今回のテーマは遺伝を学ぶうえで欠かせない、「メンデルの法則」です。

親子には同じような特徴が現れる。例えば血液型、髪の生え際、耳垢のタイプなどです。しかし親子で必ず特徴が一致するわけではなく、祖父母と同じ特徴が現れる場合もある。また、同じ親から生まれた兄弟なら特徴が一致するかといえば、そうでもない。兄弟同士でも特徴の出方は異なる。

この親子と遺伝の関係はヒトだけのものではなく、動物でも植物でも観察されているんです。ハエやエンドウ豆で観察されているし、さらにハツカネズミやかわいいハムスターでもみることができる。そこで今回は「メンデルの法則」についてハムスター飼いのリケジョ、たかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

ゴールデンハムスター飼いの化学系リケジョ。生物は学んでいないが、遺伝に興味があり本などで勉強しながらハムスターと遺伝についても調べた。

メンデルの法則とは?

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メンデルの法則とは、1865年にグレゴール・ヨハン・メンデル(オーストリア)が発表した法則で「優劣の法則」「分離の法則」「独立の法則」の3つがあります。

メンデルはエンドウ豆を使った交雑実験(別の種や品種のオスとメスを交配させること、異種交配ともいう)を繰り返し行い、その結果からこの法則を見つけました。メンデルが生きている時代には認められなかったものの、その後ド・フリース、コレンス、チェルマクらが再発見し評価されました。

1.優劣の法則

優劣の法則」とは対照的な性質のうち、優性にある遺伝子の方の特徴が現れることです。この対照的な形質を「対立形質」といい、その情報を持った遺伝子を「対立遺伝子」といいます。例えば一重と二重、背が高い低いといったものです。

ここでいう優劣とは2種類以上の遺伝子のうちどの特徴が出るのか?ということであり、現れる方が優性、現れない方が劣性という意味になります。決してどちらの遺伝子を受け継いだ方が優れてるという意味ではありません。例えば後で説明する血液ではO型よりもA型やB型の方が優性です。しかし、もちろんO型よりA型の方が優れている、という意味にはなりませんね。

image by Study-Z編集部

例えばお父さんから劣性であるO型の遺伝子、お母さんから優性であるA型の遺伝子を受け継いだ場合、その子供はA型となります。ではさらにその子どもの血液型は何型になるのでしょうか?

第一世代の子どもはO型とA型の遺伝子を持ったA型です。そのため、第二世代には第一世代からOの遺伝子を受け継ぐ場合とAの遺伝子を受け継ぐ場合があります。兄弟で血液型が異なることがあるのは、同じ親からでもどちらの遺伝子を受け継ぐかわからないからなのですね。

2.分離の法則

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続いて「分離の法則」です。今度はエンドウ豆の例で確認していきましょう。エンドウ豆には対立形質がたくさんあり、例を挙げると以下のようなものになります。

・種子の形(丸、しわ)
・種皮の色(有色、無色)
・成熟したさやの形(ふくれ、くびれ)
・未熟なさやの色(緑、黄色)

そこで未熟なさやの色を例に考えていきましょう。親世代(P)がそれぞれ緑色のみ、黄色のみの遺伝子を持っているとします。ちなみに同じ対立遺伝子を持つ個体をホモ接合体異なる対立遺伝子を持つ個体をヘテロ接合体というのです。

すると子世代(雑種第一代:F1)の組み合わせは必ず緑と黄色のヘテロな組み合わせの遺伝子を持つことになります。そして緑と黄色では緑色の方が優性であるため、雑種第一代の未熟なさやは緑となるのです。

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ここで注意したいのが、さらに次の雑種第二代(F2)のさやが緑と黄色になる確率。

雑種第二代には緑になる可能性も黄色になる可能性もあります。2色のうちどちらか、と言えば1/2の確立に感じるかもしれません。しかし、実際には優性である緑になる可能性の方が高くなっています

緑と黄色のホモ接合体の場合はそれぞれ緑、黄色のさやとなり、一方、ヘテロ接合体の場合は緑が優性のためさやの色は緑となるのです。そして図からもわかるように雑種第二世代は3:1の割合で緑と黄色となります。

