幕末日本史歴史江戸時代

動乱の始まる江戸末期、鎖国を解いた「阿部正弘」を歴史オタクがわかりやすく5分で解説

江戸の末期ごろ、ペリーの来航によってとんでもない騒動が巻き起こることになるのは知っているな。そのときの老中首座、今でいうところの内閣総理大臣だったのが「阿部正弘」という徳川幕府のエリート政治家だった。

果たして、「阿部正弘」はこの大騒動をどう動いたのか、歴史オタクのライターリリー・リリコと一緒に解説していきます。

ライター/リリー・リリコ

興味本意でとことん調べつくすおばちゃん。座右の銘は「何歳になっても知識欲は現役」。好きな歴史漫画にちょうど「阿部正弘」が登場したが、当初習ったような弱腰外交ではなく理由ありきの政策だったことに衝撃を受け、興味を持っていろいろと調べた。

1.徳川家を支えた阿部家

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「阿部正弘(あべまさひろ)」の祖先、阿部正勝は徳川家康に仕えた古参の武将であり、徳川家康が今川義元のもとに人質として置かれていたころからずっと供をしてきた人物でした。

阿部正勝本人は関ケ原の戦い以前に亡くなってしまうのですが、主君・徳川家康と長く苦楽を共にしてきたことで阿部家は譜代大名として名を連ねることになります。そうして、阿部宗家十一代目の当主となったのが今回の主役「阿部正弘」でした。

名門阿部家の五男

1819年、阿部正弘は徳川幕府の名門阿部家の五番目の男の子として生まれました。名門の生まれとはいえ、普通、家督は先に生まれたお兄さんたちが継ぐので、五男は跡継ぎとしての優先順位は高くはありません。

江戸時代の武家の次男以降で独立していない男子は「部屋住み」といって、親や家督を継いだ兄の家に留まる居候のような、ちょっと肩身の狭い立場におかれました。あまり良い言い方ではありませんが、次男より下の男子は家督を継ぐはずの長男に何かあった時のスペアのような感覚があったのです。なので、彼らが家から出るには、どこか他の家に養子に入るか、職を得て自分で家を持つかしなければなりませんでした。

阿部正勝が七歳の時に父・阿部正精が亡くなったときも、兄の阿部正寧が家督を継いで当主となります。しかし、このお兄さんは体が弱かったことから、10年後には弟の阿部正弘に家督を譲ることになったのです。こうして、名門阿部家の当主・阿部正弘が誕生しました。

エリート街道まっしぐら

実家を継いだ阿部正弘は、備後福山藩の七代目藩主となりました。しかし、兄・阿部正寧が当主だったころ、すでに阿部正弘は国を出て江戸に住まいを移していたため、翌年に一度郷里に帰ったのを最後に二度と足を踏み入れることはありませんでした。

その代り、阿部正弘は江戸でバリバリ働き始めます。まず、1838年に奏者番といって、城中における礼式を管理する役人に就きました。奏者番は譜代大名が初任する役職で、出世の登竜門とされています。さらに奏者番の中の四人は寺社奉行を兼任しました。寺社奉行は、幕府直轄のお寺や神社を監督する他、当時禁止されていたキリスト教の取り締まりや、一部の訴訟裁判も行います。この寺社奉行に任命された譜代大名は、のちに重役に就くことも多く、エリートの証でもありした。

奏者番となった阿部正弘は、二年後に寺社奉行に任命されます。

感応寺と大奥のスキャンダル

寺社奉行となった阿部正弘のもとに、ある日大事件が舞い込みます。

将軍家の子女や正室、側室の住まう大奥の内実は、たとえ誰であろうと外に漏らしてはいけない厳しい決まりがありました。そのため、長い歴史を持つにもかかわらず大奥に関する史料は多くはありません。しかし、それでも人の口に戸は立てられませんから、噂として城下へ流れていました。

その噂のひとつに、普段は外出を許されない大奥の女中たちがお参りを口実にお寺へ行っては若い僧侶と密会している、というスキャンダラスな内容のものがあったのです。そんなもの、すぐに踏み込んで取り締まったらいいんじゃないかと思いますよね。ところが、この噂になった先のお寺が厄介だったのです。

事件の舞台となったのは感応寺というお寺で、住職の日啓(にっけい)は先代将軍・徳川家斉がもっとも寵愛したお美代の方の父親。感応寺自体もお美代の方が徳川家斉にねだって建てさせたものでした。

徳川家斉と縁のある寺院なだけに、下手に日啓を逮捕すれば、徳川家斉にも傷が及びます。それは徳川幕府にとって絶対に避けねばならないことでした。

そいういうわけで、大奥の女中たちと僧侶の密会を誰も止めることはできず、どんどんエスカレートしていきます。終いには感応寺への寄進と称して運び込んだ長持という大きな箱の中に女中自身が入って忍び込むような勝手をはじめ、大奥の風紀が乱されていました。

\次のページで「感応寺事件解決で将軍の目にとまる」を解説!/

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