今回のテーマは「水溶液」です。水溶液という言葉は皆知っているでしょう。では水溶液がどんなものか正しく定義できるか?

水溶液と言うんだから水に溶けていれば水溶液かと言えばそうではない。水溶液には大切な要素がある。1透明であること、2濃さが均一であること、3沈殿しないこと、です。

水溶液はその性質はもちろん、濃度や密度といった計算問題が頻出です。水溶液に関する計算は試験の時にはもちろん、実際に実験するときにできないと困る。そこで化学好きの実験下手、たかはしふみかが水溶液について説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校では化学部に所属。顧問の先生に「薬学部はやめておけ」と言われたミス不器用。それでも化学の道に進みたいと工学部の化学系に進学し大学院修了後は化学工場に勤務と自分の好きな道を突き進んだ才能はないけど根性はあるリケジョ。

水溶液とはどんなもの?

水溶液とはどんなもの?

image by Study-Z編集部

水溶液とは「物質が水に完全に溶け、均一な状態となっている」溶液のことです。ではそもそも溶液とはなんでしょうか?

溶液とは溶媒(物質を溶かす液体)に溶質(溶媒に溶ける物質)を完全に溶かして全体の濃さが均一となっている液体のことを言います。そして溶液のうち、溶媒が水のものを水溶液というのです。溶媒に溶質が溶ける現象は溶解と呼ばれています。

水溶液の特徴として、次の事を覚えてください。

・透明
水溶液は色がついていたとしても、向こうが透けて見える透明な状態になっています。

 ・濃さが均一
水溶液では溶質が完全に解けて均一になっています。そのため、どこをすくって濃度を測ったとしても同じ濃度になっているのです。

 ・放置しても沈殿しない
例えば泥水を振って置いておくといずれ下に土がたまってきます。一方、水溶液は上で説明したように溶質が完全に解けて均一になっているため、時間がたっても沈殿することはありません。

身近な水溶液の例

image by PIXTA / 48821245

キッチンにあるものから水溶液を考えてみましょう。
例えば食塩水は溶質が食塩(塩化ナトリウム)の水溶液で、炭酸水は二酸化炭素が溶けた水溶液です。塩化ナトリウム水溶液のように分子やイオンが溶けた水溶液は「真の溶液」と呼ばれています。一方、牛乳はコロイド溶液という種類に分類されるのです。コロイド溶液とは、1nm~100nmの大きさのコロイド粒子が均一に散らばって(分散して)いる溶液のことをいいます。

コロイドについてはこちらの記事をどうぞ。

理科室で水溶液を探すと

・塩酸 (溶質:塩化水素)
・アンモニア水 (溶質:アンモニア)
・BTB溶液 (溶質:ブロモチモールブルー(BTB))

があります。BTB溶液とは中学校の理科でおなじみの、アルカリ性、中性、酸性でそれぞれ青、緑、黄色を示す指示薬ですね。

ところで、勘違いする人が多いのですが塩酸は塩化水素が溶けた水溶液であり、塩酸という物質ではありません。塩酸をはじめ水溶液は混合物に分類されるので、注意してください。

\次のページで「どれだけ溶ける?溶解度」を解説!/

どれだけ溶ける?溶解度

塩化ナトリウムのような固体だけでなく、気体の二酸化炭素が溶けても水溶液になります。しかし固体と気体では水溶液に大きな違いがあるのです。

溶質が固体の場合、一般的に温度が高いほどよく溶けます。これは料理に塩や砂糖を溶かした経験でイメージできる人もいるでしょう。(例外として水酸化カルシウムがあります。)しかし、気体は逆に温度が低い方がよく溶けるのです。

このような温度と溶質の関係を溶解度と言います。

固体の溶解度

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溶媒100gに溶けることができる溶質の最大の量を固体の溶解度(g)と言います。そして溶解度の限界まで溶けた溶液を飽和溶液、飽和しておらずまだ溶ける余裕がある溶液を不飽和溶液と言うのです。ところで飽和溶液では結晶の溶解と、溶けた粒子が結晶に戻ることが同時に起こっています。この飽和した時の見かけ上溶解が停止した状態を溶解平衡と言うのです。

