今回は「倍数比例の法則」について詳しく勉強していこう。

今回も化学の基礎知識となる法則に関する内容です。前回解説した「定比例の法則」との違いを意識して考えてみよう。

それじゃあ化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「定比例の法則」をおさらい

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まずは前回解説した「定比例の法則」について復習しておきましょう。

「定比例の法則」を考える際には、以下の2つに注意しましょう。

まずはここで関わってくるのは同じ物質について述べた法則であるということです。生成方法や採取・捕集方法に関わらず、水は H2O 、二酸化炭素は CO2 ですよね。このように、同一物質であるということが1つ目のポイントです。

2つ目に、当該物質を構成する各元素の質量比を考える必要があります。これは分子量計算の知識が必要になりますので、苦手な人はまずそこから復習しましょう。水の生成(2H2 + O2 → 2H2O)や金属の酸化(2Cu + O2 → 2CuO)のような複数の単体を反応物として1つの化合物を生成する反応では、反応物それぞれの質量比を各元素の質量比として考えられますよ。

2.「倍数比例の法則」とは

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Henry Roscoe (author), William Henry Worthington (engraver), and Joseph Allen (painter) - Frontispiece of John Dalton and the Rise of Modern Chemistry by Henry Roscoe, パブリック・ドメイン, リンクによる

それでは「倍数比例の法則」について、詳しく見ていきましょう。

この法則は1802年、ジョン・ドルトンによって発見され、当時彼の考える「原子論」の有力な証拠であるとされました。分子や原子といった概念がまだ確定していなかった頃のこの発表は、世間に大きな衝撃を与えたことでしょう。

\次のページで「2-1.同じ元素からなる異なる物質」を解説!/

2-1.同じ元素からなる異なる物質

一酸化炭素と二酸化炭素、一酸化窒素と二酸化窒素、水と過酸化水素。これらに共通するのが何がわかりますか?それぞれを化学式で表してみるとわかりますよ。

それでは解説していきましょう。

一酸化炭素 CO と二酸化炭素 CO2 、一酸化窒素 NO と二酸化窒素 NO2 、水 H2O と過酸化水素 H2O

これらは物質を構成する元素は同じですが、それらの数が異なる物質です。同じ元素を持っていても、数が違ってしまえば異なる性質を持つ別の物質ですよね。

今回解説する法則は、このような同じ2つの元素を含む異なる化合物について述べたものです。

2-2.「定比例の法則」で質量比を考える

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一酸化炭素 CO と二酸化炭素 CO2 、一酸化窒素 NO と二酸化窒素 NO2 、水 H2O と過酸化水素 H2O について、それぞれの成分元素における質量比を求めてみましょう。これも前回の復習ですよ。

分子量をそれぞれ H:1 C:12 N:14 O:16 とするとき、下記のようになります。

一酸化炭素 C:O=12:16

二酸化炭素 C:O=12:32

一酸化窒素 N:O=14:16

二酸化窒素 N:O=14:32

水     H:O=2:16

過酸化水素 H:O=2:32

2種類の元素、AとBで構成されたある1つの物質において、質量比は常に A:B で表すことができますね。これが定比例の法則です。 (ここでは下記で比較しやすいように約分はしていませんが、簡単な整数比になるよう約分できますよね。)

2-3.同元素を含む異なる物質について考える

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それではここから考えを広げてみます。

炭素原子の質量を12としたとき、これと結びつく酸素の質量は一酸化炭素では16二酸化炭素では32です。それぞれの場合の酸素の質量は 16:32 、つまり 1:2 という簡単な整数比で表すことができます。同様に一酸化窒素と二酸化窒素では窒素と結びつく酸素の比は 1:2 になり、水と過酸化水素では水素と結びつく酸素の比が 1:2 となりますね。

このように2種類の元素AとBが化合して異なる化合物を作るとき、一定質量のAと化合するBの質量の間には簡単な整数比が成り立つというのが「倍数比例の法則」です。

\次のページで「3.まとめ」を解説!/

3.まとめ

3.まとめ

image by Study-Z編集部

2種類の元素AとBから構成されるある物質(化合物)が10gあるとき、この物質中に含まれる元素AとBの質量比はa:bという整数比で表すことができます。この整数比によって、ある化合物が15gあるとき、元素Aが6gあるとき、などのパターンで問題を解くヒントになるでしょう。このようにある特定の1種類の「物質内での各元素の質量比」をまとめたものが「定比例の法則」です。

