人間やイヌ、ネコなど、哺乳類には身近な生き物が多いな。哺乳類に属する動物の特徴や、大まかな分類群を学んでいこう。この記事を読めば、身近な動物への理解が深まるだけでなく、われわれ人間という生物の位置づけについても、改めて考えることができるはずです。
大学で分類学を中心に勉強していた現役講師のオノヅカユウを招いた。
ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
哺乳類とは?
私たち人間が哺乳類であることは、誰しもがご存知の通り。では、「哺乳類とはどんな生き物か説明せよ」といわれたら、みなさんはどう答えるでしょうか?
代表的な哺乳類の特徴には以下のようなものがあります。
・生まれた子どもは母乳を飲んで育つ
・肺呼吸を行う
・心臓は二心房二心室
・基本的に恒温性(例外あり)
・胎生のものが多い(例外あり)
・胎内の子どもを胎盤で育てるものが多い(例外あり)
「母乳を飲んで育つ」ことが、哺乳類という名前の由来です。多くの哺乳類では、母乳を出す雌の乳房(いわゆる“おっぱい”)が発達します。
後述する単孔類というグループの生物は乳房らしい乳房が発達しませんが、皮膚の下にある乳腺から母乳が染み出るので、子どもはそれをなめとるようにして摂取するのです。
以下に、現生哺乳類をいくつかのグループに分けてご紹介します。
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自分の知っている動物がどのグループにあるのか、仲間にはどんなものがいるのかを確認してみましょう。
単孔類
哺乳類の中でもとくに原始的な形質を残していると考えられているのが、単孔類(たんこうるい)に属する種です。単孔目のみで構成されているグループのため、単孔類は単孔目と言い換えて差し支えありません。
哺乳類であるのにもかかわらず子どもが卵から生まれる(卵生)カモノハシと、ハリモグラの仲間が単孔類に属しています。
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単孔類という名前は、彼らのもつ「総排出腔」という体の仕組みによります。哺乳類の雌は基本的に体内で子どもを宿し出産しますが、子どもの出てくるところと、便の出てくるところ、尿の出てくるところは別々です。
ところが、単孔類はそれらがすべて1つの出口になっており、これを総排出腔といいます。総排出腔をもつのは鳥類、両生類爬虫類、魚類などと共通の特徴であることから、単孔類が哺乳類の中でもとくに原始的であると考えられるのです。
有袋類
出産した子どもを「育児嚢(いくじのう)」という袋で育てる生き物が有袋類(または有袋上目)の仲間です。有袋類は胎内に子どもを宿しますが、胎盤が完全に発達しておらず、子どもが成長しきるまで胎内で育てることができません。そのため、未熟児に近い状態で出産し、残りの期間を育児嚢で育てる必要があります。
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有袋類の分類は紆余曲折してきた歴史がありますが、近年は7つの目に分けることができる、という考え方が主流です。
もっとも種類が多いのは双前歯目(そうぜんしもく)というグループで、コアラやカンガルー、ウォンバット、フクロモモンガなどがふくまれます。日本人にも比較的なじみ深い種が多いですね。
コアラやカンガルーがオーストラリアの代表的な動物であるため、「有袋類=オーストラリア」というイメージがありますが、実は他の大陸にも有袋類は生息しています。オポッサムという名前を聞いたことがないでしょうか?オポッサムの仲間は南北アメリカ大陸にひろく分布している有袋類です。
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