今回は様々な「エネルギー保存の法則」について解説していきます。

物理の勉強をしたことがあれば、必ず「エネルギー保存の法則」という言葉を耳にしたことがあるはずです。この法則を用いることで、物理現象を直感的にとらえることができる上に、自分が求めようとしている解へと至る計算の量を少なくすることができる。ぜひともこの記事を読んで、「エネルギー保存の法則」を理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

エネルギー保存の法則とは?

image by PIXTA / 60123089

物理学や化学を学んでいると、様々なエネルギー保存の法則を見たことがあると思います。例として、熱力学第一法則力学的エネルギー保存則などが挙げられますよね。これらのエネルギー保存則は、いずれも、「ある仕切られた領域(系)への影響が全くない場合、その内部でいかなる反応が生じても、領域内(系内)のエネルギーの総和は変化しない」というものです。

言い換えれば、「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということですよね。このことからエネルギー保存の法則は、エネルギー不滅の法則とも呼ばれています。エネルギー保存の法則は非常に理解しやすい式で表現できることから、様々な分野で積極的に用いられる法則です。

多種多様なエネルギー

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エネルギー保存の法則について詳しく考える前に、エネルギーそのものについて復習しましょう。エネルギーは、運動エネルギーポテンシャルエネルギー熱エネルギー光エネルギーなどに分類されますよね。これは、相互に変換することができます。そして、これらのエネルギーは、同じ次元の単位を持つのです。エネルギーの単位として、J(ジュール)cal(カロリー)eV(電子ボルト、エレクトロンボルト)などが広く用いられていますよ。

実は、質量もエネルギーとして扱うことができます。これは、アインシュタインが発表した「質量とエネルギーの等価性」に基づいており、核反応の説明などで用いられますよ。

代表的なエネルギー保存の法則を紹介!

ここからは代表的なエネルギー保存則である「熱力学第一法則」と「力学的エネルギー保存則」について詳しく解説していきます。

熱力学第一法則

熱力学第一法則

image by Study-Z編集部

熱力学第一法則は、力学的な仕事と熱力学的な内部エネルギーについての保存則ですよ。それは、ある区切られた領域(系)に加えた熱量Qと加えた仕事Wは、内部エネルギーの増加ΔUをもたらすというものです。これを数式で表現すると、ΔU=Q+Wとなります。

これは、外部から熱量Qや仕事Wを加えない限り、内部エネルギーΔUは増減しないことを表していますね。言い換えれば、孤立している領域(孤立系)では、エネルギーの生成も消滅もあり得ないということです。この法則により、第一種永久機関の存在が否定されています。

また、熱力学第一法則は、様々な工学分野などで使用されています。特にエンジンやタービンなどの熱機関の開発研究には必要不可欠。エンジンやタービンは自動車、飛行機、鉄道などに組み込まれているものです。このことから、熱力学第一法則が非常に重要な法則であることが理解できるかと思います。

力学的エネルギー保存則

力学的エネルギー保存則

image by Study-Z編集部

力学的エネルギー保存則は、力学的な運動エネルギーとポテンシャルエネルギーについての保存則ですね。それは、物体に保存力以外の力が作用しない場合、物体の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの総和は常に一定であるというものです。

運動エネルギーとは、物体の質量mと速度vに依存するエネルギーで、mv2/2で与えられます。一方、ポテンシャルエネルギーは、重力、弾性力、電場、磁場などに起因するものです。ポテンシャルエネルギーは、位置エネルギーと呼ばれることもありますよ。

力学的エネルギー保存則は、ニュートンによる運動方程式に基づいており、古典力学を学ぶと、頻繁に目にします。この法則を用いると、ジェットコースターの速度の増減と高度の関係性を説明できますよ。

エネルギー保存の法則が成り立たないことがある?

エネルギー保存の法則が成り立たないことがある?

image by Study-Z編集部

ここまで、エネルギー保存則の意味するところは「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということだと学びました。つまり、エネルギー保存則が成立しないことはないはずなのです。

しかしながら、先ほど紹介した力学的エネルギー保存則は、物体の速さが光速(光の速さ)に匹敵するほど速くなると、成立しません。その理由は、物体の速さが大きくなればなるほど、物体の質量は大きくなるからなのです。言い換えれば、エネルギーの一部が質量に変換されたということになります。

このことは、アインシュタインが発見したことの1つです。アインシュタインは、ニュートンの運動方程式の間違いを指摘し、補正された新しい運動方程式を発表しました。物体の速さが光速に匹敵するほど速くなる場面には、加速器を用いて高速電子を作り出すときなどが挙げられますよ。

\次のページで「エネルギー保存の法則はなぜ便利なのか?」を解説!/

エネルギー保存の法則はなぜ便利なのか?

エネルギー保存の法則は、先ほども述べたように、様々な分野で積極的に使用されます。その理由は、最初の状態がわかっていれば、途中過程を考えずに結果が求められることが多いからです。大まかなことがわかればよいシミュレーションの実施、数理モデルの作成などを行う際、エネルギー保存の法則は非常に便利だということですね。

物体の自由落下

例えば、物体の自由落下について考えてみましょう。10mの高さから球体を落下させたとき、地面に衝突する直前の球体の速さを求める場合、力学的エネルギー保存則を使うと、たった1つの式で答えを導くことができます。一方、運動方程式と積分を用いて答えを導くためには、複数の式が必要となりますよね。このような例からも、エネルギー保存の法則がいかに便利なものであるかがわかります。

ですが、途中過程を知りたい場合は、エネルギー保存の法則のみを使用して答えを出すことは困難になってしまうのです。特に、時間の次元を扱うときには、エネルギー保存の法則はほとんど役に立ちません適切なタイミングで、エネルギー保存の法則を使うことを意識しましょう。

エネルギー保存の法則を使いこなそう!

