今回は無脊椎動物という生物たちについてみていこう。

中学校の理科でも出てくる言葉ですが、意外とあいまいな記憶のままにしているやつも多いんじゃないか?無脊椎動物にはたくさんの種類がある。どんな生物が無脊椎動物にふくまれるのかを紹介してもらおう。

大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

無脊椎動物とは?

無脊椎動物(むせきついどうぶつ)とは、脊椎動物以外の動物をまとめて指す言葉です。非常に大雑把なまとめ方であり、地球上に現生する生物の大半は無脊椎動物にふくまれてしまうほど、とにかくあらゆる生物種が無脊椎動物の仲間といえます。

「無脊椎動物に共通した特徴がある」というよりも、「脊椎動物以外の動物ぜんぶ」というくくり方なので、無脊椎動物について知りたければ、まずは脊椎動物というものについて確認するのが良いでしょう。

脊椎動物とは?

脊椎動物は、簡単に言えば背骨をもっている動物のことを指します。具体的には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の生き物たちのことです。

背骨をもつ生き物は、動物の中でもとくに複雑化したものと考えられています。言い換えれば、背骨を持っていない無脊椎動物は、生物が進化の道のりで脊椎動物に至る前に分岐した生物たちを指しているといえるのです。

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無脊椎動物の仲間たち

無脊椎動物の仲間たち

image by Study-Z編集部

それでは、無脊椎動物にはどんな生物がいるのかを確認していきましょう。代表的な無脊椎動物のグループを挙げていきますので、自分が知っている動物がどこに当てはまるか考えてみてくださいね。

海綿動物

海綿動物(かいめんどうぶつ)の仲間は、数ある無脊椎動物の中でもとくに原始的な生物です。

海綿動物の体は、複数の細胞が緩く結合した単純なもの。内臓などの器官への分化もはっきりしないことから、単細胞生物から多細胞生物に進化した初期の姿のまま生き延びているのではないかと考えられています。

Acarnus erithacus.jpg
SIMoN / MBNMS - http://www.mbnms-simon.org/other/photos/photo_info.php?photoID=2081&search=kw&keywordSearchTerm=sponge&s=0&page=1, パブリック・ドメイン, リンクによる

生息地は主に海の中。浅い海から深い海までさまざまですが、基本的には岩や貝の表面などに固着しています。海綿の体には大きな穴があいており、ここへ微生物や有機物の含まれる海水を吸い込み、ろ過することで食事をしているのです。このように、水中の微生物や有機物をこしとって食べる生物を濾過摂食者(ろかせっしょくしゃ)、またはフィルターフィーダーといいます。

刺胞動物

「刺胞」とよばれる、毒針の入った細胞をもつのが刺胞動物(しほうどうぶつ)です。クラゲやイソギンチャクがイメージしやすいでしょう。ほかにも、ヒドラやサンゴ、ウミエラなどの生物が属しています。

刺胞動物の体は、海綿動物よりは複雑であるものの、やはり動物界全体の中では単純なほうです。

有櫛動物

クラゲによく似た生物にクシクラゲやカブトクラゲというものがいます。これらは「クラゲ」の名をもらってはいるものの、実際にはクラゲと異なるグループに帰属している動物です。

クシクラゲやカブトクラゲの仲間が作るグループが有櫛動物(ゆうしつどうぶつ)といいます。刺胞動物ではないので刺胞はもたず、体の構造にも違いがあるんです。

線形動物

線形動物(せんけいどうぶつ)は、名前の通り線状の細長い体をもつ生物で、線虫ともよばれます。線虫という言葉を知らなくても、カイチュウやギョウチュウ、アニサキスといった生物の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか?そう、線形動物には動物の体に寄生して生きる「寄生虫」が少なくないのです。

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緩歩動物

一時期、クマムシという生物がメディアで盛んに取り上げられました。「高温や低温、高圧などあらゆる過酷な条件でも生き延びることができる“最強の生物”」として話題になったので、ご存知の方もいるかもしれません。クマムシの仲間は緩歩動物(かんぽどうぶつ)とよばれています。

SEM image of Milnesium tardigradum in active state - journal.pone.0045682.g001-2.png
Schokraie E, Warnken U, Hotz-Wagenblatt A, Grohme MA, Hengherr S, et al. (2012) - Schokraie E, Warnken U, Hotz-Wagenblatt A, Grohme MA, Hengherr S, et al. (2012) Comparative proteome analysis of Milnesium tardigradum in early embryonic state versus adults in active and anhydrobiotic state. PLoS ONE 7(9): e45682. doi:10.1371/journal.pone.0045682, CC 表示 2.5, リンクによる

