今回は、「放射性物質」について解説していきます。

「放射性物質」という言葉は、ニュースや新聞で時々耳にする。ですが、「放射性物質」やそれに関連する用語は定義が複雑で、曖昧な理解しかできていないという人は少なくない。ぜひとも、この記事を読んで「放射性物質」の理解を深めてくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。放射化学、放射線物理学、原子力工学なども勉強中。

放射性物質に対するイメージ

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皆さんは、放射性物質に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?「危険なもの」、「レントゲン」、「医薬品などに用いられているもの」、「年代測定に使うもの」、「ウラン鉱石やトリウム鉱石」など様々だと思います。ですが、これらのイメージに共通しているのは、ニュースや新聞で見たり聞いたりしたことはあるが、化学的および物理学的な観点からはよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なぜなら、放射性物質に関連する用語や単位は、定義が非常に複雑で理解しにくい部分が多いからです。また、学校で使われる理科の教科書にも、放射性物質に関する記述はほとんどありません。こういった理由で、放射性物質に関する話題を耳にしても、本質的な理解ができる方が少ない状況にあります。

この記事では、放射性物質そのものや関連する用語について基礎的な知識を身に着け、これらの話題を扱うニュースや新聞の内容を正しく理解できるようになることを目標として説明していきますね。

放射能と放射線について解説!

放射性物質について説明する前に、放射能放射線について説明します。両者の名前は非常によく似ており、混同してしまいがちですが、実は定義が異なるのです。まずは、これらの用語の違いについて理解しましょう。

放射能

放射能

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放射能とは、ある原子核が二つに割れたり、一部が欠けることにより別の原子核へと変化する能力のこといいますよ。原子核とは、物質を構成している原子の中にある塊のことで、物質の性質を決める要因の一つとなっています。

この原子核の多くは、非常に強固で崩れることはありません。ですが、中には、崩れてしまう原子核も存在します。このような性質を持つものを、放射性同位元素ともいいます。そして、これらが有する能力が放射能なのです。放射能の強さを示す単位はベクレルですね。

崩れてしまう原子核の特徴はいくつかあります。代表的な特徴としては、原子核(原子番号)が大きすぎること原子核を構成する粒子(陽子と中性子)のバランスが悪いことなどが挙げられますよ。

\次のページで「放射線」を解説!/

放射線

放射線

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放射能をもつ原子核が、崩壊し別の原子核へと変化するとき、非常に大きなエネルギーが放出されます。このとき、エネルギーは別の粒子が受け取ったり、姿を変えるなどして、外部へと飛んでいくのです。この外部へと飛んでいくものが放射線ですよ。放射線の量を表す単位として、シーベルトがあります。

放射線には、様々な種類があり、ヘリウム原子核が実体であるアルファ線、高速の電子もしくは陽電子が実体であるベータ線、高エネルギーの電磁波であるガンマ線などに分類されますよ。また、副次的に生じるX線なども放射線に含まれます。

そして、放射線の一部は非常に透過性が強く、それらは紙や金属などを通り抜けることができるのです。この性質を利用した医療機器がレントゲン撮影機ですね。

放射性物質とは?

放射性物質とは、放射能をもつ物質の総称です。例として、核燃料に使われるウランやプルトニウム天然に存在する炭素14(カーボンフォーティーン)人間体内や作物などに含まれるカリウム40水素の同位体である重水素およびトリチウムなどが挙げられます。

放射性物質から放出される放射線は、人体に影響を与え、健康被害をもたらす場合があるのです。このような理由から、放射性物質に対して、様々な法規制がなされていますよ。また、多くの場所で放射線量を測定し、異常な事態がおこっていないか確認を行う必要があります。

そして、放射性物質は時間の経過とともに、放射能が減少するのです。この減少速度を表す指標として、半減期が用いられますね。半減期は、放射性物質の量が、元の量の半分になるのにかかる時間を表します。

放射性物質の利用法を紹介!