一方で2種類の元素AとBから構成される化合物がいくつか存在するとき、ABやAB2 、A2B2 といった様々な構造パターンが考えられるでしょう。このとき、ABに含まれる元素AとBの質量比はa:b、AB2ではa:2b、A2B2では2a:2b(=a:b)となります。(ここまでの考え方は定比例の法則ですね。)

ここからは物質ABとAB2、AB2とA2B2のように異なる化合物について考えてみます。物質ABとAB2において、元素Aが質量aあった場合の元素Bの質量の関係を比で表すと b:2b 、つまり1:2となるのがわかるでしょうか。AB2とA2B2においては 2b:b になるので2:1ですね。このように、一定質量のAと化合する「それぞれの物質におけるBの質量」の質量比をまとめたものが「倍数比例の法則」です。

最後に「定比例の法則」「倍数比例の法則」どちらの考えが必要かをチェックしてみましょう。

(1)銅と酸素を反応させて酸化銅を生成する実験で銅と酸素の質量比を測定する。
(2)一酸化炭素と二酸化炭素の成分元素の質量比を測定する。

\次のページで「「定比例の法則」を異なる化合物について応用」を解説!/

正解は (1)定比例の法則 (2)倍数比例の法則 です。(1)は対象の物質(構成元素ではない)が酸化銅で1種類、(2)は一酸化炭素と二酸化炭素の2種類であることに気付けば簡単な問題ですよね。

「定比例の法則」を異なる化合物について応用

前回の「定比例の法則」とは異なり、今回の「倍数比例の法則」は異なる化合物について述べた法則です。異なる物質とはいえ、今回はある2つの元素から成る化合物が複数あるのが条件でしたね。例えば一酸化炭素 CO や二酸化炭素 CO2 、水 H2O と過酸化水素 H2O2 のように、含まれている元素は同じですが、その数が異なるという場合です。このとき、2つの元素をそれぞれABとすると、異なる化合物の間では一定量のAと化合しているBの質量が簡単な整数比で表されます。これが倍数比例の法則です。

これら2つの法則はどちらも比の計算を使うものですが、表やグラフを用いた計算問題に応用されることが多々あります。法則の内容自体はシンプルなので、あまり考えこまずに具体例を用いて理解できるといいですね。

" /> 異なる化合物における元素の質量比の関係「倍数比例の法則」を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学

異なる化合物における元素の質量比の関係「倍数比例の法則」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「倍数比例の法則」について詳しく勉強していこう。

今回も化学の基礎知識となる法則に関する内容です。前回解説した「定比例の法則」との違いを意識して考えてみよう。

それじゃあ化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.「定比例の法則」をおさらい

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オリジナルのアップロード者は英語版ウィキペディアHappyAppleさん – en.wikipedia からコモンズに移動されました。, パブリック・ドメイン, リンクによる

まずは前回解説した「定比例の法則」について復習しておきましょう。

「定比例の法則」を考える際には、以下の2つに注意しましょう。

まずはここで関わってくるのは同じ物質について述べた法則であるということです。生成方法や採取・捕集方法に関わらず、水は H2O 、二酸化炭素は CO2 ですよね。このように、同一物質であるということが1つ目のポイントです。

2つ目に、当該物質を構成する各元素の質量比を考える必要があります。これは分子量計算の知識が必要になりますので、苦手な人はまずそこから復習しましょう。水の生成(2H2 + O2 → 2H2O)や金属の酸化(2Cu + O2 → 2CuO)のような複数の単体を反応物として1つの化合物を生成する反応では、反応物それぞれの質量比を各元素の質量比として考えられますよ。

2.「倍数比例の法則」とは

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Henry Roscoe (author), William Henry Worthington (engraver), and Joseph Allen (painter) – Frontispiece of John Dalton and the Rise of Modern Chemistry by Henry Roscoe, パブリック・ドメイン, リンクによる

それでは「倍数比例の法則」について、詳しく見ていきましょう。

この法則は1802年、ジョン・ドルトンによって発見され、当時彼の考える「原子論」の有力な証拠であるとされました。分子や原子といった概念がまだ確定していなかった頃のこの発表は、世間に大きな衝撃を与えたことでしょう。

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