今回は「インバーターの仕組み」について解説していきます。

インバーターは、直流電流を交流電流に変換する装置です。インバーターは、電車や電気自動車の電動機(モーター)の回転速度の制御に使われているぞ。また、近年では、太陽光発電システムの一部にも組み込まれている。ぜひこの記事を読んで、身近な場所で活躍しているインバーターの仕組みについて学んでくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

二種類の電流

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インバーターについて説明する前に、電流の種類について学びましょう。電流の向きと時間の関係性に注目すると、電流は2つの種類に分類できます。一つ目は直流です。直流とは、プラス極とマイナス極が入れ替わらない電流のことを表します。電流の向きが常に同じである電気とも言うことができすね。電池からやってくる電気は直流に該当しますよ。

もう一方は交流といいます。交流とは、時間の経過に伴いプラス極とマイナス極が入れ替わる電流のことを表しますよ。電流の向きが絶えず変化する電気であると言うこともできますね。コンセントからやってくる電気は交流に該当します。

また、交流電流のプラス極とマイナス極が1秒間に入れ替わる回数を表した値を周波数といいますね。周波数の単位はHz(ヘルツ)を用いることが多いです。ちなみに、日本国内では、東日本では50Hz西日本では60Hzの交流電流が電力会社から供給されています。

インバーターとは

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インバーターは直流を交流に変換する装置です。また、直流を交流に変換することは、ダイオードを用いると非常に簡単ですよね。ですから、交流を直流に変換したのち、再び交流に変換することができます。つまり、ある交流の周波数を、任意の周波数に変更するような装置を作ることもできるのですよ。

インバーターは、様々なところで利用されている装置です。太陽電池で作り出される電気は直流ですが、多くの家電製品は交流で動作します。ゆえに、太陽電池で作り出された電気はインバーターによって直流から交流に変換されて、コンセントまで届きますよ。

他にも、電気自動車や鉄道車両に用いられる電動機(モーター)の回転数調節を行うために、インバーターが使われます交流用の電動機は、周波数によって回転数が決まるからです。また、インバーターを用いた電動機の制御は、他の方式よりも省エネ性に優れていると考えられています。

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短形波インバーター

短形波インバーターの仕組み

短形波インバーターの仕組み

image by Study-Z編集部

まず、最も単純な構造をしている短形波インバーターの仕組みを考えてみましょう。図のように、電球(負荷)の両端にそれぞれ、直流電源のプラス極、マイナス極につながるスイッチをつなげます。また、各スイッチに1から4の番号を割り振りますね。

最初に、スイッチ1とスイッチ4をオン、スイッチ2とスイッチ3をオフにします。つまり、図の左側の状態にするのです。このとき、電球には左から右へと電流が流れますね。次に、スイッチ2とスイッチ3をオン、スイッチ1とスイッチ4をオフにします。今度は、図の右側の状態ですね。このとき、電球には右から左へと電流が流れます

では、図の左側の状態と右側の状態を交互に繰り返すと、どのような現象が起こるでしょうか。電流の流れる方向が絶えず入れ替わりますよね。これで、直流から交流を作り出すことができました!

短形波の特徴

短形波の特徴

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続いて、先ほどの方法で交流を作り出した場合に、電球にかかる電圧と時間の関係を表すグラフ(波形)がどのようになるのかを考察してみます電球にかかる電圧の大きさは、いずれの場合も直流電源の電圧の大きさに等しくなりますね変化するのは電流の向きだけです

ゆえに、電球の右側を基準としたときの電球の左側の電圧と時間の関係は、上の図のようになります。このとき、電流は電圧の高い場所から低い場所に流れることに注意しましょう。V0は直流電源の電圧、fは作り出された交流の周波数を表していますよ。グラフの特徴の一つとして、角のある形をしていることがあげられますね。このような特徴をもつグラフを短形波といい、短形波の交流を作り出すインバーターは短形波インバーターと呼ばれます。

正弦波インバーター

正弦波の特徴

正弦波の特徴

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図のように、数学で登場する正弦関数(サイン関数、sinx)と同じ形の交流を作り出すインバーターのことを、正弦波インバーターといいます。一般的に、交流発電機でつくられる電気はすべて正弦波です。ゆえに、家庭にあるコンセントに送られてくる電気も正弦波の交流ですよ。

