今回はシダ植物の特徴についてみていこう。

中学理科で一度は学習する、シダ植物というグループ。植物学を学ぶ上では欠かすことのできない生物ですが、学校の勉強となると苦手意識を持つやつが多い。植物があまり身近でないと、種子植物とシダ植物の違いや、シダ植物特有の生態などがイメージしにくいよな。簡単に、わかりやすくシダ植物について復習しよう。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

シダ植物とは?

シダ植物は、植物の中でも維管束をもち、種子をつくらない植物をまとめて指す言葉です。漢字では「シダ」を「羊歯」と書きます。なぜ「羊の歯」と書くのか、には諸説あるようです。

本記事の最後にご紹介しますが、シダ植物の中には日本人が古くから利用してきたものも少なくありません。日本国内には700種ほど、世界には1万種ほどが存在しているといわれています。

シダ植物の特徴

image by iStockphoto

それでは、シダ植物で押さえておきたい特徴やポイントを3つご紹介しましょう。それぞれの項目についてしっかり押さえれば、種子植物との違いがよくわかるはずです。

#1 繁殖方法

シダ植物と種子植物を分ける最大のポイントは、繁殖方法の違いにあります。普段私たちが目にする花や野菜は種をまいて育てますよね。イモ類のように無性生殖が可能なものもありますが、基本的に種子植物は種子によって個体を増やしていきます。

一方、シダ植物は前述の通り種子をつくることができません。その代わりに、胞子を飛ばすことで繁殖します

そもそも種子というのは、花が咲いた後にできるものです。ここから、種子をつけないシダ植物は花をつけないということがお分かりいただけると思います。

\次のページで「維管束がある」を解説!/

#2 維管束がある

繁殖方法に根本的な違いがある種子植物とシダ植物ですが、維管束をもっているという点は共通です。ただしシダ植物の場合、根っこが吸い上げた水分を輸送する役目がある道管は、仮道管になっています。

道管は、1つ1つの細胞の壁が厚くなり、つながった管のようなものです。それぞれの細胞の間には、管の直径と同じくらいの孔が開いているので、まるでパイプのように見えます。一方、仮道管では材料となる細胞間の壁が少し残っていて、完全には孔が貫通していないという違いがあるんです。

#3 生活環

シダ植物のライフスタイルを表した生活環を見てみましょう。

image by Study-Z編集部

私たちが普段目にする、茎から大きな葉の出たシダ植物の姿は胞子体とよばれる状態のものです。成熟すると胞子体の葉の裏には胞子嚢(ほうしのう)という袋ができ、ここで胞子のもととなる胞子母細胞がつくられます。胞子母細胞は減数分裂という特別な細胞分裂を行うことで胞子になるんです。

胞子嚢が破れて胞子が散布されると、胞子は着地した先で発芽。前葉体とよばれる姿に生長します。よく教科書などでハート型に書かれる、あの状態ですね。

Onoclea sensibilis 3 crop.JPG
Vlmastra - 投稿者自身による作品, CC 表示 3.0, リンクによる

前葉体は別の名を配偶体といいます。配偶体は配偶子、つまり卵細胞や精子をつくるための姿です。卵細胞と精子が1つの前葉体上でできる=雌雄同株のシダ植物もあれば、雌雄がそれぞれ別の前葉体として存在する=雌雄異株の場合もあります。

前葉体上にある卵細胞をつくる器官が造卵器、精子をつくる器官が造精器です。卵細胞が精子を受精することで、胞子体が生じます。このようにして、シダ植物は胞子体と配偶体という2つの姿を繰り返して繁殖していくのです。

代表的なシダ植物

シダ植物に分類される植物はさまざまな分類群をつくっています。近年は分子レベルの分類が進み、昔から考えられていた分類体系が見直されている最中です。そのため、現在知られている分類群や分類体系は今後修正される可能性もあります。

