今回は「DC-DCコンバータ」の仕組みを解説します。

「DC-DCコンバータ」は、直流の電圧を変換する装置で、多くの家庭用電気製品に搭載されている。また、再生可能エネルギーを上手に使うためのスマートグリッドと呼ばれる技術を実現するためにも、必要不可欠な装置です。ぜひとも、この記事を読んで、「DC-DCコンバータ」についての知識を身に着けてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

DC-DCコンバータとは

image by PIXTA / 7405712

DC-DCコンバータは、直流の電圧を上げる、もしくは下げることができる変換装置です。近年、DC-DCコンバータは、非常に多くの家庭用電気製品に内蔵されるようになりました。その他に、太陽光発電システム電気自動車などにも、DC-DCコンバータが利用されています。逆に、DC-DCコンバータを搭載していない機器を見つけるほうが難しいくらいです。

この記事では、回路について理解しやすい「降圧チョッパ」、「昇圧チョッパ」という2種類のDC-DCコンバータを解説します。そして、DC-DCコンバータが普及した理由について、考えてみましょう。

DC-DCコンバータの仕組み

#1 降圧チョッパの仕組み

降圧チョッパの仕組み

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降圧チョッパは、抵抗負荷にかかる電圧を、直流電源の電圧よりも小さくすることができる回路です。降圧チョッパは、上に示した回路図のように、直流電源ダイオードコイルスイッチ抵抗負荷から構成されます。

では、回路がどのように動作するのかを考えてみましょう。スイッチをオンにすると、直流電源→スイッチ→コイル→抵抗負荷→直流電源の順に電流が流れますね。このとき、コイルには電流が蓄えられます。次に、スイッチをオフにすると、コイルに蓄えられた電流がコイル→抵抗負荷→ダイオード→コイルの順に流れるのです。

ゆえに、スイッチのオンとオフを繰り返すと、抵抗負荷には絶えず電流が流れ続けることがわかりますね。このとき、抵抗負荷にかかる電圧は、鋸刃のように小さなギザギザを含む波形となります。そして、抵抗負荷にかかる電圧の時間平均値は、直流電源の電圧よりも小さくなるのです。

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#2 昇圧チョッパの仕組み

昇圧チョッパの仕組み

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昇圧チョッパは、抵抗負荷にかかる電圧が、直流電源の電圧よりも大きくなる回路です。降圧チョッパと同様に、直流電源ダイオードコイルスイッチ抵抗負荷から構成されますが、各部品の接続方法が異なりますよ

回路の動作原理について考えていましょう。スイッチのオンまたはオフに関わらず、電流は常に、直流電源→コイル→ダイオード→抵抗負荷→直流電源の順に流れていますスイッチをオンにすると、コイルに電流が蓄えられますね。その後、スイッチをオフにすると、コイルに蓄えられた電流が直流電源→コイル→ダイオード→抵抗負荷→直流電源の順に流れます

つまり、スイッチがオフになるとき、抵抗負荷に流れる電流は、直流電源による電流とコイルによる電流が合成されたものになるのです。スイッチのオンとオフを繰り返すと、抵抗負荷にかかる電圧は、鋸刃のように小さなギザギザを含む波形となりますね。また、抵抗負荷にかかる電圧の時間平均値は、直流電源の電圧よりも大きくなります

#3 電圧の平滑化

以上が、DC-DCコンバータの仕組みの説明になります。ですが、紹介した降圧チョッパと昇圧チョッパには1つ問題がありますよね。それは、出力電圧の波形が、鋸刃のように小さなギザギザを含む波形になることです。これでは、精密機器などでDC-DCコンバータを使うことができませんよね。

そこで、DC-DCコンバータに平滑化回路を追加します。平滑化回路は、言葉の通り、ギザギザの波形を真っ直ぐな波形に均す回路です。最も簡単な平滑化回路は、抵抗負荷にコンデンサーを並列接続するというものですよ。コンデンサーは電気を充電および放電することができるので、電圧の平滑化が可能なのです。

スイッチのオンおよびオフはどのようにして行うのか?