ここでは、放射性物質の性質を用いた様々な科学技術について、解説していきます。先ほど学んだ、放射能、放射線、放射性物質などのキーワードと結びつけることを意識して読んでみてください。すべてを紹介することはできないので、興味深い話題をいくつか選びました。

年代測定

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歴史的建造物が作られた年代や、古文書や絵画がかかれた年代を推定する方法の一つに、放射性物質の性質を利用した年代測定があります。生物圏内において、炭素14(カーボンフォーティーン)の存在比がほぼ一定であるという事実に基づき計算していますよ

生物(植物等)が死ぬと、呼吸が行われなくなるため、体内の炭素と外部の炭素が交換されるということがなくなります。この状態で年月が経つと、体内の炭素14は崩壊を続けて、別の原子核に変化するのです。一方、外部の炭素14の存在比は一定ですよね。ゆえに、生物体内の炭素14の量と生物圏内の炭素14の量を比較することで、その生物が何年前に死んだのかがわかるのです。

この方法により、建造物や紙のパルプに使われる木が伐採された年代が特定できます。木が伐採されてから、木材やパルプとして使用されるまでの時間は十分短いと考えれば、求めたい年代として採用できますね。

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SPECT

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続いては、医療分野からSPECTという技術の紹介です。健康的観点から問題のない少量の放射性物質を含む薬剤を、注射により血液に混ぜます。十分に時間が経ったら、体のどの部位に放射性物質が多く存在しているかを調べるのです。

これにより、心臓の様子脳内の血管の様子骨の様子その他の臓器の様子などを調べることができます。様々な病気の早期発見や治療に役立っているようです。

「放射性物質」の意味を正しく理解しよう

今回紹介した「放射能」、「放射線」、「放射性物質」という言葉はそれぞれ似ていますが、すべて意味が異なります。しかしながら、これらの言葉をしっかりと使い分けることができない場合、ニュースや新聞などの内容を間違って解釈してしまう恐れがありますよね。

「放射性物質」に関する学問は、難しい部分も非常に多いです。しかし、この記事で紹介した内容が理解できていれば、基本的な部分で躓くことは決してありません。この機会に、「放射性物質」について学んでみてください。

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化学

知っておきたい「放射性物質」の基礎知識を理系学生ライターが5分でわかりやすく解説

今回は、「放射性物質」について解説していきます。

「放射性物質」という言葉は、ニュースや新聞で時々耳にする。ですが、「放射性物質」やそれに関連する用語は定義が複雑で、曖昧な理解しかできていないという人は少なくない。ぜひとも、この記事を読んで「放射性物質」の理解を深めてくれ。

エネルギー工学、環境工学を専攻している理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。放射化学、放射線物理学、原子力工学なども勉強中。

放射性物質に対するイメージ

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皆さんは、放射性物質に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?「危険なもの」、「レントゲン」、「医薬品などに用いられているもの」、「年代測定に使うもの」、「ウラン鉱石やトリウム鉱石」など様々だと思います。ですが、これらのイメージに共通しているのは、ニュースや新聞で見たり聞いたりしたことはあるが、化学的および物理学的な観点からはよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

なぜなら、放射性物質に関連する用語や単位は、定義が非常に複雑で理解しにくい部分が多いからです。また、学校で使われる理科の教科書にも、放射性物質に関する記述はほとんどありません。こういった理由で、放射性物質に関する話題を耳にしても、本質的な理解ができる方が少ない状況にあります。

この記事では、放射性物質そのものや関連する用語について基礎的な知識を身に着け、これらの話題を扱うニュースや新聞の内容を正しく理解できるようになることを目標として説明していきますね。

放射能と放射線について解説!

放射性物質について説明する前に、放射能放射線について説明します。両者の名前は非常によく似ており、混同してしまいがちですが、実は定義が異なるのです。まずは、これらの用語の違いについて理解しましょう。

放射能

放射能

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放射能とは、ある原子核が二つに割れたり、一部が欠けることにより別の原子核へと変化する能力のこといいますよ。原子核とは、物質を構成している原子の中にある塊のことで、物質の性質を決める要因の一つとなっています。

この原子核の多くは、非常に強固で崩れることはありません。ですが、中には、崩れてしまう原子核も存在します。このような性質を持つものを、放射性同位元素ともいいます。そして、これらが有する能力が放射能なのです。放射能の強さを示す単位はベクレルですね。

崩れてしまう原子核の特徴はいくつかあります。代表的な特徴としては、原子核(原子番号)が大きすぎること原子核を構成する粒子(陽子と中性子)のバランスが悪いことなどが挙げられますよ。

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