この溶解度と温度の関係を利用した物質の精製方法があります。それが再結晶です。

温度の上昇で溶解度が大きく変化する物質の飽和溶液を冷却、又は蒸発させると溶けきれなくなった結晶が析出します。溶解させた溶質を析出させることで不純物を取り除く方法を再結晶というのです。また、別の溶媒を加えることでも結晶を析出させることができます。

気体の溶解度

一方、気体の溶解度は1atmで1mlの溶媒に溶ける溶質の量を0℃、1atmの状態のときの体積で表します。この量は温度が高くなるほど小さくなるのです。固体とは逆ですね。これは、気体は温度が高いほど激しく運動し、溶液中から逃げてしまうからです。そして溶解度が小さい気体では温度が一定の場合、溶解する気体の物質量(質量)は圧力に比例します。一方、体積は温度が一定ならば圧力に関係なく一定となるのです。

温度と溶媒の量が一定の時、溶解度があまり大きくない気体に対して成立する、

体に溶ける気体の物質量(質量)は圧力に比例し、体積は圧力に関係なく一定」という法則をヘンリーの法則といいます。

ところで気体に関する法則は計算問題としてよく出てくるので、これを機に確認してみてくださいね。

\次のページで「水への溶けやすさのポイントは「極性」」を解説!/

水への溶けやすさのポイントは「極性」

何でも水に溶けて水溶液になるのかといえばそうではありません。水には溶けず、有機溶媒に溶ける溶質もあるのです。水溶液の溶質になれるかどうかのポイントは極性にあります。極性とはひとつの分子やイオン結晶の中に生まれた電荷の偏りの事です。

溶けやすい溶質とはどんな溶質か。これは溶媒によって異なります。
水は極性の強い溶媒です。そのため、同じく極性の強い溶質をよく溶かします。逆に無極性分子の溶媒は無極性の溶質を溶かすのです。

極性についてはこちらの記事に詳しく書いています。

水溶液は化学実験の基礎!計算問題にも要注意

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水溶液の濃度計算は化学実験や試験の問題を解くときに欠かせません。ちょっとしたケアレスミスでも、計算を間違えてしまうと誤った条件で実験することになってしまいます。そのまま実験してしまうと取り返しのつかないことになってしまうこともあるので必ず正しく計算し、確認するようにしてください。

密度の計算

密度とは単位体積当たりの質量のことです。同じ1㎝3でも綿と鉄では重さが全然違いますね。同じ体積の場合、密度が小さいほど軽くなります。通常水は1g/wp_3です。そのため密度が1より大きいと水に沈み、小さいと水に浮きます。

密度を求める公式は 密度=質量÷体積 です。

溶液の調整の時に使う公式なので覚えておきましょう。また密度はその液体固有の特徴として、水より小さいか大きいかだけでも覚えておくと便利です。

濃度の計算

濃度とは溶液にどれくらいの割合の溶質が含まれているのか?を%で示したものです。

質量パーセント濃度(%)=溶質の質量÷溶液の質量×100=溶質の質量÷(溶質の質量+溶媒の質量)×100

分母は溶媒の量ではなく溶液の量(溶質の質量+溶媒の質量)であることに注意してください。

ちょっと実験、紫キャベツを使った自家製指示薬

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水溶液に関する実験と言えば酸性、アルカリ性を確認する指示薬の実験でしょう。そこで、自由研究にもぴったりなお家でできる簡単な指示薬の実験をご紹介ます。

用意するのは次のものです。

紫キャベツ
小鍋
ガラス容器
pHを調べたい液体(レモン汁、せっけん水など)