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先ほど、降圧チョッパと昇圧チョッパの仕組みを学びました。これらの回路では、どちらも、スイッチのオンとオフを絶えず繰り返す必要があります。当然のことながら、人間の手で、永遠とスイッチの操作を行うことはできません。そのため、自動でスイッチの操作を行うシステムを用意する必要がありますね

多くのDC-DCコンバータでは、パルス発振回路トランジスタの一種であるMOSFETを利用して、自動でスイッチの操作を行います。これらは半導体部品であり、これらの部品が実用化されたことで、高速スイッチングが可能になったのです。大電流に耐えうるMOSFETの開発には、特に時間がかかったそうですよ。

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DC-DCコンバータが普及した理由

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DC-DCコンバータが広く利用されるようになった理由は主に2つあります。1つ目の理由は、従来の方法と比べると小型軽量化が容易であることです。かつて、交流100Vを低い電圧の直流に変換するACアダプターは、非常に重い変圧用トランンスが内蔵されていました。ですが、DC-DCコンバータの登場により、非常に重い変圧用トランンスの代わりに、小型で軽い高周波トランスが使用されるようになったのですよ。

2つ目の理由は、変換時の高効率化が可能であることです。従来の方法では、直流電源の電圧を変換する際に、三端子レギュレータという部品が使用されていました。この部品は、変換時に大量のエネルギーをジュール熱として損失してしまうため、省エネ性能が低いと考えられていましたよ。このようなことから、DC-DCコンバータの利用は、省エネ効果が非常に高いと言えますね。

DC-DCコンバータの活躍

DC-DCコンバータは、インバータや整流回路と並ぶ、重要な電力制御技術の1つです。これらの技術は、至る所で用いられており、人々の生活を陰ながら支えています。再生可能エネルギーを上手に使うためにも、DC-DCコンバータはなくてはならない存在です。

このように、DC-DCコンバータは数えきれないほどの役割を果たしています。まさに、縁の下の力持ちの回路なのですね。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

「DC-DCコンバータ」の仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「DC-DCコンバータ」の仕組みを解説します。

「DC-DCコンバータ」は、直流の電圧を変換する装置で、多くの家庭用電気製品に搭載されている。また、再生可能エネルギーを上手に使うためのスマートグリッドと呼ばれる技術を実現するためにも、必要不可欠な装置です。ぜひとも、この記事を読んで、「DC-DCコンバータ」についての知識を身に着けてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

DC-DCコンバータとは

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DC-DCコンバータは、直流の電圧を上げる、もしくは下げることができる変換装置です。近年、DC-DCコンバータは、非常に多くの家庭用電気製品に内蔵されるようになりました。その他に、太陽光発電システム電気自動車などにも、DC-DCコンバータが利用されています。逆に、DC-DCコンバータを搭載していない機器を見つけるほうが難しいくらいです。

この記事では、回路について理解しやすい「降圧チョッパ」、「昇圧チョッパ」という2種類のDC-DCコンバータを解説します。そして、DC-DCコンバータが普及した理由について、考えてみましょう。

DC-DCコンバータの仕組み

#1 降圧チョッパの仕組み

降圧チョッパの仕組み

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降圧チョッパは、抵抗負荷にかかる電圧を、直流電源の電圧よりも小さくすることができる回路です。降圧チョッパは、上に示した回路図のように、直流電源ダイオードコイルスイッチ抵抗負荷から構成されます。

では、回路がどのように動作するのかを考えてみましょう。スイッチをオンにすると、直流電源→スイッチ→コイル→抵抗負荷→直流電源の順に電流が流れますね。このとき、コイルには電流が蓄えられます。次に、スイッチをオフにすると、コイルに蓄えられた電流がコイル→抵抗負荷→ダイオード→コイルの順に流れるのです。

ゆえに、スイッチのオンとオフを繰り返すと、抵抗負荷には絶えず電流が流れ続けることがわかりますね。このとき、抵抗負荷にかかる電圧は、鋸刃のように小さなギザギザを含む波形となります。そして、抵抗負荷にかかる電圧の時間平均値は、直流電源の電圧よりも小さくなるのです。

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