今回はこれからのエネルギーを担う「バイオ燃料」について説明します。バイオ燃料とは生物由来の燃料のことでバイオマス燃料ともいう。バイオエタノールやバイオガスなどが分類されている。

現在のエネルギーのメインである石炭や石油といった化石燃料は使い続ければいずれ枯渇してしまう。また、化石燃料を使えば二酸化炭素が排出され続け、地球温暖化がどんどん進む。そのため、人の手で生産することができ、二酸化炭素の発生を抑えることができる新たなエネルギーの開発が必要となっている。

そこで今回は大学時代の研究テーマがバイオ燃料だったというたかはしふみかが張り切って説明します。

ライター/たかはし ふみか

大学時代はガソリンの代替エネルギーとなるバイオマスを原料としたバイオ燃料についての研究をしていたリケジョ。研究試料に農家から分けてもらった出荷できないトウモロコシを食べたのもよい思い出。

再生可能なエネルギー、バイオ燃料の原料「バイオマス」

再生可能なエネルギー、バイオ燃料の原料「バイオマス」

image by Study-Z編集部

冒頭で述べたようにバイオ燃料(バイオマス燃料)とはバイオマスを原料とした燃料のことです。バイオマスとは生物を由来とした再生産可能な資源の事で「バイオマス・ニッポン総合戦略」(日本政府が2002年に定め2006年に見直し)によると「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」とされています。バイオマスを原料としたバイオ燃料のメリットは「生産可能」で「二酸化炭素の量を削減できる」ということです。

現在メインである石油や石炭、ガソリンといった化石燃料はできるまでに膨大な時間がかかり、使い続ければいずれ枯渇してしまいます。そして使えばどんどん二酸化炭素が排出されてしまうのです。

一方、バイオ燃料は例えば稲わらや木材、さらには家畜の糞尿など酪農や林業で出た廃棄物を使って作ることができます。そのため短いスパンでの生産が可能です。さらに燃料を使用することで発生した二酸化炭素は光合成によって植物に取り入れられ、再びバイオマスとして燃料にすることができます。

このように炭素が二酸化炭素⇒糖(セルローズやデンプンなど)⇒バイオ燃料⇒二酸化炭素と循環することをカーボンニュートラルというのです。

バイオ燃料の種類

バイオ燃料は大きく「バイオエタノール」「バイオディーゼル」「バイオジェット燃料」「バイオガス」の4種類に分類することができます。そこで、それぞれの燃料について特徴や利用方法について確認していきましょう。

バイオエタノール

バイオエタノール

image by Study-Z編集部

バイオエタノールはバイオマスから作ったエタノールのことです。バイオエタノールは通常のアルコールと同様に、糖分を発酵させて作ります。

バイオエタノールはガソリンと混合し、ガソリンの使用量を減らすことができるのです。このバイオエタノールの混合量によってE5(バイオエタノールが5%)、E10(バイオエタノールが10%)と呼ばれています。また最近はバイオエタノール暖炉という煙や燃えカスが出ず煙突がいらず気軽に設置できる設備が人気です。

バイオエタノールの生産は2000年くらいから急増し、そのほとんどがアメリカとブラジルによるものとなっています。それに比べて日本はまだまだ遅れを取っていて、国内でも少し使われていますがほとんど輸入に頼っているのが現状です。

バイオディーゼル

image by PIXTA / 12497589

バイオディーゼルはその頭文字からBDFとも呼ばれています。菜種湯や大豆油など油脂類を原材料としていることがBDFの特徴です。

バイオディーゼルは軽油と比べて硫黄酸化物の排出を削減することができます。国によって廃食用油(日本)、菜種油(ヨーロッパ)、大豆油(アメリカ、ブラジル)などを原料に製造、利用が進められているのです。

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バイオジェット燃料

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航空機のジェット燃料の代替えエネルギーとして注目されているのがバイオジェット燃料です。2030年以降に商用化を目指して研究が進んでいます。

最近ではミドリムシ廃食油などを原料にした研究が行われているそうです。食用油を原料にできることから「ゴミを燃料にできる」と期待が集まっています。

バイオガス

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他のバイオ燃料が液体のであるのに対し、気体であるのがバイオガスです。家畜の排泄物、汚泥、汚水などの有機廃棄物をメタン菌などの微生物によってメタン発酵させて製造しています。メタンや二酸化炭素が主成分で、燃焼させて電力を得ることができるのです。

エネルギー問題もごみ問題も解決できる有効な方法として注目を集めています。

バイオ燃料の課題

バイオ燃料の課題

image by Study-Z編集部

バイオ燃料といえば「食糧との競合とコスト」が大きな課題となっています。

例えばバイオエタノールの発酵は酵母が行いますが、人間が木材や紙を消化できないように酵母も木材などを直接発酵することが困難です。木材や紙の主成分はグルコースがいくつも連なったセルロース。これを発酵しやすいよう前処理、糖化する必要があります。このプロセスにコストがかかってしまうのです。また、できたエタノールも蒸留して濃度を高めるなどの工程も必要となります。