以下の手順で実験できます。

\次のページで「水溶液の要素と計算方法は確実に」を解説!/

1 紫キャベツをきざむ
2 小鍋で煮込む
3 ざるを使ってキャベツを取り除く
4 冷めた液体をガラス容器に入れ、pHを確認したいものを少量入れる

この実験は紫キャベツに含まれるアントシアニンという色素を用いています。アントシアニンがpHによって違う色となるのです。紫キャベツ以外でもアントシアニンが含まれたハーブティーなどで、この実験をすることができます。

水溶液の要素と計算方法は確実に

まずは水溶液の3つの要素(透明、均一、沈殿しない)を覚えてください。併せてコロイド溶液についても確認すると、混乱しないで済みます。

そして密度、濃度の計算を確実にできるようにしましょう。特に濃度の分母が溶液全体の質量であることに注意して下さい。また、再結晶も有機合成を行ううえで必要な技術と知識です。化学系に進みたい人は簡単な基礎的な内容ほどよく使うので、しっかりと理解してくださいね。

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化学物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単「水溶液」!元家庭教師がわかりやすく解説

今回のテーマは「水溶液」です。水溶液という言葉は皆知っているでしょう。では水溶液がどんなものか正しく定義できるか?

水溶液と言うんだから水に溶けていれば水溶液かと言えばそうではない。水溶液には大切な要素がある。1透明であること、2濃さが均一であること、3沈殿しないこと、です。

水溶液はその性質はもちろん、濃度や密度といった計算問題が頻出です。水溶液に関する計算は試験の時にはもちろん、実際に実験するときにできないと困る。そこで化学好きの実験下手、たかはしふみかが水溶液について説明していきます。

ライター/たかはし ふみか

高校では化学部に所属。顧問の先生に「薬学部はやめておけ」と言われたミス不器用。それでも化学の道に進みたいと工学部の化学系に進学し大学院修了後は化学工場に勤務と自分の好きな道を突き進んだ才能はないけど根性はあるリケジョ。

水溶液とはどんなもの?

水溶液とはどんなもの?

image by Study-Z編集部

水溶液とは「物質が水に完全に溶け、均一な状態となっている」溶液のことです。ではそもそも溶液とはなんでしょうか?

溶液とは溶媒(物質を溶かす液体)に溶質(溶媒に溶ける物質)を完全に溶かして全体の濃さが均一となっている液体のことを言います。そして溶液のうち、溶媒が水のものを水溶液というのです。溶媒に溶質が溶ける現象は溶解と呼ばれています。

水溶液の特徴として、次の事を覚えてください。

・透明
水溶液は色がついていたとしても、向こうが透けて見える透明な状態になっています。

 ・濃さが均一
水溶液では溶質が完全に解けて均一になっています。そのため、どこをすくって濃度を測ったとしても同じ濃度になっているのです。

 ・放置しても沈殿しない
例えば泥水を振って置いておくといずれ下に土がたまってきます。一方、水溶液は上で説明したように溶質が完全に解けて均一になっているため、時間がたっても沈殿することはありません。

身近な水溶液の例

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キッチンにあるものから水溶液を考えてみましょう。
例えば食塩水は溶質が食塩(塩化ナトリウム)の水溶液で、炭酸水は二酸化炭素が溶けた水溶液です。塩化ナトリウム水溶液のように分子やイオンが溶けた水溶液は「真の溶液」と呼ばれています。一方、牛乳はコロイド溶液という種類に分類されるのです。コロイド溶液とは、1nm~100nmの大きさのコロイド粒子が均一に散らばって(分散して)いる溶液のことをいいます。

コロイドについてはこちらの記事をどうぞ。

理科室で水溶液を探すと

・塩酸 (溶質:塩化水素)
・アンモニア水 (溶質:アンモニア)
・BTB溶液 (溶質:ブロモチモールブルー(BTB))

があります。BTB溶液とは中学校の理科でおなじみの、アルカリ性、中性、酸性でそれぞれ青、緑、黄色を示す指示薬ですね。

ところで、勘違いする人が多いのですが塩酸は塩化水素が溶けた水溶液であり、塩酸という物質ではありません。塩酸をはじめ水溶液は混合物に分類されるので、注意してください。

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