平安時代日本史歴史

平安時代に天台宗を開いた「最澄」を歴史オタクがわかりやすく5分で解説

天台宗総本山「比叡山延暦寺」

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先述した通り、最澄はもともと自分でつくった比叡山の「一乗止観院」を拠点としました。実は「延暦寺」と名前がつくのは最澄の没後なんですよ。

比叡山は天皇のいる平安京から見て北東に位置します。俗にいう「鬼門」ですね。鬼門は古来から鬼が出入りする方角とされてきましたから、比叡山は都の鬼門を守る役割も合わせてもつことになりました。

また、「法華一乗」は「どんな教えも最終的には「法華経」につながっている」という考えですから、もちろん、他の経典だってすべて「法華経」につながるということです。そういう思想から、延暦寺はいろいろな経典を学んで修行する道場になりました。

これがもとで、後年になると延暦寺で学問するうちに違った思想を考え、新たな宗派を立ち上げるものが現れます。それがのちに「鎌倉新仏教」の祖となる法然や日蓮たちでした。

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唐での留学でさまざまなものを学んだ最澄がやっと日本で天台宗を開いたのが40歳。比叡山に一乗止観院を結んだのが22歳だったから、かなり長い道のりだったな。

3.南都六宗との対立

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真言宗の祖「空海」との交流

現在の天台宗は「台密」とも呼ばれ、「密教」を内包した宗派となっていますよね。「密教」とは「秘密教」の略で、修行者に段階を経て少しずつ深遠な教えを公開していくというものです。

反対に、南都六宗は「顕教」と呼ばれ、これは経典を読めばみんな悟りの方法がわかるとした、誰にでも情報公開を行うというスタイルでした。

この当時、唐における密教は青龍寺の恵果(えか)という僧侶がいわゆる本家本元でした。そして、恵果の弟子となっていたのが「空海」だったのです。

一方、最澄が唐で密教を教わったのは順暁(じゅんぎょう)という密教僧でした。最澄は教えてもらった密教が主系ではなく傍系だったことを知ると、帰国して「真言宗」を開いた空海に礼を尽くして灌頂を受けます。密教でいう「灌頂」とは、師匠が入門者の頭に水を注ぎ、正式な弟子や後継者とするための儀式のことです。

その後、最澄は自分の三人の弟子を空海のもとへ派遣して密教を学ばせるのですが、そのうちのひとりが勝手に真言宗に改宗してしまいます。さらには、最澄と空海の間で経典の貸し借りに関する意見の食い違いや、仏教観の相違によって拗れ、ふたりは袂を分かつことになったのです。

そうして、そこで天台宗における密教の編入は一時止まったままになってしまいました。しかし、最澄の没後、弟子の円仁と円珍が唐へ留学して密教を学んで帰ったおかげで、密教を内包する天台宗となったのです。

「具足戒」をなくして受戒を一回で済ませよう

最大の支持者だった桓武天皇の崩御後、最澄は南都六宗に対して天台宗の立場を強めるべく行動を起こします。その筆頭として「具足戒」を捨てると宣言したのでした。

先述した通り、日本で僧尼になるにはふたつの「授戒」を受けなければなりません。これは奈良時代に聖武天皇が病床に伏した際に一挙に3800人もの僧尼が増えてしまったことが原因でした。このなかにはお経も読めない人もいるほどで、僧尼の質が低下してしまったのです。

そこで当時の朝廷は、簡単に僧尼を増やさないように唐から「鑑真」という高僧を招いてふたつめの「具足戒」を実施し、「授戒」の儀式を二段階にしました。

最澄はこの「具足戒」を捨て、一回目の「菩薩戒(大乗戒)」だけで良いとします。それまでの認識だと「菩薩戒」を受けたものは見習いの僧侶か、寺に入らない在家の信者という扱いです。「具足戒」をやめてしまうと、出家した僧侶とそうでない普通の人との区別がなくなるんですね。

そして、「菩薩戒」を行うための場所「大乗戒壇」を比叡山につくる許可を朝廷に求めました。

山ごもりの修行をしよう『山家学生式』

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「具足戒」を捨てることに、もちろん南都六宗は大反対しました。またお経も読めないような、なんちゃって僧侶が出てきたら仏教界の信頼が地に落ちてしまいます。それに、天台宗は今や国家の安穏を祈る年分度者の一員ですから、そのなかに僧侶モドキを入れるわけにはいきません。

すると、南都六宗たちの反論に対して最澄は、年分度者になる僧には、十二年間山にこもって厳しい修行をさせることにしたのです。そうして、最澄が嵯峨天皇に提出したのが『山家学生式』でした。ここには人材育成の方針や、修行の規則が記されています。

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