3.独立の法則

ヒトの血液型と耳垢、エンドウ豆の種子の形(丸、しわ)と種皮の色(有色、無色)など対立形質の遺伝子が複数関わる場合があります。

今までは「さやの色が緑黄か色か」だけだったのが今度は「緑で丸」、「緑でしわ」、「黄色で丸」、「黄色でしわ」と遺伝する特徴のバリエーションが増えるのです。組み合わせが増えただけで考えることはかわらず、親世代からどの遺伝子をもらうか?を考えていきます。

ヒトの体とメンデルの法則

ヒトの体に現れるメンデルの法則に沿った特徴はたくさんあります。

血液型

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最初の例に出したように血液型はメンデルの法則によって決まるのです。

O型の遺伝子が劣性であるのに対し、A型とB型の遺伝子が優性となります。そしてA型とB型の両方の遺伝子を持つ人はAB型となるのです。そしてA型やB型は(A,A)(B,B)なのか(A,O)(B,O)なのかによってさらに子世代の血液型のパターンが決まります。

\次のページで「あなたはどっち?耳垢」を解説!/

あなたはどっち?耳垢

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耳垢は大まかにべたべたとした「湿型」乾燥した粉っぽい「乾型」に分けることができます。日本人は乾型の方が多いと言われていますが、世界中を見ると国や地域などによってどっちのタイプが多いかは異なるのです。

湿型と乾型では湿型の方が優性となっています。つまり父親と母親からそれぞれ湿型、乾型それぞれの遺伝子を受け継いだ場合、その人は湿型となるのです。しかしそうするとなぜ日本人は乾型の方が多いのでしょうか。それは特徴として現れているのが湿型であっても乾型の遺伝子を持っている人が多くいるからです。そのため、乾型は劣性でありながら遺伝子を持っている人が多く、実際に乾型の耳垢の方が多くいるのですね。

髪の生え際と眉

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髪の毛の生え際にも遺伝が関係あります。富士額は優性遺伝であり、両親のどちらも富士額でなければ富士額の子が生まれてくることがありません。両親が富士額ならその特徴が出ているはずですね。しかし、髪の生え際は見た目のため判断があやふやだったり、パターンも多いようで血液型ほどはっきりとは親子関係の特定につながらないようです。

またに関しても濃いのが優性薄いのが劣性となっています。

ヒト以外にも現れるメンデルの法則

メンデルがエンドウ豆で実験してきたことからわかるように、ヒト以外の生物がメンデルの法則にのっとって遺伝しています。教科書や実験に登場してくることもあるでしょう。代表的な生物をご紹介します、

・ハツカネズミ、ハムスター
・ショウジョウバエ
・カイコガ
・スイートピー

\次のページで「親から子へ受け継がれる特徴、メンデルの法則」を解説!/

親から子へ受け継がれる特徴、メンデルの法則

メンデルの法則には「優劣の法則」「分離の法則」「独立の法則」の3つがあります。それぞれの法則の内容を覚えてください。

親子の顔を見比べると同じものもあれば、親にはなく祖父母になる特徴が急に現れる場合もあります(隔世遺伝)。それは優性の遺伝子に隠れているだけで親が劣性の遺伝子も持っているからです。ヒトの体でも他の生物でもいろいろな優性遺伝、劣性遺伝があるので調べてみると面白いですね。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「メンデルの法則」!優劣・分離・独立3つの遺伝法則を元家庭教師がわかりやすく解説

今回のテーマは遺伝を学ぶうえで欠かせない、「メンデルの法則」です。

親子には同じような特徴が現れる。例えば血液型、髪の生え際、耳垢のタイプなどです。しかし親子で必ず特徴が一致するわけではなく、祖父母と同じ特徴が現れる場合もある。また、同じ親から生まれた兄弟なら特徴が一致するかといえば、そうでもない。兄弟同士でも特徴の出方は異なる。

この親子と遺伝の関係はヒトだけのものではなく、動物でも植物でも観察されているんです。ハエやエンドウ豆で観察されているし、さらにハツカネズミやかわいいハムスターでもみることができる。そこで今回は「メンデルの法則」についてハムスター飼いのリケジョ、たかはしふみかが説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

ゴールデンハムスター飼いの化学系リケジョ。生物は学んでいないが、遺伝に興味があり本などで勉強しながらハムスターと遺伝についても調べた。

メンデルの法則とは?

