
4.熱と温度
前述の通り、熱=ぶつかってくるエネルギー。
ここでは、本題の「熱」と「温度」の違いを解説しましょう。
4-1.分子運動と熱・温度
再度、分子運動の話に戻りましょう。物体を構成する原子や分子が運動している=運動エネルギーを持っています。
ここで、原子1個あたりの運動エネルギーがすべて同じ(例えば1J)としましょう。原子1個の運動エネルギーが同じなら、それが何個つながっていようと触った時にぶつかってくる衝撃は同じ。触った感じの「熱さ」は同じくらいでしょう。
ところが、この原子100粒で構成される物体であれば100J、1000粒なら1000J。原子の数が多い(大きい物体)ほど運動エネルギーの合計は大きくなります。
温度と熱の定義
温度とは、上述で言う原子1個当たりのエネルギーに相当。原子1粒それぞれがこれくらい運動していたらこの温度にしようと決めたのです。直感的な「熱さ」はこれですね。
一方熱は、物体の運動エネルギーの合計。つまり上述でいう、100粒の物体なら100Jや1000粒の物体なら1000J。大きい物体は原子1粒1粒があまり運動していなくても(低温でも)エネルギー合計である「熱」が大きくなり、逆に小さい物体は1粒1粒の運動エネルギーが大きくても(高温でも)「熱」は小さくなりがち。
4-2.温度を測る

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温度計は接触してる物体からぶつかってくるエネルギーで「温度」を判断。温度計と物体が接触できる面積は決まっています。温度計のセンサ部分だけです。温度計で見られるのは飽くまで「平均どれくらいの衝撃を受けているか」であり「物体全体のエネルギー」を見ることは出来ません。
つまり「熱」ではなく「温度」を見ています。
4-3.湯沸かしから考える「熱」の概念

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湯沸かしに必要なエネルギー(熱量)を考えてみましょう。
お湯の温度が高ければ高いほど、またお湯が多ければ多いほど、エネルギーがたくさん必要。
A:20℃の水1Lを60℃に温める場合、
B:20℃の水1Lを80℃にする場合、
C:20℃の水5Lを40℃に温める場合
A~Cで最もエネルギーが多く必要なのはなんとC。「え?一番ぬるいのになんで」。
水の比熱は4.2[J/K/g]なので、
A:熱容量は4.2[J/K/g]x1000g=4200[J/K]。温度差は20℃→60℃で40℃差。温めるのに必要な熱は4200×40=168,000J=168kJ(キロジュール)。
B:4.2x1000x60=252,000J=252kJ(キロジュール)。
C:4.2x5000gx20=420,000J=420kJ(キロジュール)。
温度差は小さいですが、たくさん温めなければならないCのケースが一番エネルギーが多く必要。「熱」は物体の質量に比例します。
合計が熱で平均が温度
熱は分子運動のエネルギー合計。
温度は分子運動エネルギーの平均。
温度が低くても、大きい物体は「熱」をたくさん持っていることになります。
冬にお湯に手をつけて温まりたい時、「熱いお湯を少量」よりも「ぬるいお湯をたくさん」の方が温まりますね。それは「熱」をたくさん持っている証。