そのため、一部の電気製品は、先ほど紹介した短形波の交流では動作しません電動機類も、短形波では本来の能力を発揮できません。したがって、幅広い種類の機器を動かすためには、正弦波の交流を出力するインバーターを使用する必要があります

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正弦波インバーターの仕組み

では、正弦波インバーターの仕組みについて考えてみましょう。正弦波のグラフはなめらかな曲線です。つまり、正弦波の交流は電流の向きだけでなく、電圧の強弱も絶えず変化しているのですね。したがって、短形波インバーターのように、スイッチのオンおよびオフの操作だけでは、正弦波の交流を作り出すことができません

そこで、正弦波インバーターの回路では、コンデンサーとコイルが追加されました。コンデンサーとコイルは、電気を蓄えたり、蓄えた電気を放出する性質がありますね。そのため、コンデンサーとコイルを含む回路では、スイッチを切り替えたときに瞬時に電流の向きが変化することがなくなります。つまり、コンデンサーとコイルを追加することで、短形波の角の部分を丸くできるのです。

さらに高精度の正弦波を作り出すためには、スイッチのオンおよびオフのタイミングを工夫する必要があります。スイッチの制御は、半導体部品によって行われていますよ。そして、この制御方法をPWM制御方式といいます。

インバーターが起こした革命

インバーターが開発される以前は、直流電流と交流電流を変換するのは至難の業でした。直流電流でモーターを回転させて、その力で交流発電機を回し交流を作り出すという原始的な方法も存在したようです。しかし、このような方法では、電力損失も大きいですし、装置も大がかりになってしまいます。

インバーターの登場により、このような問題は一掃されました。インバーターは、今では95%以上の変換効率を実現し、小型軽量化も進んでいます。電動機制御装置も、インバーターの登場により、高効率化が実現したのです。このように、インバーターがもたらした恩恵は、非常に多いのですよ。

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物理理科電磁気学・光学・天文学

直流を交流に変換する「インバータ」の仕組みを理系学生ライターがわかりやすく解説

今回は「インバーターの仕組み」について解説していきます。

インバーターは、直流電流を交流電流に変換する装置です。インバーターは、電車や電気自動車の電動機(モーター)の回転速度の制御に使われているぞ。また、近年では、太陽光発電システムの一部にも組み込まれている。ぜひこの記事を読んで、身近な場所で活躍しているインバーターの仕組みについて学んでくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

二種類の電流

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インバーターについて説明する前に、電流の種類について学びましょう。電流の向きと時間の関係性に注目すると、電流は2つの種類に分類できます。一つ目は直流です。直流とは、プラス極とマイナス極が入れ替わらない電流のことを表します。電流の向きが常に同じである電気とも言うことができすね。電池からやってくる電気は直流に該当しますよ。

もう一方は交流といいます。交流とは、時間の経過に伴いプラス極とマイナス極が入れ替わる電流のことを表しますよ。電流の向きが絶えず変化する電気であると言うこともできますね。コンセントからやってくる電気は交流に該当します。

また、交流電流のプラス極とマイナス極が1秒間に入れ替わる回数を表した値を周波数といいますね。周波数の単位はHz(ヘルツ)を用いることが多いです。ちなみに、日本国内では、東日本では50Hz西日本では60Hzの交流電流が電力会社から供給されています。

インバーターとは

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インバーターは直流を交流に変換する装置です。また、直流を交流に変換することは、ダイオードを用いると非常に簡単ですよね。ですから、交流を直流に変換したのち、再び交流に変換することができます。つまり、ある交流の周波数を、任意の周波数に変更するような装置を作ることもできるのですよ。

インバーターは、様々なところで利用されている装置です。太陽電池で作り出される電気は直流ですが、多くの家電製品は交流で動作します。ゆえに、太陽電池で作り出された電気はインバーターによって直流から交流に変換されて、コンセントまで届きますよ。

他にも、電気自動車や鉄道車両に用いられる電動機(モーター)の回転数調節を行うために、インバーターが使われます交流用の電動機は、周波数によって回転数が決まるからです。また、インバーターを用いた電動機の制御は、他の方式よりも省エネ性に優れていると考えられています。

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