますよ。積分を用いて、H(T2)を表すと、H(T2) = H(T1)+∫[T1→T2]{(CCp+CDp)-(CAp+CBp)}dTとなります。これを、反応熱のキルヒホッフの法則と呼んでいるのです。また、反応熱のキルヒホッフの法則は、∂H(T)/∂T=(CCp +CDp) -(CAp +CBp)と表記することもでき、これを微分形のキルヒホッフの法則と呼びます。

\次のページで「反応熱のキルヒホッフの法則を導出することの意義」を解説!/

反応熱のキルヒホッフの法則を導出することの意義

反応熱のキルヒホッフの法則を自分の手で導出することを通して、エンタルピーと定圧モル比熱の関係性、反応熱および反応エンタルピーの概念、ヘスの法則などを理解することができます。これらをすべて理解できると、熱力学を用いて化学反応について考察できるようになりますよ。

熱力学と化学反応を結びつけることができると、化学反応に関する知識の幅が大きく広がります。これらを応用すると、可逆反応と不可逆反応の区別を計算によって行うことも可能になるのです。反応熱のキルヒホッフの法則は、このような学問分野の入門レベルに位置しています。

" /> 熱力学における反応熱のキルヒホッフの法則を理系学生ライターが徹底わかりやすく解説 – Study-Z
熱力学物理理科

熱力学における反応熱のキルヒホッフの法則を理系学生ライターが徹底わかりやすく解説

今回は、熱力学で学習する反応熱のキルヒホッフの法則について解説していきます。

反応熱のキルヒホッフの法則は、熱力学と化学反応を結びつける法則です。この法則を用いることで、任意の温度での反応熱を計算によって求めることができるようになるぞ。ぜひ、この機会に反応熱のキルヒホッフの法則を理解してくれ。記事の途中で、聞きなれない専門用語や単語が多く登場するかもしれないが、そのときは言葉の意味や定義をしっかりと考えてみてほしい。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。中学時代に、DIYで太陽光発電装置を製作するために、独学で電気工事士第二種という資格を取得してしまうほど熱い思いがある。

反応熱のキルヒホッフの法則とは?

image by PIXTA / 53976527

キルヒホッフの法則と聞くと、電磁気学で学ぶ、電流と電圧の関係を表したものを思い浮かべる方が多いかと思います。この法則は、グスタフ・ロベルト・キルヒホッフがまとめたものです。そして、彼は電磁気学についての法則に加えて、放射エネルギーについての法則反応熱についての法則を発表しています。

今回扱うのは、反応熱のキルヒホッフの法則ですよ。反応熱のキルヒホッフの法則は、反応熱と絶対温度および圧力を結びつけるものです。この法則を用いることで、任意の温度での反応熱を計算によって求められます。以下では、反応熱のキルヒホッフの法則の導出方法を中心に解説していきますね。

反応熱と反応エンタルピー

image by PIXTA / 58652412

まず、反応熱のキルヒホッフの法則について学ぶ前に、反応熱について復習しましょう。そして、同時に理解しておくべきである反応エンタルピーという概念も説明します。

反応熱とは、何らかの化学反応により、放出または吸収される熱のことです。反応熱を数値で表す場合は、単位物質量あたりの発熱量で表現することが多く、単位はJ/molとすることが多いですよ。また、発熱反応では正の値、吸収反応では負の値で表します。

反応エンタルピーは、何らかの化学反応がおきた前後での、エンタルピーの変化量のことです。一般に、定圧条件下での反応熱と反応エンタルピーの絶対値は一致します。符号に関しては、逆になりますよ。つまり、発熱反応では負の値、吸収反応では正の値となるのです。

反応熱のキルヒホッフの法則を導出しよう!

\次のページで「エンタルピーと定圧モル比熱の関係を数式で表す」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: