今回は「気体反応の法則」について詳しく勉強していこう。

化学反応では気体が反応物であったり、生成物になることが多々あるよな。今回学ぶ法則は、気体が関与する反応で成り立つ法則なんです。

これに関係する法則もあわせて化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.気体が関わる方程式

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まずは今回の法則が当てはまる化学反応の一例から見ていきましょう。

水素と酸素の燃焼により水が生じる反応式は最も基本となる化学反応式ですね。生成するのは水(液体)ではなく水蒸気(気体)としてもこの式は成り立ちます。

2H2 + O2 → 2H2O

反対に、水の電気分解を例にしてもいいでしょう。

 2H2O → 2H2 + O2

続いて、窒素と水素の反応によってアンモニアが生じる化学反応式です。

N2 + 3H2 → 2NH3

一酸化炭素と酸素の反応で二酸化炭素になる反応もこれに当てはまりますね。

2CO + O2 → 2CO2

なぜこうなるの?という人は、化学式の作り方に戻って復習しておきましょう!

2.気体反応の法則とは

2.気体反応の法則とは

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「気体反応の法則」はゲイ・リュサックによって発見された2種類以上の気体が関与する化学反応(上記のような反応)において成り立つ化学法則です。2種類以上の気体というのは、それが反応に必要な反応物であるか、反応によって生じた生成物であるかは関係ありません。また、2種類以上の原子から成り立つ化合物であっても、1つの原子から成り立つ単体であっても構いませんよ。

これらの反応における気体の体積は同じ圧力・温度の条件下で簡単な整数比が成り立つというのがこの法則の主旨です。

水素と酸素が反応して水蒸気が生じる反応では、3種類の気体が関与していますね。この場合、[反応物である水素] : [反応物である酸素] : [生成物である水蒸気] = 2 : 1 : 2 という体積比が成立します。これは以下の反応式における係数と一致していることがわかりますね。

2H2 + O2 → 2H2O

また、「気体反応の法則」という名称は原義との整合性が悪い(法則そのものの意味とのズレがある)ことから、現在「反応体積の法則(反応体積比の法則、気体反応体積の法則)」への変更を提案されています。このほうが法則の内容が想像しやすいと思いませんか?

\次のページで「3.合わせて覚えたい2つの説」を解説!/

3.合わせて覚えたい2つの説

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どの分野も、知識は樹形図のように広がっていくものです。1つ1つの法則は独立しているのではなく、様々な考えがつながったり重なったりしていると考えましょう。

気体反応の法則もこれと同様のことが言えます。ジョン・ドルトンによる「原子説」と「気体反応の法則」はどちらも単体で見れば正しいように思われましたが、この2つには矛盾がありました。それをうまく証明してくれたのがアメデオ・アボガドロが発見した「アボガドロの法則」です。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1.ジョン・ドルトンの「原子説」

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ドルトンは原子に関する5つの原則を見つけました。

元素は原子という小さな粒子からできていること。同じ元素の原子は同じ大きさ・質量・性質を持つこと。異なる元素の原子は相対原子質量によってそれぞれを区別できること。化学反応は原子と原子の結合の仕方が変化するものであり、新たに原子が生成したり消滅することはないこと。化合物は異なる原子が一定の割合で結合してできること。

これらに加え、ドルトンは「化合物に含まれる原子の数は基本的に1つずつである」と考えていました。つまり、水はHO、アンモニアはNHのように考えていたのです。これにより水素と酸素の反応の場合 H + O → HO となり、「気体反応の法則」との矛盾が乗じてしまいました。

この矛盾を解決したのが次の法則です。

3-2.アメデオ・アボガドロの「アボガドロの法則」

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「アボガドロの法則」は、同じ圧力・温度・体積のすべての種類の気体には同じ数の分子が含まれるというものです。ここで初めて分子という概念が生まれました。原子によって分子ができ、それは元素の種類や数によって性質が異なるということがわかったのです。

これにより、ドルトンの考えた「化合物に含まれる原子の数は基本的に1つずつである」という説が否定され、その結果「気体反応の法則」との矛盾も解消されることで「気体反応の法則」の証明につながりました。

今では、分子量と同じグラム数の物質(1mol)に含まれる分子の数を表す定数として「アボガドロ定数」が使われています。

\次のページで「4.「シャルルの法則」の生みの親はゲイ・リュサック?」を解説!/

4.「シャルルの法則」の生みの親はゲイ・リュサック?

ボイル=シャルルの法則を覚えていますか?

ボイルの法則:一定の温度条件下では一定量の気体の体積は圧力に反比例する

シャルルの法則:一定の圧力条件下では一定量の気体の体積は温度に比例する

実はこの「シャルルの法則」を見つけたのはゲイ・リュサックでした。しかし実験を重ね、法則を一般化するまでの過程でシャルルの研究結果を用いたため、今のような名前がついています。今でも「ゲイ・リュサックの法則」として書かれている場合もありますが、「ボイル=シャルルの法則」としてそれぞれ覚えるほうが簡単かもしれませんね。

たくさんの法則や説によって解明されてきた科学

「気体反応の法則」は反応物・生成物、化合物・単体を問わず2種類以上の気体が関与する化学反応において成り立つ化学法則です。反応に用いる気体もしくは生成した気体の体積は、同じ圧力・温度の条件下で簡単な整数比が成り立つことを意味しています。

水の電気分解で生じる水素と酸素は、化学反応式からもわかるように 水素:酸素=2:1 の整数比で成り立ちますね。実験を思い返してみるとわかるように、発生した気体の量が2:1になっているのがわかるでしょう。これも「気体反応の法則」を実験的に証明する方法の1つです。ゲイ・リュサックも同様に様々な実験をすることでこの法則を見つけました。そしてそれを理論的にも証明するきっかけになったのが「アボガドロの法則」です。今ある知識はこうして積み上げられてきたものだということがわかりますよね。

法則そのものを丸暗記するのではなく、自分の言葉で説明できるようになると理解度はアップしますよ!

" /> 化学方程式を理解するカギ「気体反応の法則」を元塾講師がわかりやすく解説 – Study-Z
化学物質の状態・構成・変化理科

化学方程式を理解するカギ「気体反応の法則」を元塾講師がわかりやすく解説

今回は「気体反応の法則」について詳しく勉強していこう。

化学反応では気体が反応物であったり、生成物になることが多々あるよな。今回学ぶ法則は、気体が関与する反応で成り立つ法則なんです。

これに関係する法則もあわせて化学に詳しいライターAyumiと一緒に解説していきます。

ライター/Ayumi

理系出身の元塾講師。わかるから面白い、面白いからもっと知りたくなるのが化学!まずは身近な例を使って楽しみながら考えさせることで、多くの生徒を志望校合格に導いた。

1.気体が関わる方程式

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まずは今回の法則が当てはまる化学反応の一例から見ていきましょう。

水素と酸素の燃焼により水が生じる反応式は最も基本となる化学反応式ですね。生成するのは水(液体)ではなく水蒸気(気体)としてもこの式は成り立ちます。

2H2 + O2 → 2H2O

反対に、水の電気分解を例にしてもいいでしょう。

 2H2O → 2H2 + O2

続いて、窒素と水素の反応によってアンモニアが生じる化学反応式です。

N2 + 3H2 → 2NH3

一酸化炭素と酸素の反応で二酸化炭素になる反応もこれに当てはまりますね。

2CO + O2 → 2CO2

なぜこうなるの?という人は、化学式の作り方に戻って復習しておきましょう!

2.気体反応の法則とは

2.気体反応の法則とは

image by Study-Z編集部

「気体反応の法則」はゲイ・リュサックによって発見された2種類以上の気体が関与する化学反応(上記のような反応)において成り立つ化学法則です。2種類以上の気体というのは、それが反応に必要な反応物であるか、反応によって生じた生成物であるかは関係ありません。また、2種類以上の原子から成り立つ化合物であっても、1つの原子から成り立つ単体であっても構いませんよ。

これらの反応における気体の体積は同じ圧力・温度の条件下で簡単な整数比が成り立つというのがこの法則の主旨です。

水素と酸素が反応して水蒸気が生じる反応では、3種類の気体が関与していますね。この場合、[反応物である水素] : [反応物である酸素] : [生成物である水蒸気] = 2 : 1 : 2 という体積比が成立します。これは以下の反応式における係数と一致していることがわかりますね。

2H2 + O2 → 2H2O

また、「気体反応の法則」という名称は原義との整合性が悪い(法則そのものの意味とのズレがある)ことから、現在「反応体積の法則(反応体積比の法則、気体反応体積の法則)」への変更を提案されています。このほうが法則の内容が想像しやすいと思いませんか?

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