image by PIXTA / 29458873

メンデルの法則とは、1865年にグレゴール・ヨハン・メンデル(オーストリア)が発表した法則で「優劣の法則」「分離の法則」「独立の法則」の3つがあります。

メンデルはエンドウ豆を使った交雑実験(別の種や品種のオスとメスを交配させること、異種交配ともいう)を繰り返し行い、その結果からこの法則を見つけました。メンデルが生きている時代には認められなかったものの、その後ド・フリース、コレンス、チェルマクらが再発見し評価されました。

1.優劣の法則

優劣の法則」とは対照的な性質のうち、優性にある遺伝子の方の特徴が現れることです。この対照的な形質を「対立形質」といい、その情報を持った遺伝子を「対立遺伝子」といいます。例えば一重と二重、背が高い低いといったものです。

ここでいう優劣とは2種類以上の遺伝子のうちどの特徴が出るのか?ということであり、現れる方が優性、現れない方が劣性という意味になります。決してどちらの遺伝子を受け継いだ方が優れてるという意味ではありません。例えば後で説明する血液ではO型よりもA型やB型の方が優性です。しかし、もちろんO型よりA型の方が優れている、という意味にはなりませんね。

image by Study-Z編集部

例えばお父さんから劣性であるO型の遺伝子、お母さんから優性であるA型の遺伝子を受け継いだ場合、その子供はA型となります。ではさらにその子どもの血液型は何型になるのでしょうか?

第一世代の子どもはO型とA型の遺伝子を持ったA型です。そのため、第二世代には第一世代からOの遺伝子を受け継ぐ場合とAの遺伝子を受け継ぐ場合があります。兄弟で血液型が異なることがあるのは、同じ親からでもどちらの遺伝子を受け継ぐかわからないからなのですね。

2.分離の法則

image by PIXTA / 61204769

続いて「分離の法則」です。今度はエンドウ豆の例で確認していきましょう。エンドウ豆には対立形質がたくさんあり、例を挙げると以下のようなものになります。

・種子の形(丸、しわ)
・種皮の色(有色、無色)
・成熟したさやの形(ふくれ、くびれ)
・未熟なさやの色(緑、黄色)

そこで未熟なさやの色を例に考えていきましょう。親世代(P)がそれぞれ緑色のみ、黄色のみの遺伝子を持っているとします。ちなみに同じ対立遺伝子を持つ個体をホモ接合体異なる対立遺伝子を持つ個体をヘテロ接合体というのです。

すると子世代(雑種第一代:F1)の組み合わせは必ず緑と黄色のヘテロな組み合わせの遺伝子を持つことになります。そして緑と黄色では緑色の方が優性であるため、雑種第一代の未熟なさやは緑となるのです。

image by Study-Z編集部

ここで注意したいのが、さらに次の雑種第二代(F2)のさやが緑と黄色になる確率。

雑種第二代には緑になる可能性も黄色になる可能性もあります。2色のうちどちらか、と言えば1/2の確立に感じるかもしれません。しかし、実際には優性である緑になる可能性の方が高くなっています

緑と黄色のホモ接合体の場合はそれぞれ緑、黄色のさやとなり、一方、ヘテロ接合体の場合は緑が優性のためさやの色は緑となるのです。そして図からもわかるように雑種第二世代は3:1の割合で緑と黄色となります。

3.独立の法則

ヒトの血液型と耳垢、エンドウ豆の種子の形(丸、しわ)と種皮の色(有色、無色)など対立形質の遺伝子が複数関わる場合があります。

今までは「さやの色が緑黄か色か」だけだったのが今度は「緑で丸」、「緑でしわ」、「黄色で丸」、「黄色でしわ」と遺伝する特徴のバリエーションが増えるのです。組み合わせが増えただけで考えることはかわらず、親世代からどの遺伝子をもらうか?を考えていきます。

ヒトの体とメンデルの法則

ヒトの体に現れるメンデルの法則に沿った特徴はたくさんあります。

血液型

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最初の例に出したように血液型はメンデルの法則によって決まるのです。

O型の遺伝子が劣性であるのに対し、A型とB型の遺伝子が優性となります。そしてA型とB型の両方の遺伝子を持つ人はAB型となるのです。そしてA型やB型は(A,A)(B,B)なのか(A,O)(B,O)なのかによってさらに子世代の血液型のパターンが決まります。

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