4対8本の脚をもつ姿はクマのように見え、ゆっくりと歩くことから名前が付けられました。緩歩動物のサイズはとても小さく、顕微鏡でなければ見えない大きさです。水のあるところでないとうまく生活することができないようで、陸上に生息しているものでもコケ植物の中など湿ったところを選んでいます。

節足動物

無脊椎動物のなかでもとくに属する種が多いのが節足動物(せっそくどうぶつ)です。

無脊椎動物と脊椎動物を足した動物界全体でも最大の多様性があります。バッタやトンボなどの昆虫類、カニやエビなどの甲殻類、クモの仲間、ムカデの仲間など、現生種は100万種を軽く超えるほど。

体は外骨格で支えられ、節のある脚(関節肢)をもつことや、体節の繰り返しで構成されていることなどが共通点です。

扁形動物

扁形動物(へんけいどうぶつ)にはプラナリアとよばれる生物などが含まれています。プラナリアはウズムシの仲間の総称。中学校や高校の授業で教材として取り上げられることも多い生き物です。

扁形動物の特徴は、名前の通り体が平らであること。プラナリア以外にも、寄生虫としておなじみのサナダムシや、コウガイビル、海にいてウミウシの仲間とよく間違えられるヒラムシなどがいます。

軟体動物

image by iStockphoto

軟体動物(なんたいどうぶつ)の仲間も、無脊椎動物を代表する生き物といってよいでしょう。ご存知の通り、軟体動物は柔らかな体をもち、一部の種では殻をつくって身を守っています。

タコやイカなどの頭足類、カサガイやカタツムリ、貝殻を失ったウミウシなどを含む腹足類、二枚貝の仲間を含む二枚貝類、ヒザラガイの仲間をふくむ多板類など、海に住む生き物が多いです。

環形動物

環形動物(かんけいどうぶつ)は環状の体節で体が構成されている生き物です。

ミミズやヒルなどの環帯類や、ゴカイなどの多毛類、ユムシやホシムシの仲間などが含まれています。

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棘皮動物

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体に多くのとげを持つウニを含んだ生物のグループが棘皮動物(きょくひどうぶつ)です。ウニのほか、ヒトデやナマコ、ウミユリなどもこのグループに属しています。

棘皮動物の特徴は、体が五放射相称であること。五放射相称とは、中心から5つの線が等間隔に伸びたラインをベースにした体のつくりです。また、体の中には骨片という小さな構造物があることや、管足によって移動できる種が多いことも特徴でしょう。

半索動物

最後にご紹介するのは、半索動物(はんさくどうぶつ)という生物の仲間です。半索動物は、発生過程が棘皮動物に似ており、比較的近いグループと考えられています。ギボシムシなどやフサカツギなどの生物がふくまれているグループです。

多種多様な無脊椎動物の世界

普段私たちが動物として認識するものは、イヌやネコ、鳥、カエルやトカゲなど…脊椎動物がほとんど。しかしながら、動物界全体で見れば脊椎動物は一握りです。今回の記事から、身近なものから聞いたことのないようなものまで、無脊椎動物にはありとあらゆる生物が含まれていることがお分かりいただけたでしょう。

生物の勉強をするならば、無脊椎動物について学ぶことは必須です。ぜひ興味を持ったグループについて、さらに詳しく調べてみてくださいね。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生物生物の分類・進化

無脊椎動物にはどんな種類の生き物がいる?現役講師がさくっとわかりやすく解説!

今回は無脊椎動物という生物たちについてみていこう。

中学校の理科でも出てくる言葉ですが、意外とあいまいな記憶のままにしているやつも多いんじゃないか?無脊椎動物にはたくさんの種類がある。どんな生物が無脊椎動物にふくまれるのかを紹介してもらおう。

大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いたぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

無脊椎動物とは?

無脊椎動物(むせきついどうぶつ)とは、脊椎動物以外の動物をまとめて指す言葉です。非常に大雑把なまとめ方であり、地球上に現生する生物の大半は無脊椎動物にふくまれてしまうほど、とにかくあらゆる生物種が無脊椎動物の仲間といえます。

「無脊椎動物に共通した特徴がある」というよりも、「脊椎動物以外の動物ぜんぶ」というくくり方なので、無脊椎動物について知りたければ、まずは脊椎動物というものについて確認するのが良いでしょう。

脊椎動物とは?

脊椎動物は、簡単に言えば背骨をもっている動物のことを指します。具体的には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の生き物たちのことです。

背骨をもつ生き物は、動物の中でもとくに複雑化したものと考えられています。言い換えれば、背骨を持っていない無脊椎動物は、生物が進化の道のりで脊椎動物に至る前に分岐した生物たちを指しているといえるのです。

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