今回は、シダ植物の中でもとくに身近なものや、覚えておきたい種をいくつかご紹介しましょう。

ゼンマイ

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ゼンマイは山菜としておなじみのシダ植物。シダ目ゼンマイ科に分類されています。全国に広く分布していますが、基本的に山地で、しかも水辺に近いところを好む植物です。春先にまだ歯の広がっていない若い芽を摘んみ、乾燥させるなどしたものを煮物にしていただくことができますね。

ワラビ

ワラビもよく知られた山菜のシダ植物ですが、こちらはシダ目コバノイシカグマ科に属しています。やはり春先に出た新芽を摘んで食用にする、昔ながらの山野草です。里山の日当たりの良い斜面などでよく見られます。非常に灰汁(あく)が強く、しっかりとした処理をしないと体に不調をきたしてしまいますので、自分でとってきて食べる場合には注意しましょう。

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イヌワラビ

理科の教科書などでよく名前が出てくるシダ植物にイヌワラビがあります。イヌワラビはウラボシ目イワデンダ科に属し、前述のワラビとは区別される植物です。食用にはできませんが、観賞用として栽培されていますし、自然にもよくはえていますよ。

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スギナ

庭や畑によくはえるスギナもシダ植物の仲間です。日当たりの良いところを好み、乾燥にも強い性質があります。都会でもちょっとした緑地があれば生息しているのをみることができるでしょう。スギナが成長してできる、胞子嚢をつけた構造物がツクシです。胞子の準備ができると、ツクシからは埃が舞い上がるかのように胞子が散布されます。

シノブ

シノブは樹皮の上に着生して育つシダ植物です。日本では古来からその存在が知られ、観賞用としてもよく用いられます。

ノキシノブ

ノキシノブもシノブ同様、樹皮などの表面に着生する種です。時には葉を垂れ下げるようにして育ちます。ゼンマイやワラビのような形とはかけ離れた、細長い葉をしているので驚くかもしれません。ぱっと見ではシダ植物とわかりにくい種ですが、意外と街中でも見られるシダ植物です。

シダ植物の特徴はこれでばっちり!

シダ植物の特徴や覚えるべきポイントを簡単にご紹介しました。シダ植物のような世代交代は、われわれ人間には見られないものなのでイメージしにくいですよね。忘れてしまったら何度も図を見直して、しっかりと覚えるようにしましょう。

" /> シダ植物にはどんな特徴がある?現役講師がさくっとわかりやすく解説! – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

シダ植物にはどんな特徴がある?現役講師がさくっとわかりやすく解説!

今回はシダ植物の特徴についてみていこう。

中学理科で一度は学習する、シダ植物というグループ。植物学を学ぶ上では欠かすことのできない生物ですが、学校の勉強となると苦手意識を持つやつが多い。植物があまり身近でないと、種子植物とシダ植物の違いや、シダ植物特有の生態などがイメージしにくいよな。簡単に、わかりやすくシダ植物について復習しよう。

今回も、大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

シダ植物とは?

シダ植物は、植物の中でも維管束をもち、種子をつくらない植物をまとめて指す言葉です。漢字では「シダ」を「羊歯」と書きます。なぜ「羊の歯」と書くのか、には諸説あるようです。

本記事の最後にご紹介しますが、シダ植物の中には日本人が古くから利用してきたものも少なくありません。日本国内には700種ほど、世界には1万種ほどが存在しているといわれています。

シダ植物の特徴

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それでは、シダ植物で押さえておきたい特徴やポイントを3つご紹介しましょう。それぞれの項目についてしっかり押さえれば、種子植物との違いがよくわかるはずです。

#1 繁殖方法

シダ植物と種子植物を分ける最大のポイントは、繁殖方法の違いにあります。普段私たちが目にする花や野菜は種をまいて育てますよね。イモ類のように無性生殖が可能なものもありますが、基本的に種子植物は種子によって個体を増やしていきます。

一方、シダ植物は前述の通り種子をつくることができません。その代わりに、胞子を飛ばすことで繁殖します

そもそも種子というのは、花が咲いた後にできるものです。ここから、種子をつけないシダ植物は花をつけないということがお分かりいただけると思います。

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