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この課題をクリアする簡単な方法があります。それは発酵しやすい作物を使うことです。人間もトウモロコシの皮や茎は食べられませんが身は食べて消化できますね。酵母も同じくトウモロコシの身の方が発酵しやすいのです。

しかし、食糧問題がある中で食糧からエネルギーを製造することが適切とはいえません。そのため、セルロースを効率よく燃料にするための効率的な前処理と糖化を行う方法の開発が課題となっています。

次の世代を担う、新たなエネルギー「バイオ燃料」

バイオ燃料は二酸化炭素の排出を抑えられる、環境にやさしいエネルギーです。生産できること(=枯渇しない)も大きなメリットとなっています。

バイオ燃料には「バイオエタノール」「バイオディーゼル」「バイオジェット燃料」「バイオガス」がありますが、効率よい製造と利用のためにはまだまだ課題がたくさんあるのが現状です。しかしそれは逆に言うとこれから発展する研究しがいのあるテーマといえるのではないでしょうか?

環境問題に興味がある人はぜひ、研究テーマの候補に入れてくださいね。

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理科生態系生物

3分で簡単「バイオ燃料」元家庭教師がわかりやすく解説

今回はこれからのエネルギーを担う「バイオ燃料」について説明します。バイオ燃料とは生物由来の燃料のことでバイオマス燃料ともいう。バイオエタノールやバイオガスなどが分類されている。

現在のエネルギーのメインである石炭や石油といった化石燃料は使い続ければいずれ枯渇してしまう。また、化石燃料を使えば二酸化炭素が排出され続け、地球温暖化がどんどん進む。そのため、人の手で生産することができ、二酸化炭素の発生を抑えることができる新たなエネルギーの開発が必要となっている。

そこで今回は大学時代の研究テーマがバイオ燃料だったというたかはしふみかが張り切って説明します。

ライター/たかはし ふみか

大学時代はガソリンの代替エネルギーとなるバイオマスを原料としたバイオ燃料についての研究をしていたリケジョ。研究試料に農家から分けてもらった出荷できないトウモロコシを食べたのもよい思い出。

再生可能なエネルギー、バイオ燃料の原料「バイオマス」

再生可能なエネルギー、バイオ燃料の原料「バイオマス」

image by Study-Z編集部

冒頭で述べたようにバイオ燃料(バイオマス燃料)とはバイオマスを原料とした燃料のことです。バイオマスとは生物を由来とした再生産可能な資源の事で「バイオマス・ニッポン総合戦略」(日本政府が2002年に定め2006年に見直し)によると「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」とされています。バイオマスを原料としたバイオ燃料のメリットは「生産可能」で「二酸化炭素の量を削減できる」ということです。

現在メインである石油や石炭、ガソリンといった化石燃料はできるまでに膨大な時間がかかり、使い続ければいずれ枯渇してしまいます。そして使えばどんどん二酸化炭素が排出されてしまうのです。

一方、バイオ燃料は例えば稲わらや木材、さらには家畜の糞尿など酪農や林業で出た廃棄物を使って作ることができます。そのため短いスパンでの生産が可能です。さらに燃料を使用することで発生した二酸化炭素は光合成によって植物に取り入れられ、再びバイオマスとして燃料にすることができます。

このように炭素が二酸化炭素⇒糖(セルローズやデンプンなど)⇒バイオ燃料⇒二酸化炭素と循環することをカーボンニュートラルというのです。

バイオ燃料の種類

バイオ燃料は大きく「バイオエタノール」「バイオディーゼル」「バイオジェット燃料」「バイオガス」の4種類に分類することができます。そこで、それぞれの燃料について特徴や利用方法について確認していきましょう。

バイオエタノール

バイオエタノール

image by Study-Z編集部

バイオエタノールはバイオマスから作ったエタノールのことです。バイオエタノールは通常のアルコールと同様に、糖分を発酵させて作ります。

バイオエタノールはガソリンと混合し、ガソリンの使用量を減らすことができるのです。このバイオエタノールの混合量によってE5(バイオエタノールが5%)、E10(バイオエタノールが10%)と呼ばれています。また最近はバイオエタノール暖炉という煙や燃えカスが出ず煙突がいらず気軽に設置できる設備が人気です。

バイオエタノールの生産は2000年くらいから急増し、そのほとんどがアメリカとブラジルによるものとなっています。それに比べて日本はまだまだ遅れを取っていて、国内でも少し使われていますがほとんど輸入に頼っているのが現状です。

バイオディーゼル

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バイオディーゼルはその頭文字からBDFとも呼ばれています。菜種湯や大豆油など油脂類を原材料としていることがBDFの特徴です。

バイオディーゼルは軽油と比べて硫黄酸化物の排出を削減することができます。国によって廃食用油(日本)、菜種油(ヨーロッパ)、大豆油(アメリカ、ブラジル)などを原料に製造、利用が進められているのです。

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