
物理の勉強をしたことがあれば、必ず「エネルギー保存の法則」という言葉を耳にしたことがあるはずです。この法則を用いることで、物理現象を直感的にとらえることができる上に、自分が求めようとしている解へと至る計算の量を少なくすることができる。ぜひともこの記事を読んで、「エネルギー保存の法則」を理解してくれ。
塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長
現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。
エネルギー保存の法則とは?

物理学や化学を学んでいると、様々なエネルギー保存の法則を見たことがあると思います。例として、熱力学第一法則や力学的エネルギー保存則などが挙げられますよね。これらのエネルギー保存則は、いずれも、「ある仕切られた領域(系)への影響が全くない場合、その内部でいかなる反応が生じても、領域内(系内)のエネルギーの総和は変化しない」というものです。
言い換えれば、「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということですよね。このことからエネルギー保存の法則は、エネルギー不滅の法則とも呼ばれています。エネルギー保存の法則は非常に理解しやすい式で表現できることから、様々な分野で積極的に用いられる法則です。
多種多様なエネルギー

エネルギー保存の法則について詳しく考える前に、エネルギーそのものについて復習しましょう。エネルギーは、運動エネルギー、ポテンシャルエネルギー、熱エネルギー、光エネルギーなどに分類されますよね。これは、相互に変換することができます。そして、これらのエネルギーは、同じ次元の単位を持つのです。エネルギーの単位として、J(ジュール)、cal(カロリー)、eV(電子ボルト、エレクトロンボルト)などが広く用いられていますよ。
実は、質量もエネルギーとして扱うことができます。これは、アインシュタインが発表した「質量とエネルギーの等価性」に基づいており、核反応の説明などで用いられますよ。
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代表的なエネルギー保存の法則を紹介!
ここからは代表的なエネルギー保存則である「熱力学第一法則」と「力学的エネルギー保存則」について詳しく解説していきます。
熱力学第一法則

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熱力学第一法則は、力学的な仕事と熱力学的な内部エネルギーについての保存則ですよ。それは、ある区切られた領域(系)に加えた熱量Qと加えた仕事Wは、内部エネルギーの増加ΔUをもたらすというものです。これを数式で表現すると、ΔU=Q+Wとなります。
これは、外部から熱量Qや仕事Wを加えない限り、内部エネルギーΔUは増減しないことを表していますね。言い換えれば、孤立している領域(孤立系)では、エネルギーの生成も消滅もあり得ないということです。この法則により、第一種永久機関の存在が否定されています。
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また、熱力学第一法則は、様々な工学分野などで使用されています。特にエンジンやタービンなどの熱機関の開発研究には必要不可欠。エンジンやタービンは自動車、飛行機、鉄道などに組み込まれているものです。このことから、熱力学第一法則が非常に重要な法則であることが理解できるかと思います。
力学的エネルギー保存則

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力学的エネルギー保存則は、力学的な運動エネルギーとポテンシャルエネルギーについての保存則ですね。それは、物体に保存力以外の力が作用しない場合、物体の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの総和は常に一定であるというものです。
運動エネルギーとは、物体の質量mと速度vに依存するエネルギーで、mv2/2で与えられます。一方、ポテンシャルエネルギーは、重力、弾性力、電場、磁場などに起因するものです。ポテンシャルエネルギーは、位置エネルギーと呼ばれることもありますよ。
力学的エネルギー保存則は、ニュートンによる運動方程式に基づいており、古典力学を学ぶと、頻繁に目にします。この法則を用いると、ジェットコースターの速度の増減と高度の関係性を説明できますよ。
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エネルギー保存の法則が成り立たないことがある?

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ここまで、エネルギー保存則の意味するところは「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということだと学びました。つまり、エネルギー保存則が成立しないことはないはずなのです。
しかしながら、先ほど紹介した力学的エネルギー保存則は、物体の速さが光速(光の速さ)に匹敵するほど速くなると、成立しません。その理由は、物体の速さが大きくなればなるほど、物体の質量は大きくなるからなのです。言い換えれば、エネルギーの一部が質量に変換されたということになります。
このことは、アインシュタインが発見したことの1つです。アインシュタインは、ニュートンの運動方程式の間違いを指摘し、補正された新しい運動方程式を発表しました。物体の速さが光速に匹敵するほど速くなる場面には、加速器を用いて高速電子を作り出すときなどが挙げられますよ。
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