物理学において、エネルギー保存の法則を上手に使うことで、計算がシンプルになるという事例は数多くあります。中学校や高校で学習する物理学の計算はもちろんのこと、大学で学習するものや研究レベルでも、このことは当てはまりますよ。また、コンピュータで使用するシミュレーションソフトウェアを開発する場合も、エネルギー保存の法則を利用することで、処理速度を向上させることができるのです。

ぜひ、このことを頭の片隅に置いて、物理学の勉強を進めてみてください。そして、積極的にエネルギー保存の法則を使うようにしてみましょう!

" /> 簡単にわかる「エネルギー保存の法則」!熱力学第一法則・力学的エネルギー保存則も理系学生ライターがわかりやすく解説 – Study-Z
熱力学物理理科

簡単にわかる「エネルギー保存の法則」!熱力学第一法則・力学的エネルギー保存則も理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は様々な「エネルギー保存の法則」について解説していきます。

物理の勉強をしたことがあれば、必ず「エネルギー保存の法則」という言葉を耳にしたことがあるはずです。この法則を用いることで、物理現象を直感的にとらえることができる上に、自分が求めようとしている解へと至る計算の量を少なくすることができる。ぜひともこの記事を読んで、「エネルギー保存の法則」を理解してくれ。

塾講師として物理を高校生に教えていた経験もある通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻しており、物理学も幅広く勉強している。塾講師として物理を高校生に教えていた経験から、物理の学習において、つまずきやすい点や勘違いしやすい点も熟知している。

エネルギー保存の法則とは?

image by PIXTA / 60123089

物理学や化学を学んでいると、様々なエネルギー保存の法則を見たことがあると思います。例として、熱力学第一法則力学的エネルギー保存則などが挙げられますよね。これらのエネルギー保存則は、いずれも、「ある仕切られた領域(系)への影響が全くない場合、その内部でいかなる反応が生じても、領域内(系内)のエネルギーの総和は変化しない」というものです。

言い換えれば、「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということですよね。このことからエネルギー保存の法則は、エネルギー不滅の法則とも呼ばれています。エネルギー保存の法則は非常に理解しやすい式で表現できることから、様々な分野で積極的に用いられる法則です。

多種多様なエネルギー

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エネルギー保存の法則について詳しく考える前に、エネルギーそのものについて復習しましょう。エネルギーは、運動エネルギーポテンシャルエネルギー熱エネルギー光エネルギーなどに分類されますよね。これは、相互に変換することができます。そして、これらのエネルギーは、同じ次元の単位を持つのです。エネルギーの単位として、J(ジュール)cal(カロリー)eV(電子ボルト、エレクトロンボルト)などが広く用いられていますよ。

実は、質量もエネルギーとして扱うことができます。これは、アインシュタインが発表した「質量とエネルギーの等価性」に基づいており、核反応の説明などで用いられますよ。

代表的なエネルギー保存の法則を紹介!

ここからは代表的なエネルギー保存則である「熱力学第一法則」と「力学的エネルギー保存則」について詳しく解説していきます。

熱力学第一法則

熱力学第一法則

image by Study-Z編集部

熱力学第一法則は、力学的な仕事と熱力学的な内部エネルギーについての保存則ですよ。それは、ある区切られた領域(系)に加えた熱量Qと加えた仕事Wは、内部エネルギーの増加ΔUをもたらすというものです。これを数式で表現すると、ΔU=Q+Wとなります。

これは、外部から熱量Qや仕事Wを加えない限り、内部エネルギーΔUは増減しないことを表していますね。言い換えれば、孤立している領域(孤立系)では、エネルギーの生成も消滅もあり得ないということです。この法則により、第一種永久機関の存在が否定されています。

また、熱力学第一法則は、様々な工学分野などで使用されています。特にエンジンやタービンなどの熱機関の開発研究には必要不可欠。エンジンやタービンは自動車、飛行機、鉄道などに組み込まれているものです。このことから、熱力学第一法則が非常に重要な法則であることが理解できるかと思います。

力学的エネルギー保存則

力学的エネルギー保存則

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力学的エネルギー保存則は、力学的な運動エネルギーとポテンシャルエネルギーについての保存則ですね。それは、物体に保存力以外の力が作用しない場合、物体の運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの総和は常に一定であるというものです。

運動エネルギーとは、物体の質量mと速度vに依存するエネルギーで、mv2/2で与えられます。一方、ポテンシャルエネルギーは、重力、弾性力、電場、磁場などに起因するものです。ポテンシャルエネルギーは、位置エネルギーと呼ばれることもありますよ。

力学的エネルギー保存則は、ニュートンによる運動方程式に基づいており、古典力学を学ぶと、頻繁に目にします。この法則を用いると、ジェットコースターの速度の増減と高度の関係性を説明できますよ。

エネルギー保存の法則が成り立たないことがある?

エネルギー保存の法則が成り立たないことがある?

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ここまで、エネルギー保存則の意味するところは「エネルギーが消えることや、無から生じることは絶対にない」ということだと学びました。つまり、エネルギー保存則が成立しないことはないはずなのです。

しかしながら、先ほど紹介した力学的エネルギー保存則は、物体の速さが光速(光の速さ)に匹敵するほど速くなると、成立しません。その理由は、物体の速さが大きくなればなるほど、物体の質量は大きくなるからなのです。言い換えれば、エネルギーの一部が質量に変換されたということになります。

このことは、アインシュタインが発見したことの1つです。アインシュタインは、ニュートンの運動方程式の間違いを指摘し、補正された新しい運動方程式を発表しました。物体の速さが光速に匹敵するほど速くなる場面には、加速器を用いて高速電子を作り出すときなどが挙げられますよ。

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